2007/12/26

キングとジョーカー  

著者:ピーター・ディキンスン 訳:斎藤数衛
出版:扶桑社海外文庫
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「英国女王が挑む怪事件 奇抜な舞台設定に 巧緻な謎解きが展開」(帯)

まあそういう話なんだけど、ちょっと読む人を選ぶ作品かなぁ。
王室の表現や、王族の心情など、凝った設定と書き込む筆力には感心させられたが、僕自身は今ひとつ最後まで乗り切れなかった。
「解説」で「山口雅也」が褒めてるのは良く分かるんだけどね。(舞台設定に凝る辺りには通ずるものがある)

意識するにせよ、しないにせよ、「本格推理」は「舞台設定」で線引きし、「世界観」を構築することに特徴があるジャンルだとも言える。

世紀末のゴシック的世界、伝説と因習に囚われたおどろおどろしい世界、モダンな都会の隙間に滑り込む影の世界、上流社会の中のある種の閉ざされた世界、外部からの連絡が途絶えた絶海の孤島、奇人の建設家が造った摩訶不思議な作りの館・・・

本書の場合、それが「架空の」英国王室になっているわけだ。
実はこの「架空の」というあたりが僕が乗り切れなかった理由の一つでもある。
「アナザーワールド」モノというのは結構好きなジャンルで、それだけに何となくそういうSFテイストの設定を勝手に期待しちゃってたところがあるのだ。
ところが本書の場合は、確かに「アナザーワールド」ではあるのだが、
「作者はこのエリザベス一家を架空のビクター二世一家とすりかえて、一つの物語を創作した。史実と違うのはその点だけで、それ以外はチャーチルを筆頭としてすべて実在する」(訳者のノート)
と言うわけで、SFテイストなんかありゃせんのですな(笑)。
コッチの勝手な思い込みなんだけど、ここら辺も僕と本書の波長がずれちゃった原因として小さくないと思う。
(この王室の「すりかえ」のネタ元は「ヴィクトリア女王」(中公新書)を読んだばかりだったのでスッキリ頭に入った。それを狙って読んだわけじゃないんだけど)
「舞台設定の懲り方を除いたら、このトリックはどうなの?」
ってぇのもあるけど(笑)。

まあ凝った作品なのは確かなので、はまれば気に入る人もいるだろうね。「本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン」のドッカにも入ってたし。
従って「僕とはあまり相性が良くなかった」というだけの話。



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