2007/4/26

官僚とメディア  

著者:魚住昭
出版:角川ONEテーマ21
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前に読んだ「新聞社」ではテレビ局を新聞社が系列化していく中で政府との関係を深めていった(「権力に絡み取られた」)経緯が明かされていたが、本書は個々の「事件」中で「権力批判」としての機能を失っているメディアの姿をあからさまにした作品。
雑誌に単発で発表されたものを本にまとめる際に手を入れてつなげているので、やや流れにはバランスを欠くようなところはあるが、挙げられている「事実」にはちょっと薄気味悪くなるような感じも受ける。

取り上げられている主な「事件」は次のようなもの。
1共同通信社の安倍首相周辺批判記事発信の自粛
2耐震偽装事件
3国松警察庁長官狙撃事件
4ライブドア・村上ファンド事件
5NHK番組改編問題
6裁判員制度タウンミーティング問題
「1」はあまり表沙汰になるような話ではなかったと思うが、それ以外はかなり有名な事件・問題ばかり。だが一般にメディアで流れている内容(それは世間での「印象」にもなっているだろう)と、その詳細やその後の経過から覗える「裏」の構図には大きな隔たりがある、そこにはメディアと官僚組織・政治家との深い関係がある、というのが本書の主張。
個人的には「6」以外は「聞いたことのある話」であったが、それでもこんな風にまとめて読んでみると、現在のメディアが抱えている問題点(「闇」とさえ言ってもいいのかもしれない)には危惧を覚えざるを得なかった。

ちなみに
「1」「5」は政治家への配慮や政治家からの圧力でメディアが報道を自粛した事件。「2」は事件の真因であった官僚組織(国交省)の失敗をメディアを利用して隠蔽してしまった事件、「3」「4」は「正義」を錦の御旗にした警察・検察官僚の「暴走」、「6」は官僚組織(最高裁)とメディアの癒着による世論操作
という枠組みが提示されている
「政治家の圧力」というのは「古くて新しい問題」という感じだが、官僚組織が関係する「2,3,4,6」なんかはそれとは少し構図が違っていて、それだけに見えにくくなっているものだろう。
世論の「悪いのは誰だ」という感情に乗っかってしまった「3」「4」も恐ろしいが、その感情を隠蔽工作に利用したように見える「2」なんか、ちょっと不気味な感じさえする。そこに切り込むどころか、そのお膳立てまでしてしまうメディアの問題点は、「6」に至っては「癒着」による利権の獲得と権力の世論操作への積極的関与にまで及んでおり、いやはや何ともやりきれない。
勿論、これらの「構図」は作者の推論によるところも大きい。しかし挙げられている根拠を読む限りは「ありえる構図」に思えるし、「事実経過」もそれを証明しているように思う。

これをもって「日本が危険な状況にある」とまでは言えないだろう。少なくとも本書のような批判書が出版できる状況は担保されているし、ネット上では本書に挙げられたような「情報」(正確には「推論」だと思うが)は以前から頻繁に飛び交っており、言論の自由が犯されるような事態にまでは至っていない。
しかし何か嫌な気配は感じる。
単なる危惧であってくれればいいんだけどネ。



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