2007/4/24

玻璃の天  

著者:北村薫
出版:文藝春秋
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昭和初期を舞台にした令嬢と女性運転手「ベッキーさん」シリーズ。「街の灯」に続く第二作になる。

「推理小説」としては「どうかな?」と思わないでもない。同じ作者の「円紫」シリーズに比べると、少し無理があるんじゃないかな、と。(あくまでも「北村薫」に求める水準を考えると、ということではあるが)
ただ本書の読みどころは、トリックじゃないんだよね。
「昭和初期」という、活力に満ちた「明治」、自由を謳歌した「大正」が過ぎ去り、ファシズムに向けた暗い時代への予感が満ちつつある「黄昏」の気配、そこに読みどころがあると思う。そしてその点に関して、本書は成功していると言えるだろう。

ちょっと違和感があるのは15歳にもならない語り手である令嬢が「自由主義者」として立派過ぎることかな?女学生として大正デモクラシーの雰囲気を残した環境にいるとは言え、この年齢でこんな立派に自分の意見を言えるもんかな、とは思う。
ただ一方でこれは作者の意図的なものかと思ったりもする。つまり彼女は読者の「代弁者」として、全体主義へと傾斜していく社会に対して「意義申し立て」をする役目を負っているのだ、と。
となると、こういう「仕掛け」を施した作者の意図には、あるいは「現代」に対する「意義申し立て」もあるのだろうか?
・・・これは考え過ぎだと思いたいところだ。

本書で「ベッキーさん」の重要な過去は明らかになる。ただいくつか複線は張られているので、シリーズは続くんじゃないかなぁ。
「できれば『226』事件まで・・・」
と思ってるんだけど、そうするとチョット令嬢が大人に成りすぎちゃうかな?
でも是非読んでみたいところだ。



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