2006/10/19

12番目のカード  

著者:ジェフリー・ディーヴァー 訳:池田真紀子
出版:文藝春秋社
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ディーヴァーの「『リンカーン・ライム』シリーズ」最新作。
ディーヴァーの持ち味は「ジェットコースター・ノベル」と称される目まぐるしいほどのストーリーの展開と、畳み掛けるどんでん返しにあるが、本作でもそれは健在。全く飽きずに一冊を読み上げることができる。

本来、この持ち味を生かすのは「単発作品」で、「シリーズもの」の場合、どうしても馴染みの登場人物には「仕掛け」が施しにくいといった事情から、制約が架せられざるをえない。その分、シリーズ・キャラクターに対する愛着や馴染みが出て来て、それはそれで味わい深いのだが(僕はこのシリーズのライムとサックスのカップルが大好き)、そのことがディーヴァーの持ち味を削いでしまう可能性は否定できないだろう。

実際、ここ数作に関してはあまりにも「どんでん返し」がアクロバティック過ぎて、「?」と思わざるを得なくもなかった。シリーズとしては深まっていく人間関係や世界観に満足を覚えつつ、一抹の不安も覚えていたのも事実である。
ただシリーズ前作の「魔術師」で犯人の設定によってアクロバティックさを上手く処理をし、直近作(単発作品です)の「獣たちの庭園」で歴史的過去を作品に持ち込むことで、「ディーヴァーもちょっと変わってきたかな」と感じていたところではあった。そして本作はその変化を裏付ける出来になっていると思う。

本作についても「お約束のどんでん返し」(この矛盾した言葉がディーヴァーの「壁」でもあるのだが)はある。しかしかつての作品にあったような「アクロバティック」な部分はかなり後退し、リアリティを以ってその展開を読むことができた。
まあその分、「驚愕」とまでは行かなくなっているのだが、これはシリーズ作品としては「成熟」と考えていいんじゃないかと思っている。(とは言え、これは「ディーヴァーとしては」と言うこと。他の作家の作品に比べれば、本作の「どんでん返し」の連続は驚異的と行ってもいい水準だ)
事実、本作ではお馴染みのシリーズ・キャラクターたちに、個人的な「試練」が架せられ、その克服を巡るドラマが展開することで作品の厚みがもたらされている。この展開には「どんでん返し」の要素は殆どないのだが、「シリーズもの」としては相応しい設定であり展開と言えるんじゃないかね。

ラストまでリアリティを維持するこの安定感は「シリーズもの」としては大きなプラスだろう。既に本国では発表され、評判もよいと言うシリーズの次作が今から楽しみである。



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