2010/12/14

読書録「『怖い絵』で人間を読む」  

・「怖い絵」で人間を読む
著者:中野京子
出版:NHK出版生活人新書

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以前、朝日新聞出版から発売された「怖い絵」シリーズ(全3巻)をネタに、NHKで放映された番組を書籍化したもの。
「怖い絵」シリーズの続編と言うか、番外編と言うか。
ただベースがテレビ番組だけに、分りやすさはコチラの方が上。
各絵画の写真の該当のポイントに注釈が添えられていたり、関連する図版が豊富なのも元のシリーズ以上じゃないかなぁ。
「入門」と言うには、タップリと紹介されてるしね。
本編を読んでいる僕も十分に楽しませてもらった。(まあ、忘れてるだけかも知んないけどw)

このシリーズ、どの絵画の紹介も面白いんだけど、一番興味深く思えたのは、歴史的事件に題材をとった絵画。
本書でもやはりそういった作品の解説が一段面白く感じられた。
まあ作者の意図が、「絵画そのものを楽しむ」よりも、「背景となる時代や事件、絵が描かれた意図などを把握した上で、絵画を楽しむ」というスタンスにあるから、そういった視点が強く出る歴史絵画の面白さが際立つってのがあるかもしんないけどね。

本編でも強く印象に残ったダヴィッドの「マリー・アントワネット最後の肖像」やレービン「イワン雷帝とその息子」「皇女ソフィア」も勿論なんだけど、本書ではヴィンターハルターの「エリザベート皇后」を紹介した章が強く印象に残った。
劇にもなってるエリザベート皇后の生涯がドラマチックなのは勿論なんだけど、それ以上に興味を惹かれたのは夫のフランツ・ヨーゼフ公。

真面目で実務能力の高かったこの最後の皇帝が、なぜゆえに自由奔放なエリザベートに惹かれ、我が儘を通したのか。
その心情と、それ故の長い「苦渋」と「悲劇」。

そんなことを、美しさこの上ない「エリザベート皇后」の肖像と、苦虫を噛み潰したようなヨーゼフ公の肖像を重ね合わせながら想像する。
二人が通り過ぎた「歴史」を知った後世の人間ゆえが持ちうる「鑑賞」の楽しみと奥深さが、そこには確実にある。
このシリーズは、ホントにそういう処を上手く引き出してくれるよ。

本編は勿論オススメなんだけど、その先駆けとしてこの新書から入るのもOK。
「絵画鑑賞」
なんていう言葉から感じられる堅苦しさとは違う楽しみがココにはあると思います。




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