2009/11/4

ベーシック・インカム入門  

・「ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える」
著者:山森亮
出版:光文社新書

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「年金問題」は現在の日本における社会保障制度の限界を象徴していると思う。
「消えた年金」を追いかけ、解明することは、それはそれで重要な課題であるが(その過程で、主に官僚制度に係わる種々の問題が明らかになることも含め)、その点をどこまで追求しても、「年金制度」そのものが持つ「限界」を乗り越えることはできない。
「格差」「貧困」の問題も含め、現在、日本の社会保障制度は、その「あり方」そのものを問われている状況と言えるだろう。
(これは多かれ少なかれ、世界的に見られる状況のようだ。
ただ本書でも指摘されているように、生活保護世帯の補足率の極端な低さや、先に明らかにされた相対的貧困率の状況などを見ると、わが国の「課題」は、より重いように思われる)

本書はそういう中、「新しい社会保障の考え方」として注目を浴びている「ベーシック・インカム」に関する入門書。
まあ「入門書」と言うには、ちょっと僕にとってはレベルが高かったけどねぇ(笑)。
「定義から、歴史、思想的背景、現代における状況まで、幅広く網羅した本」
という意味での「入門書」かな?
個人的には「歴史」とか「思想的背景」のあたりは、ちと読むのが辛かった。

<今日の議論の多くが、(中略)歴史的議論で先取りされている>(P.151)

「賢者は歴史に学ぶ」ってのは十分に分かるんだけどさ。

<「ベーシック・インカムはすべての人に、個人単位で、稼働能力調査や資力調査を行わず無条件で給付される」。>(P.243)

そういう観点からは、「子ども手当て」は(現状は所得制限なしで検討されてるから)「ベーシック・インカム」的な制度といえるのかな。
「直接給付」という考え方が強い民主党政権には、「ベーシック・インカム」的な社会保障を受け入れる素養はあるのかもしれない。
となると、二大政党制における「保守」の論点は、ここいらを巡る対立という風に、今後収束していく可能性もあるのかね。(その場合、現状の政党の枠組みが維持できるとは思えないけどね)

「財源はどうする」
って声は当然あるだろうし、
「労働インセンティブを低めるのでは?」
って議論も当然ある。
本書で論じられているように、その点は既に長く議論されており、「結論」が出ているわけではないだろうが、厚味のある議論の歴史があることは、導入検討の土台がキチンとあるということだろう。
「ホンマにそんなことできるんかいな?」
と、実は思ってたんだけど、
「どーもそうはいいきれない」
ってのが、今の僕の感想だ。

概論として、本書がもつ意味は十分にあると思う。
ただ個人的には、政策実行に向けた具体的な検討項目やプランのあたりを提示して欲しかったなとも。
政権交代があって、社会保障制度の根本的見直しの可能性がでてきているからこそ、ね。
(「基本的生活費が保証される水準での給付」ってのは、やはり最初は難しいだろう。
そういう意味では、(批判はごもっともとは思うが)「既存の社会保障制度+BI」ってあたりが、スタート台かな、と感じている。
ここらへんの制度設計の議論が聞いてみたいって言うのが、僕の要望)


ま、それは本書以外のところで、ってことなんでしょうな(笑)。



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