2009/5/25

単純な脳、複雑な「私」  

・「単純な脳、複雑な『私』 または、自分を使い回しながら進化した脳をめぐる4つの講義」
著者:池谷裕二
出版:朝日出版社

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「海馬」「進化しすぎた脳」の作者による最新作。
「進化しすぎた脳」と同様、高校生相手の講義をまとめたもので(前作はニューヨークの学生、本作は自分の母校の学生を相手にしている)、最新の脳科学に関する情報をバンバカ織り込みながら、「脳」というものの不思議で面白い仕組みや振る舞いを披露してくれている。
あんまり最新の情報が飛び交うので、
「どんどん『脳』のことって分かってきてるんだなぁ」
と感じるとともに(それにつれて「如何に分かってないか」ってこともアカラサマになるんだけどね)、
「こんな風に『脳』を取り扱っていいんだろうか」
と、ちょっと倫理的な部分での不安を感じたりもする。
作者自身は、結構柔軟なスタンス(「ファジーな」とも言える)を取っていて、その「奥行きの深さ」が倫理性をも包含するような側面があるんだけど、科学技術そのものには、先鋭的なゆえの「危うさ」がある。
まあでも、それはそういうモンなんだろうけどねぇ。

「脳」が持つ「空間」や「時間」のファジーな取り扱いっぷりや、「仕組み」そのものは精緻ではあるがシンプルなものなのに、それが組み合わされることで生じる「複雑さ」(これが題名につながっている)、「ノイズ」や「自己言及」と「脳」との関係 等々

「講義」なので、構成が精緻であるとは言えないけど、逆にそれ故に説明が平易になり、取り扱う範囲が思わぬ広がりを見せたりして、論文やサイエンスライターの単行本を読むのとは違った種類の楽しみがある。
携帯やネットからサイトにアクセスして、講義に使われた「動画」が見れるようになってるのもナカナカ面白いね。
(「まったく新しい読書スタイル」かどうかは、何とも言えないけど。そう言うには取り上げられる「動画」が少なすぎるように思う。でも面白い取組みではあるな)
個人的には「脳」が「時間」を扱う様や、「脳」と「行動」との関係なんか、「へぇ」ってことも少なくなかった。

まあ全くの「文系人間」である僕は、講義を受ける側の高校生よりもレベルの低い部分があって(笑)、一部「う〜ん」ってとこもあったんだけど、総体としてはすごく刺激的な読書体験であった。
ま、これがどこまで「記憶」に定着してくれるかはワカランけど・・・。




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