「第90回「不易流行、変わらぬ商いの本質に立ち戻れ」」
井上量一コラム
先般、タナベ経営のあるアンケートに協力しましたら、お礼として一冊の本が送られてきました。それは「時代を超えて語り継ぐ 田辺昇一の経営原則」でした。私もタナベ経営の会員になって三十数年になります。懐かしく読み返しました。創業者田辺昇一は大変分かりやすく経営原則を教えます、今日までの会社経営に大変参考になりました。
その中の「不易流行、変わらぬ商いの本質に立ち戻れ」は私が三十年前に読みました。
懐かしく少し思い出しましたのでご紹介します
「近江商法、船場商法、関西商法、名古屋商法など、現下の経済社会の底流に綿々と引き継がれている商いの真髄、会社を潰さない掟、原則がある。今、改めて商いの源流に心をいたすべきであろう。
「自分良し、相手良し、第三者良し」の三方良しの近江商法「やってみなはれやらなわからしまへんで企業はもともと潰れるように出来ている。安定したと思ったとたん足元から崩れ去ってゆく。企業は常に不安定におくべきものだ」という現場主義の船場商法。言わずと知れた[始末・算用・才覚]「事業は屏風のごとし、拡げ過ぎたら倒れまっせ」の関西商法など、今もなお、重要な商いのエキスである。
飛ぶ鳥落とす勢いの急成長企業が、ある日突然破綻し、世間を驚かせる。深追いしないで腹八分で、酒はほどほどに、漸進主義で建てましてゆく関西商法で行けばもとより大破綻のあるはずがないのである。「商売は資金の六、七分を持ってすべし。金を借りて商売を広げるなどあるべからず」と近江商人も言っている。浮利を追わず実利を追う。投機という熱病におかされることなく、分を心得て、始末、算用、才覚、すべてにケジメをつけ、自分良し、相手良し、第三者良しの商いを飽きずに継続すれば、社会から承知される企業として存続できるであろう。
始末・算用・才覚(関西商法の特徴は始末・算用・才覚である。始末は始めよければ終わりがある。「行ってきます」と言えば「ただいま」である。トイレに行ったら手を洗う。関西商法の代表である松下経営は一日決算、月次決算で良く始末するから利益が出る。
会社も一年たって赤字というのでは困る 。十二か月あったのだから毎月の帳簿を見て行かなければならない。だから利益を出す会社は月次決算で勝負している。算用はソロバンである。別な言い方をすればバランスである。三番目の才覚はアイデアである。関西人はサラ金を考えたり、カラオケという新しい商売を考えたりと、困った時にもいろいろ才覚を発揮する)。商道・商法にはいろいろの掟、原則がありますね。
私も今年の一月で創業以来40年務めた社長を退任しました。
この本は菊地新社長に贈り読んでいただきます。何度でも読み返していただきたいと願います。そして菊地社長の次の社長になる人に渡していただきたい、願望致します。

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