2006/3/17

課題多い自立支援…自己決定できる制度理念論議を  

*京都新聞朝刊に判りやすい記事を発見しましたので、紹介します。(ユリカモメさんの紹介)

▽=オピニオン解説 提言=京都新聞 2006年3月14日(火)
  <<立命館大学産業社会学部教授 峰島 厚氏>>
課題多い障害者自立支援…自己決定できる制度理念論議を


   障害者自立支援法が4月から施行される。同法は、障害児、身体障害者、知的障害者、精神障害者と4つに分かれていた経費負担区分、利用手続き、施設事業体系を統合し、かつその内容をほぼ介護保険制度のそれに似たものにする。
   障害者福祉は、2003年度に、戦後からずっと続いた措置制度から利用契約制度である支援費制度に抜本転換したばかりである。わずか3年でまた抜本転換する。それだけでなく、さらに3年後には介護保険制度との統合との統合も論議される。
   どう考えても障害者の声から出発した改革でない。それゆえに、かつてない規模で障害者等の不安が表明され、新しい方向も作り出されている。今後の3年を見通した制度運用、改革課題を提起する。

 ■応益負担の導入
  同法制定過程の主要な論点は応益(定率1割)負担という負担原則の導入にあった。障害者団体間での諸論議があったとはいえ、障害によるハンディを補うことが私益(もうけ)になるとは誰も考えていない。大きな反対があったのは当然である。
  その結果、国から妥協策として提案されたのが低所得者軽減措置である。世帯分離した障害者の所得に応じて負担上限額を定めることで、ほとんどの人が軽減措置を受けられるようにした(分離していない場合は扶養家族負担)。
  具体的には、家族と同居して介護あるいは経済上扶養されていようと健康保険で扶養対象にされていようと、住民票を分離すれば「世帯主」と認定する。
 生活保護制度の世帯単位や所得認定などどは違う「世帯」概念である。住民票が分離していれば社会貢献している個(障害者施設等で働いている勤労者)として尊重する、という新たな定義を提起している。
  市町村窓口や障害者の家族がこの新定義に混乱しているという声を聞くが、依存しつつ暮らしていく障害者住民・勤労者の新たな自立像の提起である。単なる策とみるべきではない。

 ■高齢者との違い
  もう一つの論点は、介護保険制度に近づけるという改革にある。たとえば障害程度区分判定に要介護認定判定項目が約8割も採用、施設職員のほとんどを非常勤で賄わなければならない報酬単価、それを容認する配置基準、等々である。高齢者の現行制度を是とするものではないが、同じ福祉ニーズと前提にしてよいのだろうか。
  高齢者の福祉ニーズは、所得、生活、家族、健康面などそれまでの生活、人生が大きく作用し、それを尊重してそこに介護や支援を結びつけていくことが要請される。
  しかし障害者は年齢的にも若い人が多い。これから生活を築く上で、人生づくりそのものへの可能性を開く介護や支援を必要としている。密着した系統的な支援体制、意向に柔軟に対応できる余裕ある支援体制などが求められる固有性がある。制度設計の理念論議こそ優先されるべきである。

 ■市町村にも責務
  新しい支援法によるサービスの利用は、公金を支出する市町村の決定を経る。その決定は障害者住民に責任を果たすものにしなければならない。市町村は障害住民が自己決定できるだけの条件を整える義務がある。
  京都府・京都市が実施を表明している総合的な負担軽減策は、自治体の上乗せによるその典型であろう。国の判定基準をもとにした市町村の障害程度区分基準・支給決定基準、国のガイドラインをもとにした悉皆(しっかい)調査などによる福祉計画策定方針など、障害者に対する、そして国に対する市町村の責務と権限を明確にすることで、障害者施策の実績を大きく拡充していく方向もある。


 *みねじま あつし
   1949年大分県中津市生れ。東京都立大学人文科学研究科教育学
   専攻博士課程修了。愛知江南短期大学を経て2001年より現職。
   全国障害者問題研究会副委員長、愛知県江南市高齢者総合対策懇談     会委員長。専門は障害者福祉の制度政策論、実践論。


 
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