2014/7/21

誰がショパンを弾いたか(羽生結弦選手新プログラム・バラ1について)  ピアノ

金メダリスト・羽生結弦選手の新プログラムは、ショパンのバラード1番!・・とニュースになった後、演奏者は誰だと思うかと複数の方からご質問を頂きました。

その時、お返事にも書いたのですが、昔、あるTV番組の中で、日本を代表する超有名女流ピアニストさんが、ご自分の演奏を当てるという企画で、自信をもってこれだと言った演奏が、全く別人の外国の巨匠の演奏だった・・ということがありました。(^^;)

つまり、演奏家ご本人が間違えるほどですから、特定は難しいですし、数えきれないほどあるバラ1の演奏を、片端から聴き比べている時間はないので・・と、ご容赦頂きました。

具体的にピアニスト名を複数挙げられた方もいらっしゃいましたが、同じピアニストでも若い頃の演奏と、10年、20年たってからでは考えも感覚も変わると思うので、やはり断言はできません。
が、有名どころを数人、聴いてみました。アルゲリッチ、アシュケナージ、ポリーニ、ホロヴィッツは、明確に違いますね。ツィメルマンは確かに似ていますが、違うところもあります。

分かりやすいようにポイントを絞って、コーダ(イタリア語でしっぽの意。最後に1回だけ出てくる締めの音楽)で比較します。この曲では、prest con fuoco(prestは極めて速く、con fuocoは英語のwith fire=炎を持って=激しく)と指示された聴かせどころで、ジェフの編集ではここをほとんど使っています。


アルゲリッチのコーダの演奏は、凄い速さなのと、あまりバス(最低音の声部)を出さないで軽い感じに疾走しています。ホロヴィッツも、それに近いくらい軽く速く疾走しています。こういう疾走感も魅力ではあっても、こういう演奏ではあの振り付けはできないです。
(ただ、アルゲリッチは、第1テーマでゆらりと踊るような表現をしていてそれは凄く魅力的)

逆にポリーニのライブ録音のコーダは内声も含めてすべてをしっかり出して豪華ですが、やや重い感じ。アシュケナージは高音を出していて、バスはあまり聞こえてこない感じです。

結弦君の演奏者とツィメルマンは、バスの音楽が聴こえて、次のページに続く音楽の盛り上がりに重要な役割を果たしています。そして、バスが出ているからこそのリズム感があり、極めてテンポの速い激しい踊りのような雰囲気が出ています。


では、結弦君の演奏者はツィメルマンなのか?というと・・・イントロもそっくりですし、共通点は多いのですが、最後の締めの3つの和音のタイミングが明らかに違います。

ツィメルマンの方がラストの和音を(時間的に)溜めてから弾いているので、堂々と「終わった!」という感じ。結弦君の演奏者は勢い余って最後の和音へ飛び込んだ感じ。

もちろん、同じ演奏者でも、その時の演奏によって違うこともありますが、ツィメルマンはレパートリーを人前に出すまでに10年かける人ですし、さらに、若いころからのレパートリーですから、もう、体に浸み込んでいるはずです。溜めるつもりだったけれど、勢い余って飛び込んじゃった・・・とは、まず、ならないと思います。


というわけで、この人!と断言できる演奏者には出会っていません。

でも、誰が弾いたか・・より、私が気になるのは、なぜ、この演奏を選んだか・・ということです。


結弦君の演奏者は、コーダでバスを生かし、どこか踊りのような独特のリズム感も生かしています。また、第1テーマの長い音をたっぷり長く響かせ歌っている(歌うように表現している)ことも含めて、とても魅力ある演奏です。


それだけ良い演奏だからこそ、世界的な有名演奏家の名が挙がるのでしょうけれど・・・例えば、これが、若い無名のピアニストの演奏を、ジェフが動画などで発見し、気に入って使った・・とかいう話だったら、さらにステキだと思ったりします。

立派な経歴であるほど、演奏も立派とは限りません。

もちろん、普通に考えれば、有名演奏家の演奏を使うでしょうけれど、そういう基準ではなく選んだ演奏であったらいいなと、ちょっと思いました。

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