太陽と月(桜薫る番外編) 7.司の過去

2010/12/26  1:13 | 投稿者: おるん

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◇◆◇7.司の過去

高校を卒業して数日。
家のリビングでゴロゴロしながら映画のブルーレイを見ていた。
兄貴も仕事が休みのようで家に居る。
リビングを覗いた兄貴が俺に向かって言う。
「竜士、今日は家でゴロゴロしてるのか?珍しいな。」
「あー?金が無ぇんだよ。別に行かなくちゃならないところもねぇし。」
「なんか不健康だよな。体でも動かせばいいのに。」
「何言ってんだよ、これでも俺は結構鍛えてるんだぜ?それに、出掛けても不健康そうなところにしか行かねぇよ。」
「ふふ。それはそうかもな。」
「兄貴こそ、どっか行かねぇのかよ?」
「そうだな、昼間から酒を飲むのもね。」
「けっ、そっちのほうがよっぽど不健康だぜ。」
「竜士も成人したら一緒に飲みに連れてってやる。」
「やだよ、何で兄弟で飲みに行くんだよ。」
「えー?男同士、色々あるだろう??」
「ねぇよ、バカ!!」
「ほう、この兄に向かってバカとか言うか…。」
兄貴の目が光る。
「わわっ、冗談!冗談だって!お兄ちゃん!!」
兄貴がリビングに入ってきて、俺の座るソファまでやってくる。
逃げようとしたが時既に遅し。足を掴み取られてツボ押し。
「ぎゃぁぁぁっ!痛てぇって、兄貴!やめろっ!!」
「ほう、これは胃がかなりやられてるな。肝臓もか?未成年が酒なんか飲んでるんじゃないだろうな?」
「の、の、飲んでませんっ!俺が不健康なのはわかったから、もうやめて!!」
「わかったのならよろしい。そうだな、俺の机の上に万歩計があるから、それ着けて歩いて来い。」
「えぇ?万歩計??なんでそんなの持ってんだよ?」
痛い足をさすりながら聞く。
「あぁ、忘年会のゲームの景品。使わないけど、捨てるわけにもいかないし、あげる人も居なかったから。」
「ふーん…。ま、いいや、じゃあ音楽聞きがてら、ちょっと公園にでも行ってくるか。」

久しぶりに入る兄貴の部屋。
昔はもっと乱雑で煙草臭かった気がするけど、大学に入ったあたりから小奇麗な部屋になった。
家具も買い換えられて、整理整頓が行き届いていて、ホテルの部屋みたいだ。
「教師の鑑ってヤツか…。昔は不良だったのに。」
机の上を見て、あれ?と思う。
写真立てが置いてある。裏向きに。そっと手にとって表を見る。
あ…、兄貴と女の人…。彼女かな?
そういえば、初詣の後、相葉の姉貴がそんなことを言ってたな。兄貴は逃げられたって言ってたけど、この人が?
どこかしら、桜に似ている気がする。仲良く肩を寄せ合って写っている二人。
兄貴が優しく微笑んでいて、彼女も嬉しそうで、とても別れそうには見えない。
「ん?」
写真立てが置いてあった場所の奥に小さな箱があった。
写真立てを置いて、そっと箱を手に取る。開けてみると指輪ケースと思しき箱が入っていた。
「ダイヤモンド??」
指輪ケースを開けると石のついた指輪が入っていた。そっと指輪を抜き取ってリングの内側をみる。
『Tsukasa to Natsuki』
司からナツキへ…。これって婚約指輪なんじゃねぇの?兄貴、かなり本気だったんだな。
摘んだ指輪をTシャツで拭ってケースに戻す。
箱を元通りにして写真立ても元に戻したその瞬間、ドアが開いた。
「竜士?」
「あっ、兄貴。」
「万歩計、見つからないのか?」
「え?あぁ、どこだよ?」
「あれ?机の上にないか?…あるじゃないか、目の前に。」
「あぁ、これ??時計かと思った。」
「あんまり、人の部屋を物色するなよ。」
「…ごめん、兄貴…。」
俺の視線の先を見て、兄貴が言う。
「ん?…あぁ、それ、見たのか?」
「ああ…。」
「彼女も白薔薇から慶応に行ったんだよ。俺の一個後輩。」
「付き合ってたんだろ?」
「ああ。結婚するつもりだった。」
「いつ?なんで結婚しなかった?」
「えぇっと、大学三年から付き合いだして、就職した最初の夏にプロポーズするつもりだったんだけど。」
「兄貴なら振られたりしないだろ?」
「はは、そうだな。振られたんじゃない。…彼女、事故で亡くなったんだ。」
「え!?」
兄貴が穏やかな顔で俺を見ている。
「ええっと、兄貴が就職した時……俺は中三か…。そんなこと全然知らねぇぞ!?」
「そりゃ、誰にも言ってないからな。学校にも家族にも友達にも。奈月の友達はもちろん知ってるけどな。」
「そんな…。兄貴、指輪、まだ大事に…。」
「えぇ?指輪まで見たのか?お前ってヤツは…。」
くすっと笑って言う。
「まだ奈月が忘れられないんだ。奈月を過去にできたら、その指輪を奈月に渡す約束なんだよ。」
「兄貴…。」
「ま、俺もまだ若いから大丈夫。そのうちまた、いい出会いがあるさ。」
「…桜みたいな?」
「え?あぁ、谷本さんね。確かに彼女、奈月に似てるね。なんとなくだけど。」
「でも、アイツは草間のモノだからな。手ぇ出したらいくら兄貴でも許さねぇぞ。」
「おやおや、かなりの入れ込みようで。お前だって、彼女のコト、好きだったんだろう?いいのか、他の男に取られたままで。」
「いいんだよ、俺のコトは。桜が幸せだったら良いんだ。それに、草間のコトも嫌いじゃない。」
「ふふ、大丈夫。
確かに、彼女に初めて会った時、これは神様がくれたチャンスなんじゃないかって思った。
彼女が俺のコトを好きになってくれたら…、草間君ももっと情けない男だったら…、と思ったけれど。
やっぱり彼女は奈月じゃないし、俺は奈月の代わりが欲しいわけじゃない。」
「…。」
「いつかちゃんと、俺が心から大事に思える人が、そして俺のコトを大事に思ってくれる人が現れると思うから。」
「…。」
「んー。もうすぐ現れると思うんだよな。…よく当たる占い師にでも見てもらうかな。」
兄貴が手を組んで上にあげ、背伸びをしながら言った。
「なんだよ、それ。」
「なんかそんな気分なんだよ。よし、竜士、相葉君に連絡取って。」
「えぇ!?意味わかんねぇ!」
「ほら、いいから。彼のお姉さんが良く当たる占い師なんだよ。」
「えぇ、知らねぇし…。ええいくそ、桜に聞けばわかるかな…。」

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1.よく当たる占い
<6.閻魔帳 8.新しいスタート>
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