雪解け(桜薫る番外編) 8.自分の居場所

2010/11/27  0:47 | 投稿者: おるん

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注)本文中にある名称は実在の物・人・団体とはなんら関係ありません。
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◇◆◇8.自分の居場所

あのライブの日から数日。
俺も綾乃もまた今までどおりの平穏な生活に戻る。
「草間君、文化祭の施設使用のプログラム、これでいいか、各団体に確認してきてくれる?」
「…はい。行ってきます。」
綾乃から書類を受け取り、上の部室街を巡る。

「失礼します。生徒会です。」
軽音楽部のドアをノックして開ける。鋭いエレキの音がアンプから流れている。
思わず耳を塞ぎたくなる。
聞こえていないらしく、もう一度ドアをバンバン叩き、大声で叫ぶ。
「すみませーん!!!生徒会ですー!!!」
キュイーンという音を最後に、一旦全ての音が止む。
「あ?何??」
部長と思しき男子生徒がドラムセットの前から立ち上がりこちらにやってくる。
「あの、文化祭の舞台のスケジュールなんですけど、上演時間、演目はこれでいいか確認お願いします。」
「ああ、わかった。」
書類を手にとって眺める部長。そんな部長にそっと聞いてみる。
「あの、綾川竜士って軽音楽部なんですか?」
「え?誰?」
「あぁ、違うんならいいんです。綾川がギターを弾いているのを見たので、てっきり軽音楽部に入っているのかと。」
「綾川…ギター…あの赤毛か?アイツと同じ中学だった後輩が居て、連れてきてたな。」
「入部しなかったんですか?」
「あぁ、めんどくせぇって。あ、でも文化祭にはちょっと出るみたいだな。後輩に頼み込まれてたから。」
「そうですか…。ま、ステージ馴れはしているかもしれませんね。ROZEで演ってましたから。」
「へぇ!イッチョ前にライブハウスに出てんのか!そりゃ上手いはずだな。
にしても、生徒会役員がライブハウスなんて、意外だな。」
「たまたまです。普段は行きませんから。」
「ふぅん。ま、いいや。このスケジュールでいいよ。曲目は変わるかも知んないけど。」
「ありがとうございます。では、楽しみにしています。」
「おう。」

綾川が文化祭に出る。
そう聞いて、後日、軽音楽部の練習をそっと覗いてみた。綾川がギターを持って部室に居る。
普段、学校なんかどうでもいいという感じだし、友達も居なさそうな綾川。
なんだかんだ面倒そうな顔をしつつも、他のメンバーにギターを教えてやったり、それなりに打ち解けて練習しているようだった。

…綾川は人付き合いが上手いみたいだな…。少なくとも俺よりはずっと。

それなりに皆、自分の居場所を確保している。
俺は…。俺は人付き合いなんて面倒だと思っている。
生徒会の連中とは、綾乃が居ることもあるし、結構気が合うメンバーが揃っているので仲良くやれていると思う。
だが、自分の感情を見せることはほとんどないし、相手の懐に深入りしたこともない。
自分の居場所はこれで十分だと思う一方、もっと居心地をよくすることも出来るのではないかと思ったりもする。

「薫、もうちょっと何か話せばいいのに。」
学校の帰り道、綾乃にそう言われた。
「…俺は必要な事はきちんと伝えているつもりだが?」
「…あのねぇ。確かに必要最小限は満たしているかもしれないけど、皆人間だから感情があるの。」
「…。」
と言われてもどうしろと?
俺の反応を見て、彼女が困った顔をした。
「例えばねぇ…。お店に入って、店員さんに無愛想に機嫌悪そうに『いらっしゃい』って言われるのと、
愛想良くにこやかに『いらっしゃい』って言われるのとどっちが気分良い?」
「…それは…。」
言葉に詰まる。彼女の言いたいことは分かった。
「でしょう?人間ってそんなもんなんだから。気分良く作業してもらおうと思ったら、少しのサービスは必要。
サービスでなくて心から出来ると最高だと思うけど。」
「そんなこと…どうして今言うんだ。」
そんなこと、言われても出来ない。分かっているくせに。
「さっき、榎本君困ってたよ。薫が極力他人と接触するのを避けようとするから作業進捗の管理が大変だって。
ちゃんと自分の作業の進捗報告はしてくれるし、能力があるのも分かってる。
時々、自分のでも他人のでも、先回りして作業進めてくれてたりするものね。
でも、人の気持ちの問題もあるし、人それぞれ思惑というか段取りがあるから、もう少しコミュニケーションを取ってくれると嬉しいって。」
上手くやっていると思っていたのは俺だけということか…。気を遣ったつもりが混乱させてしまったらしい。
「…そう、だな…。今まで全部自分でやろうとしすぎていたかも知れない…。」
「そそ。…でも皆、薫の事、尊敬というか、凄いなって言ってるのよ?…だから、頑張ってよ、次期会長!」
綾乃が俺の背中をバンと叩いた。同時に意外な単語が聞こえた。
「え!?次期会長!?」
「ふふ。ここだけの話だけど、私も榎本君も山中先生も、薫を会長に推そうとしてる。」
綾乃が不敵な笑みを浮かべて俺を見ている。
「な、なんで?平山会長は辞めるつもりなのか?」
「ううん。多分、彼女も出る。でも、私は彼女よりも薫の方が会長に向いてると思うから。」
確かに平山会長はどちらかと言えば行き当たりばったりの感覚人間だから会長には不向きだと思うところもあるが…。
さっき俺にダメ出しをしたところではないか。
「そんな、こんな俺に会長が務まるのか…。」
「中学でもやってきたでしょう?」
「中学とは次元が違うだろう。この学校の生徒会は自治会だ。中学のは自治には程遠い…あんなのは飾りだったじゃないか。」
「飾りでも校則を変えたじゃない。」
「…。」
考え込んだ俺を尻目に、綾乃が優しい笑顔で微笑みかけてくる。
「ま、頑張ってくださいな。まずは愛想良くして友達増やすことからかなぁ。ツンツンしすぎなのよ、薫は。」
「なっ、なんだ、ツンツンって。」
「そのままです。」
「…すぐ年上ぶって偉そうに。」
「だってお姉ちゃんなんだから。…年下のくせに偉そうなのはどっちよ。」
「ふん。まぁいい。期待に応えてやるから見ていろ。」
期待されるのは苦手なはずだったのに、無性に嬉しい俺が居る。
もう少し、学校の中での自分の居場所を居心地良くしてみようと思った。

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2010/11/28  23:46

投稿者:おるん

>紫さん
ありがとうございます♪
そうですね。
薫君の意識が変わったのは白薔薇学園で出会った人たちのお陰ですよね。
最後の仕上げが桜ちゃんということで。^^
ほんと、薫君はいい人生歩んでいると思います♪

2010/11/28  11:18

投稿者:紫

一応、お話の主旨としては、「恋によって徐々に変わっていく思春期の少年」ということなのかもしれないけど、会長の変化は、桜ちゃんによってだけではなく、きっと綾乃ちゃんや竜士、生徒会メンバーなど、いろんな人によって促されてきたものなんだなぁ〜と、感じました。

周りが自分に刺激を与えてくれるいい人たちばかりで、会長は幸せですね。

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