旅路

2019/1/3  0:23 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆旅路◆◇◆

楽しみにしていた修学旅行。
その1ヶ月前に交通事故にあって入院していた。

「よぉ、元気か?」
「わぁ!潤くん!」
「ケーキ買ってきた、食う?」
「うん、食べる食べる!!」

潤くんは私の彼氏。
下校中に車に跳ねられ、脚を骨折。
手術をしたので入院していた。

コップにお皿とフォーク。
潤くんが手慣れたようにベッドテーブルを私の手元に引いてきて、サイドボードから取り出した食器を並べる。
ペットボトルの紅茶をコップに注ぎ、好物のモンブランをお皿にのせた。

「いただきます♪」

もったりとしたマロンクリームに、口でホロホロと崩れて溶けるカラメル。

「おいひー!」
「俺にも一口。ん。旨いな。
で、咲、お前、ちゃんと退院できるんだろうな?」
「できるよ!修学旅行には間に合うって!
もしダメでも、車イスで行っちゃうよ!」
「そうだな、そんときは俺が車イス押してやるよ。」

その日の学校の出来事などの他愛もない話をして、その日のノートのコピーを受け取った。

「もうこんな時間か、俺、塾にいかないと。じゃあ、またな!」
「うん、またね!」

◆◇◆

待ちに待った退院!
待ちに待った修学旅行!

東京から新幹線で京都へ。
今時、国内旅行なんて地味だなって思うけど、潤くんと一緒なら、それだけで楽しい!

潤くんとは同じ班で、市内観光は一緒に行ける。
部屋はもちろん違うんだけど。

京都についたらまずは清水寺に。
お寺の外にはお店も一杯あって、お土産選びに悩む。
同じ班の女子とキャッキャと騒ぎながらあれこれ物色する。
男子も女子に合わせて買い物に付き合ってくれている。
「お前らー、買い物もほどほどにしてくれよー。」
「はぁい。」

潤くんが私の隣に来て囁く。
「お前、あぶらとり紙欲しいって言ってたよな?
これとか、入れ物もかわいいかな?」
「うん、じゃあ、これにしようかな??」
「これくらいだったら、俺が買ってやるよ。」
「ありがと!あとで私にもなんか買わせてね。」
「ああ。」

一緒に甘味を食べたりして京都観光を満喫した。
潤くんと一緒に写真をたくさん撮った。

班行動で時折、潤くんが私達から離れて空を見上げていた。
いつもと比べてなんだか静かな気もするし、体調悪いのかな?

「ねぇ、潤くん、体調悪いの?大丈夫?」
「ん?大丈夫だよ、咲。そんな顔するな。」
そういって、優しく微笑んで私の髪をくしゃっと混ぜた。

◆◇◆

翌日。
今日は男子と女子とで行きたいところが別れたので別行動。

女子は当然、縁結びの神社へお参りに。京都に来た一番の目的と言って、過言ではない!
といっても、私には潤くんがいるんだけど。ずっとそばにいれるようにお願いするんだ。

男子はどこに行ったんだろう?大学巡りかなぁ。漫画ミュージアムとかかもしれないし、祇園とかかもしれないなぁ。
お揃いのお守りも買ったし、夕飯の時に渡して、ついでにどこにいったのか聞いてみよう。

◆◇◆

ホテルに帰って、夕飯までの自由時間。
潤くんと話したいなと思って部屋を出る。
なんだか変な感じ。
学校が休みだったりすると2〜3日会わなかったりすることもあるし、いつもはそんなに寂しくないのに。
今日はたったの6時間程度離れていただけなのに、ものすごく寂しくて、潤くんに会いたくて会いたくて仕方がない。
男子の部屋を覗いてみたけど居なくて、あちこち探す。
そしてやっと、ホテルの土産物屋さんに潤くんの姿を見つけた。

「潤くん!」

呼んだのに聞こえなかったのか、こちらを向いてくれない。

潤くんはお土産選びに夢中なのか、一向に私に気付かない。
彼の背後にそっと近づいて手元を覗き込む。
何かマスコットのストラップを探しているみたい。

「あ、たわわちゃん、可愛い♪」

思わず小さな声で呟いた。
あ、流石に気付かれたかな?

私の声が聞こえたのか聞こえなかったのか、潤くんは振り向かないまま、たわわちゃんのストラップを2つ手にとってレジに向かった。

このあと私にプレゼントしてくれるのかな?
そう思いながら、お土産物屋さんの外で彼が出てくるのを待った。

それが、私に気付かないまま、通りすぎて部屋に向かっていった。

◆◇◆

気付かないことってあるかなー?
普通、あの距離だったら気付くと思うのよね。
どうしたんだろ??
まあ、また夕飯の時に会うからそれでいっか。

ぐるぐる考えても仕方がないので、部屋に戻る。
同じ部屋の女子たちが何やら話している。

「そういや、石崎くん、元気ないよね?」
「ああ、潤くんね。そりゃ、あんなことがあったところだもの、無理ないよ。」
「私たちだってショックだったし、心からハシャげるかっていうとさ。。」
「そうだよね、彼が一番辛いよね。」

何の話?って入ろうとしたところで、皆がぞろぞろ出てきた。

「ほら、晩御飯の時間だよ、ご飯食べよ!」

そう言われて、私も一緒に移動することにした。

「待って、私も行く!」

◆◇◆

夕飯を食べようと席につく。端っこの席で、向かいに潤くんが座るはずだった。
男子たちが一向に降りてこないなぁと思っていた。

急にふっと大広間の照明が消えた。
直ぐに薄暗く非常灯が点く。

なにこれ?と思っていると、ジリリリリと非常ベルがなった。
厨房で火事があり、燃え広がっているようで館内放送で避難を呼び掛けるアナウンスが流れた。

キャー!っと女子の悲鳴が上がる。
軽くパニック状態の中、先生が指示を出し、静かに階段を下りることになった。
私はその辺りの席のおしぼりをいくつか持って立ち上がり、移動した。

1階に降りてきたけど、向かいに座るはずだった潤くんと、同じ部屋の男子たちが見当たらない。
見渡しているとそのうちの何人かは降りてきた。

「なんで?なんで潤くんがいないの?」

どうやら何か大切な忘れ物があるとかで、一度部屋に戻ったらしい。

そんな!

居ても立ってもいられなくなり階段を駆け上る。
スプリンクラーが稼働したのか、階段の絨毯が湿っている。
更に上ると、いよいよ火事で防火扉があるのに煙が流れてきた。
身を屈めながら、さっきのおしぼりをひとつ、口元に当てて階段を上る。
途中に消火器があったので確保して潤くんを探す。

火事のすぐ上の階に潤くん達が居た。二人とも煙を吸ったのか、ぐったりしている。

「潤くん!」
「サンキュ。もうちょっとだ、辛抱して下まで歩いてくれ。」

私から受け取ったおしぼりをもう一人にも持たせた。
私は消火器を持って、彼らの後ろについて歩く。
階段を下りていくと、絨毯から火が出だしていた。

彼らの歩くところを確保すべく、床の火を消火器で防ぐ。

なんとか下まで避難できた。
二人と一緒に、念のため病院で手当てを受けることになった。

◆◇◆

「潤くん。」

呼び掛けても返事をしてくれない。

「一体、何を取りに戻ってたの?」

潤くんがポケットの中から何かを取り出した。

「これ、さっきのたわわちゃん。これのために??」
「咲にあげようと思って。俺とお揃い。」

そんな!こんなの、いつだって買えるのに!
私が可愛いって言ったから??

「喜ぶと思って。咲、俺も…。」

そういって、彼が目を閉じた。

「やだ!ねぇ!死んだりしないよね!?」

彼に必死にしがみつく。
が、しがみつこうとしてもしがみつけない。感触がわからない。



私の心の中がざわざわと騒ぐ。



何かがおかしい。
私、なんでここにいるの?
私、本当はここにいるはずないんじゃない?

私は交通事故にあって、入院していて、潤くんがお見舞いに来て。

脚の骨折は大したことがなかったけど。
頭を強く打っていて、数日後に意識は戻って潤くんとも話したけど。
その夜、急変してそのまま死んだんだった。

お葬式に来た潤くんは、目を真っ赤に腫らして、一言も話さず、最初から最後までうつむいて座っていた。

俺も?

潤くんも死んで、私の傍にいてくれるってこと?
嬉しいけど、それは本当の幸せじゃない。
私が潤くんから離れなきゃいけない。

「潤くん、死んじゃダメだよ。潤くんには幸せになって長生きして欲しい。」

本心だけど、でも、嫌だ、離れたくない!
嫌われたわけでもないのに、こんなに好きなのに、好き合ってるのに離れなきゃいけないなんて。
残酷すぎるよ。

ここにいる人たちは誰も私がわからない。
もちろん潤くんも。
人目を憚らず、大声をあげて泣いた。

私はここにいるのに!
ずっと潤くんの傍に居たい。
私の傍に居て欲しい。
離れたくない。
なんでこんな別れ方になっちゃったの?
嘘だって言ってほしい。
夢だって言ってほしい。
いつもみたいに目が覚めて、学校へ行って、潤くんに会うんだ!

看護士たちが慌ただしく、傍にいる私の体をすり抜けて、潤くんの処置を続けている。
煙を吸って意識が混濁しているようで、酸素吸入と点滴が施された。

ひとしきり泣き叫んだあと、周りを見渡すと処置室も落ち着きを取り戻しつつあった。
私の傍にいる潤くんからは静かな寝息が聞こえる。

「潤くん、助かるんだね。よかった。」

◆◇◆

翌朝、潤くんたちは無事に退院した。
ホテルの火事は厨房のフロアだけで済んだらしいけど、そのまま営業するわけにも行かず、途中で中止になってしまったらしい。

分散して帰ることになった新幹線に、私も一緒に乗って帰ってきた。
潤くんは前の日よりもスッキリした顔をしていて、いつもの明るい様子だった。

「潤、昨日の今日なのに、結構元気だな?」
「そうだな、なんか、気分がいいんだ。」
「石崎くん、旅行に来る前より元気になったんじゃない?」
「そうか?そうかもな。
昨日の火事、俺、死ぬかもって思ったんだけど、咲が助けてくれた気がするんだよな。」
「案外そうかもな。49日もまだだし、今も一緒にいたりしてな。」
「ちょっと、やだ、咲だったとしても怖い。。」
「そういってやるなよ、あいつ、めちゃくちゃ楽しみにしてたんだからさ。」

修学旅行、私がすごく楽しみにしてたから、連れてきてくれたんだね。
潤くん、ありがとう。
たわわちゃん、大事にするからね。

-終-
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2019/1/3  0:59

投稿者:おるん

◆◇◆あとがき◆◇◆

ていう夢を見たんだよ。
なかなかすごい夢見たなー。

松本潤と井上真央なイメージだったんで、女の子は真央でもよかったんだけど、
ベタかなとおもって違う名前にしときました。

実は自分は死んでるって気づいて、離れたくないと号泣してるところで目が覚めましたー。
夢から覚めてもしばらく泣いてたので、私の脳みそ、かなりヤバイと思います。


(mixiより転載 2017.07.16 小塚彩霧)

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