IF 25.終章
2019/1/2 23:49 | 投稿者: おるん
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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆25.終章◆◇◆
あれから20年。
SNSで中学の同窓会が開催されることを知った。
あっちゃんとも信弘とも別れたあと、結局音楽が忘れられなくて、新設された弦楽部に入った。
吹奏楽部ほど大所帯でもなく、強豪でもなかったので、のんびりした部活だった。
あっちゃんが部活をしていたのかどうかはわからないけど、部活の時間と合わないせいか殆ど見かけなくなった。
たまに家の前ですれ違ったりしても言葉を掛け合うこともなくなった。
高校卒業後、お互いに家から遠い大学に進学し、下宿生活になった。
その間に双方の実家が引っ越してしまって、全ての関わりがなくなった。
「同窓会か…。あっちゃん、生きてるんやろか?」
同窓会のポータルページに、あっちゃんの名前があった。
「生きてるっぽいな…。来るんかな…?」
欠席の欄に名前があった。
ある意味ほっとした。
友達に誘われて参加するつもりにしていたから、できれば会いたくないと思っていた。
いや、ホントはものすごく会いたい。
でも、会ったら色々なものが溢れ出して抑えきれないんじゃないかと思って怖い。
20年の間にいろんなことがあった。
母が亡くなり、父の会社も倒産。通っていた大学院は中退。
何とか就職してシステムエンジニアとして働いている。
一番驚きなのが、会社の先輩と普通に結婚して、子供を二人も産んだこと。
子供の頃からずっと欲しかった普通の生活。
駅近くの分譲マンションに家族4人で暮らしてる。
お陰さまで、自分でも意外なほど幸せだ。
あっちゃんはどうしているんだろう?
同窓会であっちゃんのことを知ってそうなヤツがいたら聞いてみたいなぁ。
誰か知っている人が来ると良いけど。
◇◆◇
当日、少し遅れて会場についた。
受付で名前を書こうとしていると、同じように遅刻してきた男性が隣に立った。
その人が受付の人に聞く。
「今日、欠席で出してたんやけど、急に来れるようになって。構わへんかな?」
「津川、久しぶりやな!構へんで、名前書いて入りや。」
えっ!?
驚いて顔を上げた。
そこには20年ぶりのあっちゃんの姿があった。

「………。」
「よぉ。」
「あっちゃ…!
…津川くん、久しぶり。変わらんね。」
「村井は…歳食ったな。」
「うるさいわ!」
「うそうそ、変わらんよ。」
「元気そうで何より。」
「そちらも。結婚したんやな、名前。」
「お陰さまでね。津川も?」
「まあね。」
「幸せそうやね。」
「お陰さまで。村井に振り回されたお陰で女の扱いが上手くなりまして。」
「あほ!もう、早よ会場に入りや!」
私の初恋の人。
今も変わらずかっこいい。ちょっとオジサンになったけどね。
彼の初恋の人だった私。
昔と変わらずどんくさくて。彼の顔をひと目見ただけで泣きそうになる。
心が一気に20年前に遡る。
世界が全てキラキラと輝いて眩しかった頃。
確かに私はあっちゃんと同じ時間を過ごした。
その後歩んだ道は別々になったけど、あの時間は今でも宝物だ。
あの時間があったからこそ、今の私がいるのだから。
「あっちゃん、ありがとう。」
小さな声で囁いたのに、しっかりあっちゃんには聞こえていて、私の頭を小突いた。
「俺の方こそ。…ほら、早よ来いよ。」
二人で会場の扉を開けた。
-終-
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1.序章
24.旅立ち
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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆25.終章◆◇◆
あれから20年。
SNSで中学の同窓会が開催されることを知った。
あっちゃんとも信弘とも別れたあと、結局音楽が忘れられなくて、新設された弦楽部に入った。
吹奏楽部ほど大所帯でもなく、強豪でもなかったので、のんびりした部活だった。
あっちゃんが部活をしていたのかどうかはわからないけど、部活の時間と合わないせいか殆ど見かけなくなった。
たまに家の前ですれ違ったりしても言葉を掛け合うこともなくなった。
高校卒業後、お互いに家から遠い大学に進学し、下宿生活になった。
その間に双方の実家が引っ越してしまって、全ての関わりがなくなった。
「同窓会か…。あっちゃん、生きてるんやろか?」
同窓会のポータルページに、あっちゃんの名前があった。
「生きてるっぽいな…。来るんかな…?」
欠席の欄に名前があった。
ある意味ほっとした。
友達に誘われて参加するつもりにしていたから、できれば会いたくないと思っていた。
いや、ホントはものすごく会いたい。
でも、会ったら色々なものが溢れ出して抑えきれないんじゃないかと思って怖い。
20年の間にいろんなことがあった。
母が亡くなり、父の会社も倒産。通っていた大学院は中退。
何とか就職してシステムエンジニアとして働いている。
一番驚きなのが、会社の先輩と普通に結婚して、子供を二人も産んだこと。
子供の頃からずっと欲しかった普通の生活。
駅近くの分譲マンションに家族4人で暮らしてる。
お陰さまで、自分でも意外なほど幸せだ。
あっちゃんはどうしているんだろう?
同窓会であっちゃんのことを知ってそうなヤツがいたら聞いてみたいなぁ。
誰か知っている人が来ると良いけど。
◇◆◇
当日、少し遅れて会場についた。
受付で名前を書こうとしていると、同じように遅刻してきた男性が隣に立った。
その人が受付の人に聞く。
「今日、欠席で出してたんやけど、急に来れるようになって。構わへんかな?」
「津川、久しぶりやな!構へんで、名前書いて入りや。」
えっ!?
驚いて顔を上げた。
そこには20年ぶりのあっちゃんの姿があった。

「………。」
「よぉ。」
「あっちゃ…!
…津川くん、久しぶり。変わらんね。」
「村井は…歳食ったな。」
「うるさいわ!」
「うそうそ、変わらんよ。」
「元気そうで何より。」
「そちらも。結婚したんやな、名前。」
「お陰さまでね。津川も?」
「まあね。」
「幸せそうやね。」
「お陰さまで。村井に振り回されたお陰で女の扱いが上手くなりまして。」
「あほ!もう、早よ会場に入りや!」
私の初恋の人。
今も変わらずかっこいい。ちょっとオジサンになったけどね。
彼の初恋の人だった私。
昔と変わらずどんくさくて。彼の顔をひと目見ただけで泣きそうになる。
心が一気に20年前に遡る。
世界が全てキラキラと輝いて眩しかった頃。
確かに私はあっちゃんと同じ時間を過ごした。
その後歩んだ道は別々になったけど、あの時間は今でも宝物だ。
あの時間があったからこそ、今の私がいるのだから。
「あっちゃん、ありがとう。」
小さな声で囁いたのに、しっかりあっちゃんには聞こえていて、私の頭を小突いた。
「俺の方こそ。…ほら、早よ来いよ。」
二人で会場の扉を開けた。
-終-
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1.序章
24.旅立ち

2019/1/3 0:53
投稿者:おるん
mixiより転載 2013.08.05 小塚彩霧 as 奥崎おるん