IF 23.冬のできごと

2019/1/2  23:43 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆23.冬のできごと◆◇◆

正月も終わった。
もうすぐ学年末考査。
また勉強漬けの毎日になる。

塾の授業が終わって、ビルから出ようとしたところで、後から声を掛けられた。

「津川君!」
「あ、ああ、原口か。」
「最近、あんまり喋ってくれへんやん?」
「成績がな、余裕ないねん。悪いな。」

ちらっと彼女の顔を見たが、それ以上関わりあいたくなくて、さっさと歩き出した。

「途中まで一緒に帰ろ?」
「…。」

彼女は懲りずに俺に付いてくる。
俺がその気がないこと、分かってるくせに。
俺が半年前まで圭子と付き合ってて、なんで別れたか知ってるくせに。
俺はそこまで良いヤツじゃない。

「なぁ、テスト終わったら、デートしいひん?」
「…。」

デート…性懲りも無く。
クリスマスにも誘われたけど、俺は行かなかった。

「…バレンタインデー、昼の1時にロケット広場で待ってるから。」
「…俺は行かへんで。」
「クリスマス、4時間待ってんから。今度は絶対来てよね。」
「…。」

だから、俺は行かへんって言うてるのに。

「ずっと待ってるから。」
「…自分、あほやな。俺みたいなん、やめときいや。」
「村ちゃんのこと、今でも好きなん?
村ちゃん、もう津川君のコトなんとも思ってないって。ナッコ、付き合ったら?って。
村ちゃん、しばらく彼氏作る気ないって。」

圭子のことを持ち出されて動揺した。

「俺は別に、圭子のこと…。」

口ごもった俺を見て、彼女が俺の肩を押した。

「ウソばっかり。
私は、村ちゃんほど津川君のコト知らんけど、津川君のコト好きや。
村ちゃんの代わりにはなられへんけど、傍に居りたい。」
「俺、原口のこと、そんな風に考えられへん…。」

真っ直ぐ見つめる彼女の瞳から走って逃げた。

「津川君!待ってるから!」

◇◆◇

原口奈津子。
圭子のクラスメイト。
俺と同じ塾に通ってる。
それ以上はあんまり知らない。

俺のこと、好きやって言う。信じられへんけど。
圭子とはまたちょっと違って、図々しくもあるけど、典型的な女子で黙っていれば美人なんじゃなかろうかと思う。
そんな彼女が、俺のことを好きやって言う…。

「1時か…。」

バレンタインデー。ロケット広場。待ち合わせ。
クリスマスと同じく、行くつもりはない。
今日も寒いよな。また4時間とか待つつもりなんやろうか?
いや、流石に懲りて、程よいところで帰るやろ…。

圭子やったら…。
『あっちゃんのバカ!』って言うかな?
怒り通り越して喋ってくれへんかも。いや、泣かれるパターンもあるか?

今、こうして約束すっぽかしてベッドの上で転がってるの知ったら…。
夏祭りの時、『私よりナッコのこと優先したくせに!』って怒ってた。
圭子…。原口も同じ気持ちやろうか?

俺が着く頃には流石に帰ってると思うけど、まだ待ってて風邪ひかれたりしたら敵わんし。

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「あほ…!」
「!!」
「原口、お前、あほやろ…。」
「おそーい!やっと来た!今日は2時間待ったで!」

帰ってて欲しかった。でも待ってると思ってた。
寒いのにずっとここで…。
鼻の頭がちょっと赤くなってる。
周りはカップルだらけで、心細かったやろうに。

「今日は好きなところに付き合うわ。」
「うん。ありがとう。来てくれて。」

◇◆◇

二人で腕組んで歩いて、映画見てお茶して。
原口は俺が待たせたことについては責めず、楽しそうに笑ってた。
なんで俺やねん。見る目ないわ。

「津川君、今日は付き合ってくれてありがとう。」
「…ごめんな。」
「いいよ、私が無理矢理誘ったんやし。」
「…。」
「村ちゃんとヨリ戻せば良いのに。」
「…。」
「私とは付き合ってくれへんのやろ?」
「ごめん。」
「…私のこと好きになってくれたら嬉しかったのにな…。」

ほんまや、原口のこと好きになれたら良かったのに。
一緒に居ったらそのうち好きになれるかもしれんけど、俺にはそんな資格ない。
圭子がしばらく彼氏いらんっていうの、少しわかる気がする。
俺もしばらく恋愛はできそうにない。
うわべだけで付き合えるほど器用でもないし、割り切ることもできない。

「あ、コレ、チョコレート。…そんな泣きそうな顔せんといてよ。」
「…ありがとう…。」
「じゃあね。また塾で。」
「ああ。気ぃつけて帰れよ。」

駅の改札で原口を見送る。
手の中にチョコの小さな包みが残った。

-続く-

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1.序章
22.プリティウーマン
24.旅立ち
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