IF 22.プリティウーマン

2019/1/2  23:37 | 投稿者: おるん

------------------------------------------------------------
#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
------------------------------------------------------------

◆◇◆22.プリティウーマン◆◇◆

その後、一日だけ出勤することにした。
無断で辞めても別に良かったと思うけど、そこはケジメをつけないといけないと思ったから。
信弘にもそのことを伝えたら、最後に指名してやると言ってくれた。
ナオは勿体無いと言ったけど、やっぱり私にはホステスなんて似合わない。

夕方、出勤しようと準備していると、あっちゃんが家まで来た。
付き合っている時でも、滅多に自分から私の家に来ることは無かったのに。

「…圭子、まだその格好続けてるん?」
「ん…。今日で最後。ホステスのバイトしてたけど、辞めるのにちゃんと挨拶せんとね。」
「そうか。」

あっちゃんがまじまじと私を見て、口ごもった。

「なに?」
「いや、それなりに見えるもんやなと思って。」
「どうせ似合わへんよ。」
「そうでもな…、いや、圭子らしくないな。」
「…私、もう行かんと。」
「もう一回言う。やり直さへん?」
「バカ…。あかんって…。」

決心がぐらぐらと揺らいで、ポキッと折れそう。

あっちゃんは自責の念があったからか、やり直したいと言ってくれた。
私にもう一度チャンスをくれると言う意味だったかも知れないし、ただ単に恋人という存在が惜しくなったのかも知れないけど。
結局、私が頑なに断ってヨリは戻さなかった。

あっちゃんのコトは好き。
でも、やっぱり一度掛け違ってしまったボタンを元に戻すのは中々難しい。
もし戻ったとしても、きっとまた同じようなことになって、お互いに相手を縛り付けて辛くなるに違いない。
あっちゃんは同じ過ちを犯さないかもしれないけど、私は自信がない。

私はもうあっちゃんに相応しくないくらい汚れちゃったもん。
汚れてなかったとしても、生まれも育ちも良くない、ガサツな私じゃダメだ。
あっちゃんにはもっと相応しい人がいると思うし、私にもちょうどいい人がきっといるはずだ。

◆◇◆

信弘の車に乗ってデート。
社会勉強だとかなんとか言って、週末には私を連れ出してくれるらしい。
今日はオペラ観るんだって。

「圭子?」
「本名止めて。」
「何で?かわいいのに。」
「名前で呼ぶの親だけやから。」
「あれ?この前、幼馴染の彼も名前で呼んでなかった?」
「バカ。あっちゃんは特別やの。」
「ハイハイ。何でヨリ戻さんのかなー、このひねくれモンが。」
「いいの!私が決めたんやから!」

車を運転する信弘が、信号待ちの間に助手席の私を見る。

「カナ。その格好じゃ、ちょっと浮くなぁ。まず、服買いに行こか。」
「そんなに変かなー?」
「カジュアル過ぎてな。フォーマルじゃなくてもいいけど。…高校生やったらあの辺でいいやろ。」

目的地に向かう途中で百貨店に寄る。
ティーンズファッションフロアに連れてこられて、適当に服を着せられる。
白いブラウスにグレーのベストとプリーツスカートのセットアップ。
コートと靴と鞄まで買ってもらった。

クリックすると元のサイズで表示します

「全身やん!こんなん全部買ってもらって、高かったやん!」
「ま、安かなかったけど、これくらい払えるがな。毎回買わされたら辛いけどな。」
「でも!私、自分で払えたし。」
「今そんなに持ち合わせなかったやろ?たまには大人に甘えとけー。子供なんやからさ。」

完全に子供扱いやん。
彼氏っていうより、お父さん。
お父さんに服買ってもらうことも最近なかったから、なんか久しぶりの感覚で笑えた。

◆◇◆

観た演目はメリーウィドウ。
大富豪の未亡人を巡る恋模様。
無一文になると聞いて、再婚相手候補が去り、残ったのはかつての恋人。
結局財産は無くならず、最後は大団円。
という内容だったと思う。
話は面白いし、音楽や歌も嫌いじゃないけど、ガキンチョだからか、オペラの面白さはまだわからない。

「面白かったか?」
「何が面白いのかようわからんかったけど、初めてやったし面白かった!」
「ははは!そらええな。色んなトコ連れてったるからな、頑張って勉強せえよ。」
「うん。ありがとう。」
「来週は何にしよかな?テーブルマナーの勉強に行くか?文楽とか歌舞伎とかも絶対行きそうにないからええかもな。」
「テーブルマナー…。美味しいもん食べさせてくれるんやったら行きたいなー。」
「ははは、ほんなら、来週はフレンチ食べに行こか。」


-続く-

---
1.序章
21.説教
23.冬のできごと
0



コメントを書く

名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL





AutoPage最新お知らせ