IF 16.夏祭り

2016/5/5  0:04 | 投稿者: おるん

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#この物語はフィクションであり、
登場する人物・施設・団体は実在のものとは何ら関係ありません。
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◆◇◆16.夏祭り◆◇◆

結局、コンクールの選抜オーディションに落ちて、2軍になった。
2軍は地区大会のみ。
その後は先輩達の応援と、2学期の文化祭に向けての練習になる。
8月に合宿があるものの、2軍メンバーは基本的には穏やかな夏休みとなりそうだ。

「…でな、あっちゃん。8月頭に2泊3日で合宿あるねんけど、その次の土日、お祭りやん?」
「うん?」
「一緒に行かへん?」
「そうやなぁ、多分行けると思うねんけど、塾があるからなぁ。」
「え?塾に行ってるの?」
「そうやねん。1学期の成績が思ったより芳しくなくて、塾に行く事にしてん。」
「へぇ…。塾の時間と被らんかったらちょっとだけでも行こうや。」
「うん。分かった。また電話するわ。」
「うん。」

◇◆◇

コンクールでは「コラールとカプリチオ」を演奏。
先輩達の1軍と比べたら全然迫力が違うけど予定通り金賞を取った。
そのまま翌日から鉢伏へ合宿に出かけて、楽器漬けの3日間を送る。
1軍は4泊5日だから2日間だけクラブが休みだ。

(クラブばっかりで買い物とかあんまり行ってなかったな…。
たまには難波とか心斎橋でもブラブラしようかな…。
あっちゃんも誘いたいけど、夏期講習に行ってるやろし…。)

ひさびさの私服にちょっと緊張しながらも電車で湊町まで行く。
繁華街まではちょっと歩かないと行けない。

(そういや、あっちゃんの塾、この辺やんな…。
なんで天王寺とかにせんかったんやろ?上町から難波って行きにくいと思うねんけど。)

線路沿いをトボトボ歩いていると、道の反対側の歩道に若い男女が歩いているのが見えた。

!! あっちゃんと…ナッコ!?

一緒の塾に行ってるの?聞いてなかった。
2人は当然、向かい側を歩く私に気付くこともなく、ナッコがあっちゃんの腕を取って歩き、なにやら親しげに話していた。

(ただ、偶然、一緒の塾に行ってるだけやんな?
並んで歩いてたからって、なんにもないやんな?)

腕組んで歩いてたけど、それはあっちゃんが断り切れてないだけで、きっと困ってるはずだ。
見なかったことにしよう、うん。
見なかったことにして、夏祭りに着ていくものでも選んでこよう。

◇◆◇

夏祭りには浴衣なんかを着てみたいけど、地元の町内会の小さなお祭りにそんなに張り切るのもおかしいし。
普段よりはちょっと女の子らしい服を着て、あっちゃんと並んで歩きたい。
オフホワイトのカットソーにベージュの花柄のAラインワンピースを合わせるつもり。
背中は編み上げリボンになっていて、パフスリーブの袖に、裾や胸元の綿レースがかわいらしい。

「明日、行けそう?」
「ちょっと無理かもしれんけど、多分、8時半までには帰ってくるから。もし帰ってこんかったらごめん。」
「ううん。早く帰ってきてくれることを祈ってるわ。」

電話でそんな話をしたのに結局、あっちゃんは当日8時半になっても帰ってこなかった。

お腹空いた…。
夏祭りに行くしと思って、晩御飯の支度してないのに。
折角だし、安くはないけど、お祭りに行って適当に出店の焼きそばとかを買ってくるかな…。

あっちゃんに見せるつもりで買ってきた新しい服も見てもらえなくてちょっとがっかり。
次はいつ見せられるだろう?

ぼちぼち家に帰る子供達とすれ違いながらお祭り会場になっている公園に入る。
いつもの静かな公園が屋台の照明で煌々と照らされて全く違う風景。
異世界に迷い込んだようなこの雰囲気が子供の頃から結構好きだ。

並ぶ屋台にフラフラと近づき、物色する。
結局、焼きそばとイカ焼きとフランクフルトを購入。
最後にカキ氷を買って帰ろう。

屋台を端まで見て、引き返そうとしたときに見覚えのある顔があった。

「あっちゃん!?お帰り!」
「圭子!」
「ごめん、待ち切れなくて先に来ててん…」

あっちゃんの傍らにもう1人居る…。

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「ナッコ!?なんで…?」
「圭子、あの、原口さんと同じ塾に行ってて。今日、このお祭りに圭子と行くんやって話したら、お祭り行きたいって…。」
「へぇ、そうなんや…。わ、私、お腹空いてるし、家に帰るとこやってん。じゃあ。」
「おい、圭子!?」
「折角、こんな辺鄙なところまで来てもらったんやし、もうちょっと案内してあげたら?
帰り、駅までちゃんと送ってあげてね。ナッコ、またね。」

あっちゃんのバカ!
2人で行くの、楽しみにしてたのに。
別に、ナッコと3人で回っても良かったけど、とてもじゃないけど笑う余裕もない。
ナッコ…、あっちゃんと私が付き合ってるの知ってるくせに、これ見よがしに。
あっちゃんもなんだかんだ断り切れんかったんやろな…。

家に帰って屋台で買ったものを食べる。
さほど美味しくなくても、お祭りという雰囲気で美味しく食べられるはずだったそれは、味気がなく、砂か紙を食べているような感覚だった。


-続く-

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1.序章
15.期末テスト
17.祭りのあと
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