権代美重子著「日本のお弁当文化 知恵と美意識の小宇宙」(法政大学出版局)を読みました。
弁当というと、何を思い浮かべますか?
駅弁でしょうか?
コンビニ弁当でしょうか?
「キャラ弁」でしょうか?
この本では、それらすべてが出てきます。
幕の内弁当・助六弁当などの観劇弁当、日本料理店にある松花堂弁当、古典落語「長屋の花見」にからむ花見弁当なども章立てして取り上げられています。
弁当の発生にまでさかのぼり、里の民、山の民、海の民、あるいは兵士の弁当の歴史をひもときます。
醤油醸造の発展が与えた影響や禅宗における食の思想の影響なども調べあげられています。
また、駅弁業界が災害時に果たしている役割、はては駅弁の包み紙の歴史にまで著者の目は行き届いています。
日本のお弁当文化は、世界的に見て、かなりユニークなもののようです。
海外の人々は、日本の弁当のことをマンガ、アニメで知り、「KAWAII」文化のひとつとして関心を持ちました。
そして「BENTO」が海外の食文化に影響を与えていることを紹介しています。
著者の長年の研究成果がわれわれ一般大衆向けにわかりやすくまとめられた名著です。
カラー写真がふんだんに掲載されています。
弁当の写真ばかりではなく、さまざまな文献や絵画などが盛り沢山です。
もう少し大きな写真にしてもらいたいと思いましたが、そうすると本が分厚くなってしまいますね。
お弁当で思い出す身の回りの思い出を少々・・・
前職で千葉県の社宅住まいだったころ、同じ棟にノルウェー人家族が8か月住んでいました。
小学生や幼稚園児がいました。
娘が遠足から帰ってきたら、先生から連絡があったそうです。
「お弁当がおかずだけだったけど、ご飯を忘れたんじゃないか」と心配されました。
そう言われたお母さんは怒りました。
実は、ジャガイモだけを弁当箱かタッパーに詰めて持たせたのです。
ノルウェーには、お弁当としてライスを持参する食文化はありません。
私が高校生のころ、毎朝、母がお弁当を持たせてくれました。
岐阜市の高校だったので、母は早起きして作ってくれ、感謝しています。
ある日、担任の先生がクラスのみんなの前で、「大内、お母さんから電話があって、弁当のエビフライが悪くなっているかもしれないから食べるなということだ」と言われました。
「えー! 弁当にエビフライ!?」
と騒がれ、恥ずかしい思いをしました。
小指ほどの大きさの小っちゃなエビだったんですけどね。
その母は、現在、ひとり暮らしをしています。
母の夕食は、宅配の弁当です。
毎日、民間業者が届けてくれますが、そんなに高くありません。
バラエティーに富んだ献立で、飽きることはありません。
老人向けにやわらかいものばかりで、歯が悪くても完食できます。
ありがたい日本のお弁当文化の一端です。