プラハへの移動途中、車窓に突然広大な菜の花畑が迫ってきた。
どこまでも続く鮮やかな黄色!
シャルル・ドゴール空港に降り立つ少し前、下界の所々が黄に彩られパッチワークのような美しさだったのは、菜の花のお陰だったようだ。
チェコへの入国審査は、バスの中で実物とパスポート写真を見比べられただけで無事終了。9年も前に撮った写真だから「別人?」と言われたらどうしよう・・・などとやはり緊張してしまう。
何年か前に一人旅をした息子は、電車の中で銃を構えた調査官(?)にパスポートチェックをされたとの事。団体と個人では扱いが違うのだろうか?
昼頃プラハへ到着したが、今まで訪れた国と少し様子が違う・・・。
市街地には近代的な建物、いわゆるビル郡も建ち並び、万国共通のような大きな落書きが目立つ。
バスを降り徒歩で通過した駅の周りはゴミが散乱し汚い。ちょっとがっかり・・・でもそれはほんの限られたエリアだけだった。
プラハ城の正門前は衛兵の交代を見学しようと、すでに人垣ができていてとても側には寄れない。日曜日というせいもあるのだろうか・・・とにかく人が多い。
城内の聖ヴィート大聖堂入り口では、入場制限があり長い行列が出来ている。あたりを見回すと団体も多く、人種も様々で今まで訪れたどこよりも賑やかだ。
「人ごみでは、身の回りの物にくれぐれも気をつけて・・・」と、どこの国を訪れても注意されるが、今回は怖さを実感してしまった。すれ違う人や近くにいる人の視線がとても気になる。疑うのは嫌なこと・・・だが注意をしないとみんなに迷惑をかけてしまう。
時々降る小雨の中しばらく待ち、ようやく入場した聖ヴィート大聖堂はものすごい迫力で迫ってきた。ただ迫力があるとしか表現できない自分が情けないけれど思わず「すごい!」と声に出してしまったほどだ。大きなステンドグラスの鮮やかさと、それらを取りまく壁や装飾の彫刻などが荘厳で“威圧感”さえ感じる。内部はかなり暗いから写真がうまく撮れるか心配だ。
今回の旅では幾つかの教会を訪れ、それぞれがとても素晴らしく感動的だったが、実はもうごちゃごちゃになっている。
せめて最後のこの大聖堂の印象は深く心に刻もうと思った。
小高い丘の上のプラハ城から歩いてカレル橋へ。
ヴルタヴァ川にかかるカレル橋はプラハで最も古い石橋で、プラハ城と同様すごい賑わいだ。翌日の月曜日にも再び訪れたがだいぶ観光客が少ない。
振り返ると、堂々とした姿のプラハ城が赤い屋根の街並みに溶け込み、その美しい姿を際立たせていた。
30体の聖人像が立ち並ぶカレル橋を渡り、東岸の旧市街地区へ。
プラハの一番の見所は、カレル橋を中心にした西岸と東岸に集中というだけあり、どこもかしこも観光客が行きかっている。
人の流れに逆らわず進むと自然に旧市街広場に到着した。
ぐるりと見渡すと、建物の形が様々で色彩も豊かだ。ここにはゴシック様式やバロック様式、ルネッサンス様式などプラハの歴史を物語る建物が混在しているそうだ。
中でも旧市庁舎の天文時計が人気で、毎時ちょうどに動く仕掛けを見ようと人だかりがしていたが、残念なことにタイミングが合わず見ることが出来なかった。
それにしても石畳は歩きにくい。半日ずつ2日間歩いただけなのに、普段あちこち歩いている私でさえかなり足にダメージがあった。もっとも欲張って、めいっぱい動き回ったせいかもしれないが・・・。
歩きにくいのは別として、石畳は無機質なアスファルト道に比べ美しいし、長い歴史を物語る建物と共に街並みに独特な雰囲気を与えていた。
どこへ行っても自分の足で歩くことが、訪れた場所と仲良くなれるコツかもしれない。
時間にしたらほんのわずかでも、日常生活を垣間見、習慣の違いなどに「なるほど」と納得したり・・・。
だから観光場所だけでなく、その土地の人が日常的に行くスーパーマーケットなどを覗いてみるのも面白い。
プラハでの2日目、プラハ城とは反対側に広がる緑の丘まで足を延ばした。途中パン屋さん風の小さな店の前を通りがかったら、次々と人が入っていくので誘われて中へ。つい買ってしまったチェコの代表的なお菓子ゴーフルは、独特な食感で美味しかった。ここは多分人気の店なのだろう。
街角では教会でのコンサートを知らせるビラを何枚も貰い、もう少し時間があったら・・・と後ろ髪が引かれる想いだったがもう最終日。午後には空港に向かわなくてはならない。
ところで、チェコの人にとって、ビールは飲むパンで薬の替わりにビールを飲むそうだ。
お土産はチェコビールを!という上の息子とワイン派の娘、お酒は何でも大好きという下の子のために、すっかりスーツケースが重くなってしまった。

プラハ空港のゆったりとした空間は、静かに旅の終わりを告げているようだ。帰宅してからの写真整理に加え、ガイドブックなどを見て記憶を呼び戻す時間は旅そのものに次ぐ楽しみ。写真は後日HP内でアルバム風にまとめようと思っている。