猫がつなぐ人と自然の間
野性的動作にハッと…動物写真家 岩合光昭さん
9月4日付の日経新聞夕刊に載った岩合光昭さんへのインタビュー記事が、猫愛好家にとっては、とても面白かったので、そのまま転載させていただいた。
うちの猫たちも「岩合光昭の世界ネコ歩き」を楽しみにしている。21世紀になっても世界で戦争やテロが横行しているが、人間も、平和主義者;猫族の生き様を見習うべきだと思う。この記事を読んで、感じられたこと等あれば、コメントをいただければ幸いである。
私事になるが、突然のアクシデントから2週間がたち、最悪期は脱したようだが、まだ腰の状態が思わしくないので、今しばらく自宅療養が必要である。本格的なブログ復帰はもう少し先のことになるだろう。この間、お見舞いメールをいただいた方々にこの場を借りて御礼申し上げる。
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【2013年9月4日 日経新聞夕刊より】
野生動物と猫を撮って40年になる動物写真家の岩合光昭さん。「ペットとしての猫は人に野性を思い出させる」と述べ、人が自然とつながる可能性を感じている。
岩合さんが世界の街角で猫を撮影するNHK・BSの番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」が好評だ。初めての場所で猫のたまり場を嗅ぎつけ、初対面でもすぐに友達になる。
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注;以下は岩合さんへのインタビューを記者がまとめたものである。なお、水色の個所は、私が勝手に色づけしたもの。猫の写真も新聞記事とは関係ない。)
猫を探すときは、まずその町の一番高い所に登って、当たりをつけます。
南北にまっすぐ伸びた道などは風が強いから猫は好まない。車など早く動くものも苦手で、どん詰まりのような場所に大概います。
猫が快適な場所は人間にも快適なはずだから、猫を観察すればいい町づくりができると思いますよ。
都会の猫と田舎の猫では、人を見る目が違います。
都会は人に余裕がないから、蹴飛ばされないように注意深く生きている。田舎は人がおおらかなので、一度安全と確認できたらわりと親しくなれます。人の暮らしを映して猫は生きている。
猫は基本的に平和主義者。人に余裕があって平和なら、どこでも猫のサンクチュアリ(聖域)になる。だから僕は、猫が幸せになれば人も幸せになり、地球も幸せになると言っています。
猫と親しくなる秘訣? 全身から醸し出す雰囲気を嗅ぎ取ることですかね。それでも嫌われることはあります。
番組は1回1時間弱の放送に10日から2週間かけるから、いいとこ取りなんです。大半のロケが無駄になる。スタッフとは「猫だからしょうがないね」が合言葉です。
竹内 栖鳳『班猫』(重要文化財)。身をよじって振り返った一匹の猫。見返り美人ならぬ見返り美猫である。毛はふさふさで、体温まで感じそうな圧倒的な存在感。これほどリアルに存在感のあるネコを描いた傑作は、かつてなかったと絶賛された。東京・山種美術館蔵。猫好きには必見の名画である。
■動物の視線で動物の気持ちになって撮影する。
人がいることを極力意識させないことが大事。撮影中は動物の気持ちになりきる。
獲物に襲いかかるライオンの気持ちになって撮影。尻にかみついた瞬間、今度はシマウマの気持ちになって「いてーっ」となります。被写体だと思っているうちは、動物が立体として見えてこないんです。
「世界ネコ歩き」では、写真も映像も猫と同じ視線で撮るようにしている。そうしたら視聴者から面白い反応がありました。猫がテレビの前に座って見ていると。番組が猫のためにもなっていると知ってうれしくなりました。
■猫と人間の関係性は大きく変わったと感じる。
昔は農作物の大敵であるネズミを捕る家畜としての役割が大きかった。中世ヨーロッパではネズミが媒介してペストが流行したけど、おそらく猫がいなかったらもっと広がっていたと思う。今は世界中でペットとして室内で飼われるようになったから、外でネズミがのさばっていますね。
ペットとしての重要性はわかる。体の柔らかさやしぐさに癒やされる人もいるけど、僕は野性味を残していることが重要だと思う。
ジャンプしたり獲物を狙ったり、野性的な動作を見て、人ははっとする。現代の日本人はよくも悪くも洗練されて野性を失っているから、彼らを見て自分の中の野性が刺激され、自然の一員だと感じられるんです。
生きるってとてもシンプルなことだってことも教えてくれます。どんな暮らしをしていようと、生まれて、大きくなって、恋をして、子供を育てて、最後に死ぬ。人も同じ。たいしたことないって気楽になれます。
【岩合光昭(いわごう・みつあき】
1950年東京生まれ。「海からの手紙」で木村伊兵衛賞受賞。「おきて」「ニッポンの猫」など著書多数。「ネコライオン」展が10月20日まで東京都写真美術館で開かれている。

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