言葉は残る
スティーブ・ジョブズ:12の至言
米アップルを創業し、同社を
時価総額世界一の企業に育てた
スティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)が5日、死去した。56歳だった。
パソコン、デジタル音楽販売、スマートフォン(多機能携帯電話)、コンピューター・グラフィックス(CG)映画など、
IT関連産業で数多くの新製品や新サービスを生み出した。
特に、2001年に発売した
携帯デジタルプレーヤー「iPod」と、03年に始めた
ネット経由の音楽配信事業「iTunesミュージック・ストア」は、CDが主流だった音楽流通の形態を激変させた。
07年に発売した
スマートフォン「iPhone」、10年に発売したタブレット端末
「iPad」も大ヒットし、ライバル社がこぞって追随した。
次に掲げる
「12の至言」(あえてそう呼びたい)は、彼が、ビジネスの中で語った語録集の中から気に入ったもの選び出したものだが、
「さすが」と唸らせるものがある。
皆さんも、ご自分に当てはめてお読みいただければと思う。(なお、⇒以下は私の感想に過ぎないので、読み飛ばしていただいてかまわない。)
【スティーブ・ジョブズ:12の至言】
@時間は限られている。誰か他の人の人生を生きることで時間を無駄遣いしないで欲しい。定説――多くの人々の思考の結果に基づいて生きること――に捉われないように。
他人の意見というノイズに「自分の内なる声」がかき消されないように。そして最も重要なことだが、自分自身の興味と直感に従う勇気を持って欲しい。
あなたの直感と興味は「あなたが本当になりたいもの」が既に分かっている。それ以外のことは、人生でさほど重要なことではない。
(スタンフォード大の卒業式の講演で、2005年6月)
⇒
スティーブ・ジョブズ氏が、
スタンフォード大の卒業式の講演で、学生達に語りかけた言葉は、
当該学生のみならず、多くの人々に感動を与えた。
他の人ではなく、自分の人生を生きる。当たり前のことかも知れないが、自分を含めて多くの人々は、
他の人が敷いたレールの上に載せられ、その呪縛から逃れられずに、齢を重ねているように思う。
「自分が本当になりたいものは何なのか?」・・全てはこれが出発点なのである。
この歴史的講演をぜひお聞きいただきたい。
Aイノベーションは研究開発費の額とは関係がない。アップル社がマックを開発した時、米IBM社は少なくとも私たちの100倍の金額を研究開発に投じていた。
大事なのは金ではない。抱えている人材、いかに導いていくか、どれだけ目標を理解しているかが重要だ。
⇒イノベーションは、金よりも、
人材の力(能力とやる気)、組織を導く
リーダーシップの力、
目標の理解と共有が大切なことを、ジョブズ氏は、改めて我々に教えてくれた。
B方向を間違えたり、やりすぎたりしないようにするには、まず「本当は重要でも何でもない1000のことにノーと言う」必要がある。
⇒ひと頃、「ノーといえる日本人」という本が話題になったが、上におもねるイエスマンであるより、
毅然として「ノー」と言う人間のほうが、組織人として値打ちがあるだろう。
本当は大して重要でないことでも、慣行や問題意識・感受性のなさ等から行われているということが、世の中にごまんとある。
それらを削り取っていったら、
最後に残るのはやはり「自分自身」なのだろう。
ビル・ゲイツ氏とジョーズ氏
Cあれこれ口を出さないのは我々の見識だ。他社はあれこれ手を加えて役立たずにしてしまった。
⇒
技術開発の話だろうが、私は、この言葉を
人材育成に当てはめてみた。
若手社員を、あまりに先輩・上司がいじりすぎると、
躾・マナーだけはいいが、小さい人器の人を作ることになりかねない。
その
人本来の自我というか自分のない人間ばかり育てても、
組織は決して発展しないことは、過去の組織の悪例が語っている。
まだ若かりし頃のジョブズ氏
D自分の居場所を自分でつくるんだ。
⇒
「仕事とは、与えられるものではなく、自分で取るものである」とビジネス書は言う。
「会社が、自分に合ったポストや仕事をくれないから、自分は足踏みしているんだ」・・こう思っている人には、いつまで経っても、いい居場所はめぐってこないだろう。
E三ヶ月なんて頭は持っていない。一晩で成果を上げてほしい。
⇒若い時、
会社の中でも厳しい指導で悪名(?)の轟いている上司に仕えたことがある。
この上司は、夕方、
「明日の朝には見せてほしい」と仕事を命じて、自分はさっさと帰ってしまうのである。結果、
徹夜でレポートを仕上げて翌朝報告する・・こういうことがしばしばあった。
ただ、
時間を区切られると、それを達成しなければならないというモチベーションが高まり、何とかやり遂げられる自分を発見した。
今なら、会社を辞めてしまう若者が多いかも知れないが、実は、
「この厳しい指導のおかげで、頼りなかった自分が、多少は役立つ人間になれた」と、今では感謝している。
ただし、
自分はその人の真似は出来なかったし、したくもなかった。
☆下の映像は、Macintosh発売前年の1983年に行われたジョブズのスピーチ。 歴史的なスピーチの後 、広告史に残る「1984」が流れます。ただし、「全て英語」ですが。
F偉大な大工は、見えなくてもキャビネットの後ろにちゃちな木材を使ったりしない。
⇒10月12日(水)の
NHK「クローズアップ現代」でやっていた。
ジョブズ氏は、iPad(アイパッド)の裏蓋(普通は人の目が届かない)をも完璧に磨きあげることを要求したそうである。
「ユーザに買っていただく商品には、どの部分であれ、どの場所であれ、決して手抜きがあってはならない」と。ジョブズ氏から評価されていた、
「研磨のプロ集団」である中小企業社長(日本)の話である。
Gテレビを見ると僕たちをあほうにしようという陰謀の匂いを感じた。
⇒まったく同感で、この頃は見ない自由を行使している。結果、テレビを見る時間が大いに減り、その分、読書にあてる時間が増えた。
H危機に直面すると、ものごとがよく見えてくる。
⇒よく言われることでもある。組織が危機に陥った時、面倒な
手続きや議論をショートカットし、重点指向で、危機打開に必要なことに特化することがある。
そうすると、
本質的なことが見えてくるという経験は自分もした。
「一体この仕事は何のためにやっているのか?」・・ここまで遡った時、
より効果的なアプローチが見えてくるのである。
I歳をとればとるほど、動機こそが大切だという確信が深まる。
⇒けだし名言である。若い時は情熱だけで突っ走ることも出来るが、
歳をとると、体力の衰えもあり、情熱だけでは体内エンジンは始動しないようになってくる。
「これは自分が本当にやりたいことか?」、「やってみて楽しいと思えるか?」、「多少でも世の中に役立つことか?」と思い、自らをモチベーションできるかどうかで、結果が大いに違ってくることを、諦めるということ(年寄りの冷や水はむなしい)を含めて、そろそろ悟り始めている。
J終着点は重要じゃない。旅の途中でどれだけ楽しいことを、やり遂げているかが大事なんだ。
⇒ただ単に目標をやり遂げるのでなく、
「楽しいことをやり遂げる」ことが重要なのである。最近は、仕事以外の分野の方に楽しいことが増えているが・・。
亡くなる直前まで仕事に情熱を燃やしていた。
K「誰だって死にたくないものだ。天国に行きたいと思っている人でさえ、そのために死ぬのはいやだと思っている。
しかしそれでも、死は誰にも共通した行き先だ。死を逃れたものは誰もいない。
「死」は「生」が生んだ唯一無比の最良の発明と言える。古いものを一掃して、新しいものに道を譲る。
今は新しいほうがあなただろうが、そう遠くない将来にあなたは徐々に古いほうになり、やがては消え去る。こんな言い方で申し訳ないが、全くの事実だ」
⇒付け加える言葉は無い。こうして、人間は、幾百世代にもわたって、次世代にバトンを譲り、
使命を終えて、宇宙の塵と化すのである。
でも、ほんのわずかでも思いは受け継がれ、
二重螺旋の染色体は、子々孫々引き継がれていくのだろう。
発売するマッキントッシュの前で。MACのファンは世界中に多い。

2