2009/7/31

初めて東京オペラシティで…  文化・芸術(展覧会&講演会)

クリックすると元のサイズで表示します 先日の29日(水)、京王新線新宿駅から一つ目の駅、初台駅に直結した東京オペラシティ・コンサートホールで、「千住真理子とイタリアの名手たち」と言う演奏会を聴いて来ました。

 プログラムの演目自体は、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」合奏協奏曲集「調和の霊感」など、20年以上前から持っているイ・ムジチ版で耳に馴染んだ曲等だったのですが、初台駅に降り立つのも、(当然のことながら)東京オペラシティ・コンサートホールで演奏会を聴くのも、さらに千住真理子さんの演奏を聴くのも、今回が初めてでした。

 初見参の東京オペラシティ・コンサートホールは、個人的に馴染み深い横浜みなとみらいホールよりは奥行き、幅共ややこぶりな印象ですが、とにかく吹き抜け空間が高い。よくこれで音が拡散しないなあと素人目には思います。私は、舞台袖に近い2階席の壁際で、演奏を聴きました。休憩時間に言葉を交わした隣席の女性(たまたま隣り合わせた見知らぬ方)は、「素晴らしい!あ〜、正面の席で聴くべきでした」と残念がられていました。やはり端の席だと音響を損なうものなんでしょうか?

 数カ月前に、横浜そごう美術館内で東京芸大生のヴァイオリン・ミニ・リサイタルを聴いた時にも、ヴァイオリンの生の音色には十分聴き惚れたのですが、今回はプロの演奏家として長年活躍して来られた千住真理子さんの演奏で、イタリアの銘器ストラディヴァリウス*の音色を初めて聴いたのです。

 その美しさたるや、特に高音部など、鳥肌が立つほどの響きでした。例えばイ・ムジチの演奏で聴き慣れた「四季、春」の、春の嵐を思わせる熱り立つような高音部は、私の想像を超える音域で奏でられる等、名器の誉れ高いストラディヴァリウスの器量と、演奏者千住真理子さんの技巧が織りなす音質で、身震いするほどの感動を覚えました。不思議なのですが、硬質で端正な高音部の音と、柔らかで丸みのある低音部の音が、ひとつの楽器から生み出されているのです。千住さんという名手を得て初めて引き出された、名器のポテンシャルなのでしょう。

 しかも演奏者の千住真理子さんが、かねてから尊敬していたと言うイタリアの名演奏家(ピエロ・トーゾ氏<ヴァイオリン>、ピエルパオロ・トーゾ氏<チェロ>、エルネスト・メルリーニ氏<チェンバロ>)を迎えて、ストラディヴァリウスの故郷イタリアの曲を演奏することに気持ちがかなり高揚しているのか、冒頭からロケット・スタートとも言えるテンションの高さです。かと言って、ひとり浮き上がるわけではなく、千住さんと客演者3人のアンサンブルは見事な調和をなし、曲の演奏が終わる度に4者で互いを讃え合う姿に、この演奏会の充実ぶりが窺えました。

 私の席からは、千住真理子さんの演奏する姿を、右斜め後ろから比較的間近に見ることができたのですが、ノースリーブの深紅のドレスから剥きだしの、二の腕から肩胛骨にかけての筋肉が美しく躍動していたのが印象的でした。ちょうどこの日は午前中に美術館で、小学生達と引率のお母さん達を対象にギャラリートークを実施し、ロダン彫刻の内面の情動がほとばしるような筋肉の表現について語ったばかりでした。1点に全神経を集中し躍動する筋肉は、やはり目を奪われるほどに美しいものです。

 演奏中にその表情を見ることは叶いませんでしたが、演奏前後に客席全体を見回す時の満面の笑顔が千住真理子さんの精神面の充実を物語っており、その演奏には幸福感が充ちていました。演奏会が終わりホールを去りゆく人々の表情を見ると、演奏者の幸福感が聴衆にまで伝播したかのように、満足感に溢れた穏やかな笑みを湛えていました。噂に違わず素晴らしい演奏会でした。

*愛器は1716年製ストラディヴァリウス。「デュランティ」の愛称で知られる。ストラディヴァリが製作してすぐにローマ教皇クレメンス14世に献上され、その後フランスのデュランティ家に約200年間所蔵されていた。次いでこの楽器はスイスの富豪の手に渡ったが、その約80年後の2002年にその富豪が演奏家のみを対象に売りに出した為、千住家が数億円で購入した。

約300年間誰にも弾かれずに眠っていた幻の名器とされている。(ウィキペディアより)


 「約300年間も誰にも弾かれずに眠っていた幻の名器」とは知りませんでした。楽器は弾かれてこそ、その存在の価値が認められる。紆余曲折があったとは言え、そのポテンシャルを最大限に引き出してくれるであろうパートナーに巡り会えたことは名器にとっても幸せなことでしょうし、常に最高の演奏を目指したい演奏家にとっても最高のパートナーを得て演奏意欲はますます高まり、その果実であるパフォーマンスを聴衆は享受できる。有り難いことです。

【今回のプログラム】
ヴィヴァルディ:トリオ・ソナタ ニ長調 Op.1-6
ヴィオッティ:2つのヴァイオリンのためのセレナード第3番 ト長調
ヴィヴァルディ:協奏曲集「調和の霊感」より 第8番 イ短調 Op.3-8
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」より”春” ホ長調 Op.8-1
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「調和の霊感」より 第6番 イ短調 Op.3-6
ヴィターリ:シャコンヌ ト短調
ヴィヴァルディ:ソナタ イ長調 Op.2-2
ヴィヴァルディ:協奏曲集「調和の霊感」より 第11番 ニ短調 Op.3-11




2009/8/3  18:28

投稿者:管理人はなこ

ヌマンタさん、コメントをありがとうございます。

ヌマンタさんならではの視点(職業柄)でオペラシティについて評価されていますが、興味深いですね。私はちょうどバブル最盛期の頃は海外にいて、バブル時の日本を体験的には知りません。

物事には常に正負の両面がありますね。しかし、門外漢の人間には、マスコミで喧伝される一方的な情報、価値観の刷り込みが行われます。ご多分に漏れず、私も「地上げ」=悪のイメージを持っていました。「地上げ」にも成功例と悪しき例があるということなんでしょうか?

都市の再開発に民間の活力を導入すると言うのは、最近ではそれほど珍しいことではなくなりましたね。例えば川崎駅前は、東芝不動産と三井不動産のJVで(再開発が行われた西口だけでなく相乗効果で東口も)人の流れ、街の雰囲気が劇的に変化しました。昔の川崎を知る人が今の川崎駅前を見たら、さぞかし驚くことでしょう。

役人はいつまでも自分で丸抱えせずに、民間に適宜権限を委譲する必要があるのかもしれませんね。

2009/8/3  17:10

投稿者:ヌマンタ

このオペラシティは、バブル経済真っ盛りの頃、地上げの最大の成功例といわれた名所です。

かつては古臭い木造アパートが軒を並べる雑多な街でした。それが今では都内有数の芸術の拠点となりました。

地上げ=悪いことだと思い込んでいる人は多いと思いますが、都市の再開発は役人にやらせるより、民間の不動産業者をつかったほうがうまくいく典型的な好例でした。不動産税務に関る身としても、たいへん興味深い事例でもあります。あの世紀の愚策、総量規制がなければ、もっと整備が進んだと思うので、実に残念です。

2009/7/31  16:28

投稿者:管理人はなこ

ひまわりさん、コメントをありがとうございます。

私の貧弱な音楽に関するボキャブラリでは表現し難いほどの素晴らしさでしたよ。とにかく音楽は専ら聴くだけの門外漢なので。チラシにはこう書かれています。

「ヴァイオリン、そして弦楽器の魅力を知り尽くした彼ら(作曲家)の作品はいずれもたいへん色彩に富み、明朗な旋律の中に生命感の溢れるリズムや創意工夫に満ちており、聞く人をまったく退屈させない魅力に満ちています」

また、千住さんはチラシに以下のようなコメントを寄せています。

「(前略)イタリアの演奏家は、みな音の響きに特徴がある。楽器の木目が、細胞が一つづつ歌っているように、その音には独特の響きがある。今回、まさにイタリアの名手たちと、イタリアの名曲を奏でることができる喜びでいっぱいだ。イタリアン・バロックは、整然としていてどこか悲しげな響きを持つ。その魅力は他にはないものだ。(後略)」

私はバロック美術が好きなのですが、音楽に関しても、時代的には奇しくもバロックなんですよね。千住さんがイタリアン・バロックを「整然としていてどこか悲しい響きを持つ」と解釈されているのが興味深いです。

7月25日の兵庫県を皮切りに、約1週間全国を巡るツアーなのですが、明日8月1日は横浜みなとみらいでの公演のようです。

http://happy.ap.teacup.com/hanakonoantena/874.html

2009/7/31  16:05

投稿者:管理人はなこ

ちいちゃん、コメントをありがとうございます。

>わぁっ。
殆どヴィヴァルディづくし!

ホント!そうですよね。「四季」なんて誰でも知っている有名曲なので、演奏者による違いが一”聴”瞭然。今回は楽器の”格”の違いが素人の耳にも判りましたから。最初の音で「な、なんだ、この音は〜?!」ってビックリしましたもん。

千住真理子さんって、最年少でパガニーニ国際コンクールに入賞する等、幼い頃から天才少女と言われた人ですが、大学時代はそれに嫌気して一時期一切ヴァイオリンから離れていたそうですね。大学では「哲学」を専攻している。何の躓きもなく順当に来た人生より、紆余曲折を経て音楽の道を選び取ったことは、彼女の演奏家としての魅力を高めたような気がします。

それにしても名工によって作られた楽器が300年も使われなかったのはもったいないですね。それそこ宝の持ち腐れ。それとも千住さんとの出会いを300年間待ち続けたと言うのでしょうか?こうしたエピソード自体、ドラマチックですね。

千住さんも冒頭で言われていましたが、ストラディヴァリウスも、故郷イタリアの音楽を奏でることができて、喜びを爆発させているようでした。

ギターは寿命が短いのですか。そうなんだ…私は息子に一生楽しめる趣味を持って欲しいと願い、小学校入学後に絵画教室に通わせ始めました。それは10年続いたのですが、高校生になって息子が自ら選んだのはエレキ・ギターでした。音楽も美術と並んで心を豊かにするものなので、彼が仲間と音楽を楽しんでいる姿を見るのは、親としても嬉しいものです。

http://happy.ap.teacup.com/hanakonoantena/874.html

2009/7/31  14:43

投稿者:ひまわり

ヴィヴァルディですか!素晴らしい。あの穏やかな至福の極みとでも言うべき天の音色を存分に楽しまれたのですね。人が抱く幸福感と言うものは不思議と伝染して他の人々の心に波及して行くと、アメリカの心理学界で最近発表されたとの記事を眼にしましたが、やはり、そういうものなのでしょうね。音楽の偉大さは、あらゆる差異を超えて人々の心に感動を共有させることができること。
素敵なひとときを過ごされたようですね。はなこさんの見事な筆致で、その深い想いがわたくしにも伝わってきます。有難うございました。

2009/7/31  13:27

投稿者:ちいちゃん

わぁっ。
殆どヴィヴァルディづくし!

私は千住さんという方を存じませんが
はなこさんの興奮が伝わってきます。

ヴァイオリン等のストリング楽器は
保存さえ良ければ何百年でも使えるんですよね。そして年数をおうごとに
音色が変わっていきます。

ギターはダメです。100年ももたない。悲しいけど。。


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