2008/11/18

(28)ブーリン家の姉妹(The Other Boleyn Girl、英米合作)  映画(2007-08年公開)

クリックすると元のサイズで表示します アンの挑むような眼差しが印象的

アン・ブーリンとヘンリー8世、その血筋が後にイングランドを発展させた

時代は16世紀、イングランド王ヘンリー8世を巡る、アン・ブーリンとその妹メアリ(史実は姉妹の生年が不詳なので、実際どちらが年長なのかも不詳らしい)の愛憎の物語。

王族間では政略結婚が当たり前の時代、新興貴族のトーマス・ブーリン卿は、ヘンリー8世が王妃キャサリンとの間に世継ぎの男児が生まれないことに目を付ける。そして、長女アンを王の愛人に仕立て上げることで、自らを取り立てて貰おうと義弟のノーフォーク公爵と画策する。

多少の後ろめたさを感じながらも、娘を自らの出世の道具として利用する父親。しかしそうした父親の思惑とは別に、アンは自ら王妃の座を貪欲に求め、メアリは思いがけない王の寵愛を受け入れる。王を巡る姉妹の愛憎と言っても、見た限りでは権勢欲にかられたアンが一方的に、王の寵愛を先に受けたメアリに嫉妬し、憎悪している。そう、ヒステリックなまでに。それに対してメアリーは終始一貫して、最初に感じたイメージそのままに、優しく、控え目で、かつ冷静だ。

史実ではその容姿の違いにも言及していて、アンが「黒髪、色黒、小柄、やせ形」なのに対し、メアリーは「金髪、色白、豊満」だったとされる。女性的魅力に長けていたのは、どうやらメアリーの方だったようだ。映画の制作者は二人の性格的な違いを際だたせる為に衣装のデザインや色合いにも心を砕いたらしい。個人的には、姉妹を演じた女優ナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンの”眉の形”に注目した。”アンの勝ち気さ”を示すかのようなナタリーの男勝りな一文字眉と、”メアリの母性的な優しさ”を表すかのようなスカーレットの優美な弧を描いた眉。人相学的にも、それぞれの性格に適った形と言えるようだ。
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生涯6人の妻を娶ったとされるヘンリー8世。映画でヘンリー8世役を演じたエリック・バナは中肉だったが、実際のヘンリー8世はハンス・ホルバインが描いた肖像画で見る限り、堂々とし体躯の持ち主だったようだ。以前、ヘンリー8世ゆかりの宮殿ハンプトン・コートに行った時に見かけたヘンリー8世の肖像画も、このホルバイン作だったのかな?

世継ぎに男子を切望したことは無意味だったのか?

映画では、王をじらすだけじらす作戦でその執心をものにし、キャサリン王妃や妹のメアリを王宮から追い出してまで「王妃の座」を獲得したアンだったが、待望の第一子は女の子。聡明さを武器に、強気で野望に向かって邁進して来たアンの運命が暗転する瞬間だ。史実が伝える通り、その後断頭台の露と消えたアン。一方、映画では移り気で優柔不断な男として描かれたヘンリー8世は、史実では、ラテン語、スペイン語、フランス語に通じ、舞踏、馬上槍試合、音楽、著述とその才覚は多岐に渡り、イングランド王室史上最高のインテリとされている。その二人の間に生まれた赤毛の女児は後にエリザベス1世として、イングランドを未曾有の繁栄へと導くのである。

映画では母亡き後、叔母メアリに引き取られたエリザベスがイングランド女王に就く経緯については詳しく言及していない。これが調べてみると、映画1本作れそうなくらい、これまた波乱に富んだ展開だ。イングランドに限らず、政略結婚を繰り返したヨーロッパの王族は姻戚関係が複雑で、そのことが歴史を複雑なものにしている。イングランド王がローマ・カトリックから破門され、英国国教会を設立した経緯も、映画で語られている以上に複雑な背景を有している。まったく…(-_-)。

この二人の競演は クリックすると元のサイズで表示します 本作の最大の魅力

上掲の写真でも、その美しさの一端が垣間見えるように、映像表現も、特に室内での光の使い方が、まるでバロック絵画を思わせる陰影表現で素晴らしい。

運命が暗転してからの気の毒なまでのアンの脆さと、メアリが見せた芯の強さの対比は見事だ。この若さで、単に容姿の美しさだけでなく、見事な演技力で観客を魅了するナタリーとスカーレットの競演を見られただけでも、この映画を見る価値はあったと思う。

映画『ブーリン家の姉妹』公式サイト 



2008/11/20  10:11

投稿者:管理人はなこ

【追記】
史実では、エリザベスは叔母のメアリではなく、王の最後の妻、キャサリン・パーに、異母弟エドワードと共に育てられたようですね。この継母キャサリンは女王・王妃として初めて本を著したり、王不在時には王の名代を務めたりと、教養と知性に溢れた女性で、エリザベスも慕っていた、とありますね。このキャサリンのキャラクターが、映画のメアリ像に投影されているような印象を覚えます。

映画の内容を鵜呑みにするわけにはいけませんが、虚実交えた物語の中で、史実がさまざまな形で登場人物に投影されているのだなあと感じます。歴史映画は映画としてその醍醐味を楽しんで、後で自分なりに勉強すれば良いのかもしれません。1粒で2度おいしい?!

2008/11/19  23:51

投稿者:管理人はなこ

あるきりおんさん、こんばんは。コメントをありがとうございます。

眉に注目したのは、私が女性だからかな。眉の形って結構顔の印象を大きく左右するパーツなんですよ。女性は流行に合わせて形を変えたりもしますね。昔はナチュラルな太眉が主流だったのに、今は結構作り込んでいる。それだけ女性が自分を他人にどう見せたいか、戦略的にメイクをしていると言えるでしょうか?

ある批評家が今回の二人の配役を意表をついた配役と言っていましたが、私は順当だと思いました。スカーレットはウディ・アレンのミューズとか、セクシーとか言われていますが、22歳の若さで若手俳優と結婚するあたり、案外一途で家庭的な女性なのかもしれません。対して、ナタリーはハーバード大出の才女で、最近は監督業にも進出し、キャリア志向を伺わせます。今回の映画のメアリとアンのキャラにそのまま重なるのではないでしょうか?

それにしても攻める一方だったアンが、守勢に回ったら途端に弱々しくなりましたね。ありがちなパターンではあります。結局、最も王の信頼を勝ち得たメアリの方が、強い人だったのかなと思いました。アンの勇猛な血を引き継ぎ、メアリの懐深い愛情のもとで育ったエリザベスが、後々イングランドの女王になったのは、ある意味、当然の結果だったのかなとも思います。

現在は、どんな宰相、君主を以てしても、舵取りが難しい時代なのではないでしょうか?とは言え、還暦を迎えたチャールズがいまだ「皇太子」であることが、何やら象徴的ではあります。ここはエリザベス3世の出現を待ちますか?(笑)

2008/11/19  23:19

投稿者:管理人はなこ

SirCryさん、こんばんは。コメントをありがとうございます。

確かに歴史はある程度知っておいた方がより楽しめるでしょうね。と言っても、私もそれほど詳しいわけではありません。何せヨソの国のことですから。世界史の枠組の中でのイングランドの歴史は知っていても、内政の細かいところまでは知りません。

この作品は、「アン・ブーリンがあのエリザベス1世の母」と言うことを最低ラインとして知っておけば、後はどの国の支配階級でもあるであろう権力争い、権謀術数、お世継ぎを巡る問題(女の戦い?)のドラマとして楽しめると思います。特に女性を主役に据えているので、メロドラマとしても見ることができるでしょう。レビューで「大奥」に喩えている人もいましたね(笑)。

映画を見終わった後に、思わず彼の国の歴史について詳しく調べたくはなりますが…(笑)。

2008/11/19  22:40

投稿者:あるきりおん

わたしは普通に衣装の色を見ちゃいましたが、眉ですか。
全然気づきませんでした^^;

この頃のイギリスは繁栄しているのに迷走してますね。
この映画を見たことで、このあたりの歴史をもっと詳しく知りたくなりました。
すごい映画です^^

http://alkirion.exblog.jp/

2008/11/19  22:00

投稿者:Sir Cry

 かなり重厚な作品のようですね。以前、<エリザベス>を見た時にも感じましたが、この映画も楽しむためには、歴史を勉強しておかないと解釈するだけで精一杯で終ってしまいそうです。見に行くときは一夜漬けの中世英国史の勉強をして行きます。

http://ameblo.jp/sir-cry


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