2005/12/12

斜陽期に入った日本  読書記録(本の感想)

『バールのようなもの』
この短編小説を文芸誌で読んで以来、
私は作家、清水義範氏の慧眼に一目を置いている。
氏は目の付け所がどこか人と違う。
世の常識に独自の視点で異を唱える。
しばしば思いがけない発言で私を驚かせてくれる。



先月読んだ『行儀よくしろ。』も、
書店の新書コーナーで、そのタイトルの
新書らしからぬ斬新さ、
タイトルなのに句点付き、という点が
異彩を放って私の目に留まった。

本書で、氏は学力低下問題に絡めて、
日本の現状を以下のように分析してる。
「どうも日本は、復興期、成長期、向上期をすぎて、
繁栄期、停滞期、退廃期を迎えているのではないか、
という気が私にはする。それは実はとても大きな問題で、
簡単には語れない。文明の到達度のことでもあるし、
精神文化のことでもあり、経済情勢もからむ、という
大テーマなのだ。(中略)
日本はこの十年ほど前から、成長期が終わってしまって
停滞期に入っているのだと思う。そしてそんな時期には、
向学心というものが弱くなるもので、その結果、学力が
低下しつつあるのだろう。」

最近、テレビでは気の滅入るニュースばかりだ。
建築構造計算書偽造問題、子供を標的にした殺人事件、
経済の屋台骨のひとつである証券取引所の相次ぐトラブル、
エトセトラ・・わずかに10代20代のアスリートの世界的
活躍が、かろうじて一筋の光明を与えているくらいだ。
(本当はもっとGOOD NEWS(福音)があるはずだが、
ニュース番組はとかくセンセーショナリズムに走りがち。
どうも番組の構成として、最初に事件報道で視聴者を驚かせ、
さらに経済ニュースで落胆させ、スポーツ報道で
後味の悪さを誤魔化しているような印象がある)

氏の言われるように、日本という国は今、停滞期に
入っているのかもしれない。ひとつの文明・国家の
勃興と衰退、その歩みを辿っているだけなのかもしれない。
まさに平家物語の”盛者必衰の理を現す”だ。
戦後以降、この60年の国の在り方としては斜陽期に入り、
これまでこの国を形作っていたもの、支えていた仕組みが
ことごとく制度疲労を起こしているように見える。

バブル期以降、バブル崩壊後税収は落ち込んでも、
膨張する一方の国家予算。その予算削減を目的に、
小さな政府を目指して、国の管轄で行っていたことを
どんどん民間に移管している。いわゆる”民営化”ってヤツ。
かつて”ミスター¥”と異名をとった現・慶応大学教授
斉藤英資氏は、構造計算書偽造問題で、民間検査機関の
検査漏れの問題点として、「検査機関を民間に移管するに
当たって重要なのは、その管理監督を国がきちんとすること」
と指摘していた。どこかで誰かが手綱を締めなければ、
利害が絡むだけに自律は難しい、ということだろう。

最近、JR東日本も信号機故障やパンタグラフの送電線の
垂れ下がり等、設備管理面でのトラブルが絶えないが、
これも、英国の例を見ればだいたいその原因の想像はつく。
英国では1994年の鉄道民営化以降、四件もの重大な鉄道
事故が起きた。その原因として、経費削減のため線路等の
維持管理を下請け会社に任せたことで責任体制が
確立していないことが一因だと言われている。
鉄道の安全運行が、なおざりにされているのだ。
JRにしても、民営化以降、利益優先、効率優先で、
安全管理の部分が手薄になったとは言えないか?
一見最も乗客から遠く、見えない部分だが、
最も命の安全に直結しいている部分。

さらに経済のグローバル化によって、工業製品は、
中国を始めとする日本より格段に人件費の安い国との
コスト競争を強いられ、日本の労働者の給料は頭打ち
なのに人員は削減され、厳しい労働環境の中で、
その多くが働かされている。
高校・大学を出ても半分近くがまともな職も得られず、
フリーターやアルバイトで日銭を稼ぎ、
低所得では親元から独立することもできない。

低所得・不安定な雇用で、どうして将来の
生活設計ができようか?
結婚したくてもできない、
結婚を自分の人生設計にあえて組み込まない、
という選択をする若者が増えて当然だ。
国の無策は言い過ぎとして、後手後手に回る対策なら
少子化も当然の結果だろう。

働く側のプロ意識の低下、モラル・ハザードも、
ガタガタときしみ始めたこの国で、
起こるべくして起きた現象だろう。
地道に真面目に働いた者が幸福感を持って
将来に不安なく生きられる社会、国の在り方を、
どうして国を動かす側にいる人、舵取りをする人は
明確に国民に対して示せないのだろう?
頭が悪いのかな?それとも自分や一族郎党さえ豊かで
あれば良いと考えているのか?

いっそのこと、一度この国は潰れた方が
再生できるんだろうか?今の体制をゼロクリアして。
只中にいる我々国民は大変だけど。






2005/12/22  22:04

投稿者:にゃまさん

つい、うっかり、ネコさんの喫茶にコメント返してしまいました。みんな、引いちゃうかも知れませんが、もしかしたら、「福音」に食いついてくる人がいるかも?と思って、そのままにしました。

はなこさんの文章は長い割りに読みやすいです。新書をよく読んでいるのも、納得できます。きっちり、収まっていてコメントの入る余地がないので、コメントつけていませんが、楽しみにしています。

あの、(どうでもいい事なのですが。)かなり前に、旧MBの「最近見た映画」のどれかで、他の方のMBを紹介されていた事があったのですが、覚えてらっしゃいますか?女性の方のMBで、日常生活の一場面をかなり辛らつに語っていたものです。あの後、あのMBどうなっちゃたのかしら?気に入ってたのですが。

新しい時代を開く人は、もうすでにこの世に誕生しているかもしれませんよ。はなこさんの息子さんかも知れません。でなければ、息子さんがこれから出会う人の中に、、、


2005/12/19  19:08

投稿者:はなこさん

にゃまさんから、貴重なコメントをいただいていたのに、返信が遅れて申し訳ありません。
私も本は並行して3〜4冊を読んでいます。世の中の動きを見るための本、肩の凝らないエッセイや読むだけで生き方上手になった気分になれる生き方ハウツー本(斉藤茂太さんとか)、ボランティアの解説の仕事には欠かせない美術書など。そして小説。私はあまり空想の世界に遊べないので(特に最近)、小説がなかなか読み進めない。にゃまさんが三島由紀夫を読みあぐねているのは別に不思議ではないと思います。小説は細切れに読むより、興が乗れば一気に読みたいですよね。でも主婦は学生と違ってそうはいかない。細切れ時間を使ってしか読書できないから。特に三島の文章は華麗ですからね。読むのを中断するのは忍びない。時代に耐えて残った小説は読み返すごとに発見があり、素晴らしいです。時間足りないですね。英雄の出現待望久しいですが、今の日本に果たして存在するのか?

2005/12/12  23:17

投稿者:にゃまさん

はなこさんは、映画だけではなく、本も良く読まれるのですね。私は、三島由紀夫の『春の雪』を読みあぐねてます。読みにくいというのではなく、集中力が保てなくて、石田衣良の「フォーティーン」なんかに寄り道してます。
今度、久しぶりに新書にも手を出した見なくては、と思いました。集中力がもつか心配です。

清水氏のおっしゃってることなんとなく分かります。古代より多くの文明がたどった道です。今は、退廃期なのかな?だとしたら再生に必要なのは、破壊かもしれません。歴史的に、破壊の中から英雄は生まれました。私たちは、「キリストの復活」(時代を切り開く者)を見るのかも?だとしたらこの不安の日々は序曲?
そうかもしれないし、そうではないかもしれない。そうだとしたら、この苦しい時代も、大きな意味がある、私たちは何を見ることになるのでしょう。


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