2006/10/28

父親たちの星条旗  映画(2005-06年公開)

AOLの招待で、試写会を見て来ました。
長崎、広島、沖縄と平和資料館や戦跡を訪ねたり、
書物を読んだり、写真展や記録映像を見たりと、
去る大戦については自分なりに学んで来たつもりですが、
硫黄島の激戦の裏にあった今回のエピソードは初めて知りました。


戦争映画は基本的に嫌いです。
特にリアルな戦闘シーンが多い作品は(本作は壮絶!)、
人間の形を留めないほどの屍の描写が幾度となく登場し、
胸が悪くなる。しかし、だからこそ見るべきなのだとも思います。
普通の人間を残酷無慈悲な鬼に変え、
かけがえのない人生の終わりを無惨なものにし、
かろうじて生き残った人間の心身にも深い傷を残す、
戦争の実体が、人間の尊厳を踏みにじる以外の
何ものでもないことを、良質な映画は教えてくれます。
見終わった後の戦争への不快感、嫌悪感、憤りと言った感情を
私は大事にしたいと思います。

ひとつの戦闘を敵味方双方の視点から描くという着眼点は、
今までなかったのではないでしょうか?
硫黄島の激戦を、米側の視点から描いた本作と、
日本側の視点から描いた次作『硫黄島からの手紙』は、
合わせ鏡のようになっていて、
両方を見て初めて物語の全体像が見える形になっている
と言えるのでしょうか?
今回日本兵は顔の見えない、不意打ちを狙う敵としてのみ
描かれています。敢えて描写をぼかしたシーンもあります。
おそらく本作で不明な部分は、次作で明らかにされるのでしょう。
しかし、次作『硫黄島からの手紙』で、もし日本軍の殺戮行為が、
米軍以上に陰惨なものだったらと思うと、気が重くなります。

何より腹立たしいのは、いつの時代も貧困や差別により
社会の底辺で苦しんでいる人々や無力な一般市民が、
戦争の矢面に立たされているという冷徹な事実です
(WWUでは日系人部隊もそうでしたね)
15年前の湾岸戦争でも、出征兵士の大半は年収が1万ドル前後の
米国の最下層出身者だった由。本国に帰還した彼らの多くが、
劣化ウラン弾が原因とも言われる重い後遺障害に苦しんでいる
そうです。あの戦争への参加は、果たして彼らにとって
どんな意義があったのでしょうか?

本作の主人公で、一時は英雄に祭り上げられた兵士達も、
本国では恵まれない境遇にある若者が殆どのようで、
除隊後の暮らし向きは苦しそうでした。

クリックすると元のサイズで表示します
(C)2006WarnerBros.EntertainmentInc.andDreamWorksL.L.C.

一方で、大変なことはすべて貧しい若者達に押しつけ、
豊かな階層は最も安全な場所でのうのうと生き延びている様子が
シーンの端々で描かれていたのが印象的でした。
日本の代表的な財閥の創業者も、元は四国の下級武士で、
明治の度重なる戦争で莫大な財産を築いた武器商人だったと
最近知りました。
戦争であたら命を失う人、心身の健康を損なう人がいる一方で、
ビジネスチャンスとばかりに私腹を肥やす人々がいる。
この”奪われる人”と”奪う人”の構造は、
きっと今も昔も変わらないのです。

もし今後、この日本で戦争を肯定したり、
戦争への参加を促すような声が聞こえてきたら、
たとえどんなに美辞麗句の大義を並べたとしても、
その声の主の真意は疑った方が良いのかもしれません。
戦争が起きたら、真っ先にその声の主は最も安全な場所に避難し、
戦争の最前線に否応なく駆り出されるのは、
私達や私達の子供に違いないからです。
これは、本作や過去のすべての戦争が物語っていることです。

こちらから仕掛けなくても、向こうから攻め込んで来たら…
戦争を回避するよう最大限外交の力を発揮して欲しいですが、
それでも道理が通らぬ国からミサイルが飛んで来たら、
否応なく戦争に巻き込まれてしまうかもしれないですね。
ただ、今の時代、いくらハイテク兵器が開発されても、
テロやゲリラ戦法で急襲してくる相手には、
さすがの米軍の組織的戦いも通用しないように、
戦争は始めたら最後、消耗戦になるのは必至です。

戦争はけっしてこちらからは仕掛けないこと。
外交でも、ただやみくもに相手を非難し追い詰めるのではなく、
懐柔策でも何でも使って、とにかく戦争を回避すること。
できれば日本は、敵対国同士の仲をとりもって、
世界の紛争の火種を消す、火消し役のようなポジションを
外交の舞台で獲得できたら良いのに、と思います。

以下は本筋とは関係ないですが、ネタバレにつき反転表示で。

不思議だったのは、エンドロールで流れた
実写のスライド映像には黒人兵の姿があったのに、
映画の中には一切登場しなかったこと。
主人公のひとりにネイティブ・アメリカンがいましたが、
彼への本国での差別のエピソードを際だたせるために、
あえて黒人兵を排除したのでしょうか?
それにしても不自然です



2006/11/26  1:30

投稿者:管理人はなこ

のるぶさん、初めまして。コメント&TBをありがとうございました。

ちょうどコメントをいただいた日は朝から出ずっぱりで
帰宅も遅く、昨日は昨日で朝からずっと夫がPCを使用していた為に私は使えず(それ以前に私は疲労困憊で半ば死んでいたのですが)、返信がすっかり遅くなってしまい申し訳ありません。

仰るとおり、戦争の不条理さ、馬鹿馬鹿しさを描いて、この作品は一級品だと思います。
社会のシステムの中に組み込まれた戦争(戦争によって儲ける者あり、一方的に不利益を被る者あり…また必要悪としての戦争の存在など)の実態の描写にも興味深いものがありました。

残念ながらご紹介の「M★A★S★H」は未見ですが、『ロード・オブ・ウォー』は見ました。レビューも本ブログにあります。ご参考までにアドレスを貼り付けておきます。

http://diary.jp.aol.com/jrygsq/190.html#readmore

夜も遅いので、のるぶさんのブログへのTB及びコメントは、また改めて明日にでもさせていただきますね。

2006/11/24  19:32

投稿者:のるぶ

はじめまして。
戦争をビジネスにしている死の商人が主人公の「ロード・オブ・ザ・ウォー」や、先日惜しくも亡くなったロバート.アルトマンの「M★A★S★H」も、皮肉タップリに戦争を描いていましたが、今回のイーストウッド監督は直球も直球、剛速球といったところでしょうか。戦闘シーンの凄まじさが圧倒的にもかかわらず、淡々とゆっくりと進んでいくストーリー運びにイーストウッドの力量に感服。「戦争なんてしょせんこんなものなのだ」というつぶやきが聞えてきそうです。

http://norubu.at.webry.info

2006/11/14  8:35

投稿者:管理人はなこ

rikocchinさん、こんにちは♪
残念でしたね。
私も確率としては、そんなには当たらないんですよ。
年によっては面白いように当たる年もありましたけど。
rikocchinの分までしっかり見てきて
(しかし、あの広い武道館で、どのように上映するんでしょう?
普通のホールの方がシートの座り心地も音響も良さそう)、
後でご報告させていただきますね。


2006/11/13  22:39

投稿者:rikocchin

はなこさん、こんばんわ〜☆

「硫黄島からの手紙」ワールドプレミア当選おめでとうございます♪
私も必死で応募しましたが、今日届かないと言うことは残念ながら漏れたと思います(笑)
はなこさんの感想を楽しみに待っていますね(*'▽'*)

http://rikocchin.blog50.fc2.com/

2006/11/2  19:05

投稿者:管理人はなこ

rikocchinさん、こんばんは♪
『手紙』に続きTBをありがとうございました。
そして今回はコメントまで。
『手紙』『父親たちの星条旗』と見応えのある作品でしたね。
何より作品を通して様々なことが想起され、
余韻が長く後を引く作品でした。
改めて気付かされること、考えさせられることも多く、
さらに知的好奇心が促されるパワーを持っている。
こうした作品との出会いには、その内容の深刻さはともかく、
幸福感すら感じます。
硫黄島二部作は、是非第二部の『硫黄島からの手紙』を見たいですね。一応試写会にも応募しました(笑)。

現実的な話、最近の彼の国の核実験騒ぎでは、
外交の舞台で日本はカヤの外との印象が否めず、
国際的プレゼンスの希薄さを感じました。
今や米国と中国の二強時代に入ったのでしょうか?
天然資源もなく、小さな島国に1億3千万人がひしめくこの国が、
目指すべき国の在り方はどんなものなのだろうと、
最近つくづく考えます。
広い国土を持ち、天然資源が豊富な米中と同じ方向を目指すのは
土台無理な話。
中国など、その人口、アジア全土に渡る”華僑文化経済圏”を見れば、
世界の4人に一人は中国系ではないかと思われるほど、
その国力は強大です。
個人的には文化大国として、また和平の仲介者として、
”尊敬される国”を目指して欲しいのですが、
その前提として防衛力をこれ以上強化する必要性の是非は、
現段階の私の見識では何とも言えません。
国防強化のもと、内政の福祉や教育が切り捨てられるのもどうか?
と思うし。
彼の国の問題は米中を中心に5カ国包囲網で封じ込め、
事態の終息に持って行けたらとりあえずは安心ですか。
逼迫性、費用対効果から鑑みれば、現時点では福祉・教育に
国家予算をより多く配分して欲しいと思うはなこですが、
考えが甘いですかね。
イージス艦や新型ミサイルなんて、べらぼうに高い?!

『硫黄島からの手紙』をご覧になりましたら、
また是非TBの交換を致しましょう!それではまた。

2006/11/1  21:26

投稿者:rikocchin

はなこさん、こんばんわ☆コメントありがとうございました〜

前回に引き続き大変参考になるコメントありがとうございました。はなこさんの言葉には、学校の先生や作家さんの書かれる文章を拝読しているような、知識の豊富な氷山の一角のような的確さと奥深さを感じます。

沖縄のエピソードはほんとうに心が痛むと共に戦争に対する激しい怒りを覚えました。

>道理が通らぬ国からミサイルが飛んで来たら

今最も身近に感じることですよね。こちらがいくら戦争はしないと言ってもミサイルが突然打ち込まれる危機はいつでもあることですし、そうなれば否応なく巻き込まれるのは避けられないかもしれませんね・・・
アメリカのイラク攻撃の時は、「show the flag」と言われて自衛隊を出動させざるを得なかったときの、小泉首相の判断は正しかったと思いました。テロは断じて許すことは出来ない、しかし、日本は攻撃に参加するのではなく攻撃されたイラクの公共整備や衛生行為に自衛隊を派遣するという態度を貫いた事です。
今後もいつもそういう危機が訪れる可能性がないとは言えないので、最低限の自衛力が必要といえるのでしょうか・・

http://rikocchin.blog50.fc2.com/


※投稿されたコメントは管理人の承認後反映されます。

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ