2006/9/16

ディア・ピョンヤン  映画(2005-06年公開)

タイトルを見ただけで、スルーしないで欲しい。

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プログラム表紙。
ある意味、地理的距離以上に
遠く離れたこの国と彼の国。
でも空はひと繋がりなんですよね…
この青く澄み切った空を
彼の国の人々も
日々見上げているに違いない。


新聞評に心動かされて、思わず買った前売り券。
それから少し時間が経過し、当初の好奇心も薄れた頃、
もう公開されたし、そろそろ見に行かなきゃね、
とほんの軽い気持ちで足を運んだら、これがなんと!
今年見た中で最も印象深い作品の1本になった。
感銘を受けた。この作品からさまざまなことを学んだ。

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なんかこのお父さん、私の父に似ているんだな〜、頑固一徹なところ、
外では強面なのに自宅ではステテコ姿だとか…どうやら同年配だし…
まあ、この世代共通のとも言えなくもないけど…と内心思っていたら、
夫に「きみのお父さんに似ているね」と言われた。やっぱり?!


在日朝鮮人二世の映像作家ヤン・ヨンヒ(梁英姫)女史が、
父親との10年間に渡る対話を記録した私的ドキュメンタリー。
彼女は自らカメラを持ち、撮影取材、インタビュー・構成を
手掛ける、いわゆるワンセルフ・ドキュメントスタイルで、
作品を作り続けている作家のひとりだ。

私的ドキュメンタリーの体裁をとりながら、
本作は普遍的な家族愛や夫婦愛を描いていると同時に、
在日朝鮮人という日本社会におけるマイノリティの問題、
帰国事業により北朝鮮へと渡った多くの”帰国者”の現状等、
社会性の高いテーマをその中に含んでいる。
私はこの作品を通して初めて知る朝鮮問題の事実に驚き、
愛情深い家族や夫婦の在りように心打たれた。
と言っても堅苦しさは微塵もない。軽妙な関西弁トークで、
まるで夫婦漫才、親子漫才を聞いているようなノリである。

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新潟港に停泊中の万景峰号。何かと話題に上る船ですが、
この船は「帰国者」の命綱でもある。在日の人々はこの船で、
物資に事欠く彼の国に住む親族へ、山のような荷物を運び、届ける。
作品の中で「親しかできへんで」と言いながら梱包する老母。
自業自得という意見もあるかもしれませんが、同じ「親」としては切ない。


作品の冒頭で流れる在日朝鮮人についての概説に、
目から鱗の落ちる、初めて知る事実が多々あった。

1959年から20数年に渡って続いた、いわゆる帰国事業では、
日本社会での差別や貧困に苦しんだ多くの在日朝鮮人が、
”ソ連の後ろ盾を得て飛躍的に発展する”と信じて
”祖国”へと渡ったこと。

その「帰国者」の多くが南朝鮮の出身者であり、
当時の政治的背景から、足を踏み入れたことさえない北朝鮮を
”祖国”に選んだこと(女史の兄3人も30年前に渡朝)。

朝鮮籍の在日朝鮮人は、海外渡航後日本へ戻る際に
難民パスポートで再入国しなければならないこと…

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幼い頃のヤン・ヨンヒさんとお父さん。
この頃の父と娘の間に、「思想信条」の違いから来る対立はない。
どこにでもいるような、仲の良い父娘。


ここで北朝鮮問題をとやかく言うつもりはない。
ここでは映像作品について論じているのであり、
映像表現の分野で、日本社会のマイノリティが、
マイノリティの視点で声を上げること、
思いを表現することの重要性を十分認識しているからだ。
それによって、日本社会の健全性が保たれると信じているから。
そして現在の日本の社会がそれを容認する、
さらに一歩進んで受容するだけの”器”であると信じたい。

政治体制が違えども、信じるものが違えども、
この作品で描かれている家族の在り方は、
私達の中にも見てとれるものだ。
理解しがたい国家の中にも、
血の通った人間が住んでおり、その日々の営みがある。
そのことは心に留めておきたい。

歴史のどこかで掛け違えたボタンのせいで、
互いに憎しみあい、理解しあえない国々、
その国家間の諍いに巻き込まれ、翻弄され続ける人々。
大海の木の葉のように
ちっぽけな存在に過ぎない個々の人間を
誰が責められようか?
皆それぞれに与えられた環境の中で、
必死に生きて来たであろうから。

強いて言うなら、責めを負うべきは、
国の舵取りをするリーダーだろう。
昨日テレビから聞こえて来た言葉が今も耳に残っている。
先の大戦で日系部隊に所属し、多くの戦友を失いつつも
自身は九死に一生を得たハワイ在住日系人のご老人の言葉だ。
「自分のような悲しい思いはもうたくさんです。
戦争を二度と起こさない立派な政治家が日本に現れることを
切に希望致します」

帰り道、多くの人でごった返す渋谷駅前で、
折しもある政治家の立ち会い演説会が開かれようとしていた。
その主役はなかなか到着せず、つなぎに都議会議員らが
代わる代わるマイクを持ち、その政治家の支持を訴えていた。
私が今まさに改札口を抜けようという瞬間、背後で、
「只今、到着しました〜」という声がした。
それは安倍晋三氏の到着を告げるアナウンスだった。

『ディア・ピョンヤン』公式サイト




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