2021/10/12

歯医者通い  日々のよしなしごと

 私の母は子育てに関してはネグレクトに近い野放図な親だったけれど、歯だけは丈夫に産んでくれた。私は親から歯の磨き方も教わることなく(まあ、学校の歯科検診で歯科衛生士さんから教わったけれど)、こまめに歯磨きをするわけでもなかったのに、成人するまで1本も虫歯にならず、歯医者には行ったことがなかった。

 初めて歯医者に行ったのは、幼馴染が歯科衛生士になったので、彼女の勤める歯科医院に歯石除去に誘われたのがきっかけだった。

 そして暫くして、不覚にも奥歯1本が虫歯になった。さらに20代の前半に生えて来た4本の親知らずのことごとくが変な生え方をして他の正常な歯を圧迫し始めたので、すべて抜くことになった。この抜歯がなかなか壮絶で、抜歯後は体調が暫く悪くなったほどだ。

 それから十数年は特に虫歯もなく平穏に過ごしたのだが、40と50の声を聞いた途端、またもや不覚にも虫歯が出来てしまった。閉経後の骨粗鬆症が言われるように、女性ホルモンの減少が、歯の不調に影響しているのだろうか?

 そして昨年に至っては昔治療した奥歯の一部が欠け、そこからばい菌が入って歯肉炎を患ってしまった。これが頬も腫れあがるほどの炎症で、痛み止めも効かないほど頭の芯までズキズキする痛みで、夜も眠れないほどだった。虫歯ではかなり先輩格の夫にその痛みを訴えたら、「それがほんとの歯痛(はいた)だよ」と笑われた。それまでは全て歯科検診でたまたま初期の虫歯が見つかっただけで、私は本格的な歯痛を経験したことがなかったのだ。

 1月半歯医者に通って漸く症状は落ち着いたが、今度は患部の治療を終えるまで酷使した反対側の奥歯が痛み出した。長年の摩耗で一部神経が露出していると言う。そこに食べ物が触れようものなら、翌日までズキズキするような激痛である。さらに当初は冷たい水だけが沁みていたのが、温かい飲み物、果ては常温の水まで沁みるようになってしまった。

 そこにトドメを刺すように、昔治療した歯を覆うレジンが欠けてしまった。仕方なくまた歯医者に行く。歯の欠けと知覚過敏の治療である。

 ベテラン歯科医の巧みな手さばきで治療は思ったより早く済んだ。歯科医は「あなたの歯は基本的にとてもきれいな歯で、状態も良いです。あまり心配しないように。」と言う。先生は励ましているつもりなのだろうか?

 訝る私の表情を読み取った歯科医は「そりゃ、50年以上も使い続けているんだから、くたびれもしますよ」と笑った。確かにそうかもしれない。

 そう言えば、昔の西洋社会では、床屋が歯医者を兼ねていたそうだ。私はたまに昼休み前の最後の患者になると、30分ばかり先生とイマドキの政治経済の話で盛り上がることがある。まさに床屋ならぬ歯医者談義である。

 当地に越して来て以来、30年近くお世話になっている先生も既に70代になられた。未だ、かくしゃくとしておられるが、後何年、治療していただけるのだろうと、ふと不安になることもある。この歯科医院、床がタイル張りの和式トイレを未だに使い続けている、先生と同じくかなり年季の入った歯科医院である。




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