「わたしに会うまでの1600キロ」  

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このブログでもご紹介している『イントゥ・ザ・ワイルド』の女性版といってもいい作品。
『イントゥ・ザ・ワイルド』にいまいち自分を重ねることが出来なかった女性の方には是非お勧めしたい。

シェリル・ストレイドは母親のボビーと弟のリーフと三人暮らし。
母親のボビーは暴力を振るって暴れる夫から、子供達を守る為に逃げ出し、しばらくするとまた夫の元に戻る様な生活を繰り返している。

時が経ち、夫とは別れ、1人で子供達を育て上げたボビーは、かつて叶えられなかった大学へ通う夢を果たし、ようやく自分の人生を謳歌しようとしている。

しかしDV家庭に育ち、母親が肉体的にも精神的にも傷付く姿を見続けて来たトラウマは、今もシェリルの心に深い禍根を残している。

ある日、ボビーが楽しげに歌いながら料理を作っている。そんなボビーをシェリルは訝しげに見ながら、こう言うのだった。

シェリル :
その歌やめて 何なの?

ボビー:
あなたこそ何?
楽しいから歌うのよ

シェリル :
どうして楽しいの?
何もないのに

ボビー :
愛にあふれてる

シェリル :
くだらない
そういうのは やめて
ウエートレス同士

ボビー :
学生同士

シェリル :
一生 ローンを抱えて
こんなボロ屋住まい
乱暴な飲んだくれとなんか
結婚するから...
何に目をつぶれば
のんきに歌えるの?

ボビー :
目はつぶってない

シェリル :
じゃ なぜ?

ボビー :
私が唯一教えられるのは
最高の自分の見つけ方と
それを手放さない方法よ

シェリル :
今が最高なの?

ボビー :
頑張ってる
乱暴な飲んだくれとの結婚に後悔?
まさか
だって あなたを授かったから
あなたと弟を
いいところだけ見るのは難しいけど
価値はあるわ
この先 もっと ひどい日もある
つぶされるのは簡単よ
でも私は なぜだか 生きたいの


自分の人生を取り戻そうと腰を上げた母親と、これまでの自分の負って来た痛みに今尚、翻弄されている娘が互いの胸の内を吐露する場面だ。この時に交わした母との会話を旅の途中で思い起こすことになる。

シェリルは夫のポールとの離婚、そしてボビーの突然の死といった悲しみによって自暴自棄となり、ヘロインに溺れていく。そんな荒れた生活の中でシェリルは自分の心の傷を癒すために数千マイルにもわたるパシフィック・クレスト・トレイルを一人で歩き通すことを決意するのだった。

シェリルの回想シーンを挟みながら、旅の途中で様々なアクシデントや出会いを経験し、シェリルの成長していく姿を描く。

旅の途中で出会った少年がシェリルに歌って聞かせた歌の歌詞が印象的だ。
シェリルはそれをボビーに重ねる。
本当は愛して止まなかった、自分の全てだったボビーに。

「この谷間を去り行くあなた
輝く瞳と笑顔を忘れない
あなたと一緒に太陽が消えて
行く道を照らす光がなくなるから
愛しているならそばに来て座って
急いで別れを言わないで
赤い河の谷間を忘れないで
そしてあなたを愛したカウボーイを
赤い河の谷間を忘れないで
そしてあなたを愛したカウボーイを」


旅を終えたシェリルはこう回想する。

「ひとつの行動が何を生むか知るすべはない
何が何を導き
何を壊し
何を花開かせ
枯らせ
道を変えさせるのか

もし自分を許せたら?
後悔していたら?

でも時が戻っても私は同じことをするだろう
もし あの男たちを愛していたら?
ヘロインから何かを学んでいたら?
すべてのことが私をここへ導いたのなら?
何の救いも得られていなかったら?
既に救われていたら?


母の望んだ女になるのに
4年と7ヶ月と3日かかった
母なしで

悲しみの荒野で迷子になった私は
ようやく森を抜け出した

最後の日 そこへ着くまで
行き先はわからなかった
”ありがとう”と何度も心に思った

トレイルから学んだことと
これから学ぶことに
この4年後に再び橋を渡り
今 見ている場所で結婚することに
9年後には息子カーヴァーが生まれ
翌年 娘が生まれ
母と同じ”ボビー”と名づける

私は素手を伸ばすことをやめた
水の中の魚は眺めるだけで充分
それがすべてだ

私の命は 他の人と同じ
神秘的で かけがえなく 神聖で
すぐそばにあり
確実に存在し
私とは切り離せない
自然のままに あるべきもの」


原作はシェリル・ストレイドの自叙伝
『Wild: From Lost to Found on the Pacific Crest Trail』
『イントゥ・ザ・ワイルド』同様、この作品も実話を元にしている。

自分のこれまでの人生で負った傷に翻弄され「今」を生きている実感が持てない貴方
そして新しい人生を歩み出すことに躊躇している貴方

シェリルのように自然の美に抱かれて歩いてみませんか?


『わたしに会うまでの1600キロ』
原題: Wild
2014年・アメリカ
監督 ジャン=マルク・ヴァレ



【豆知識】
主人公が歩いたパシフィック・クレスト・トレイルはアメリカ=メキシコ国境からアメリカ=カナダ国境までのアメリカ西海岸を南北に縦走する長距離自然歩道。モハベ砂漠や数々の山脈を越える過酷なロングトレイル。ガラガラヘビ、サソリ、熊などの動物、生物の脅威から、雪や砂漠、崖といった自然、気候の脅威が走破を目指す者に迫り来る。成功を収める者は6割と言われる。

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