「人生に乾杯!」  



1945年5月8日の敗戦後にソ連に占領され
共産化が進められたハンガリー。

そんな最中、共産党員のエミルと伯爵令嬢のヘディは運命的な出会いをし結婚する。

それから数十年後、老夫婦となったエミルとヘディは年金暮らしを余儀なくされ、毎月の家賃は滞り、電気代も払えない有様。

ある朝、差し押さえに現れた執行官が家賃のカタにエミルの大切な本を持って行こうとするが、ヘディは自分の大切なダイヤモンドのイヤリングを外し、それを代わりに持って行くようにと彼らに渡す。

国のために様々な犠牲を払って来た老人が虐げられる社会、人として当たり前の生活さえも送れない、不安に怯えなければならない現実、そんな国の冷たい仕打ちにエミルは突如、行動を起こす。

"強盗"という手段で。

強盗にしてはスマートで紳士的な手法ではあったが、見事に成功してしまう。

各地で5件もの強盗を働きながら妻ヘディと共に逃走するエミル。

この逃走劇はマスコミでも大々的に報じられるが、次第に国中の同じ境遇にある年金暮らしの老人達の共感と同情を集めるところとなり、喝采と賞賛が送られるのだった。ハンガリー中で老人達が立ち上がり、デモに発展し、また模倣犯まで出現する。

テレビでは市民とレポーターのこんなやり取りも。

「年金だけじゃ生活していけないのよ
 その現状を知るキッカケになる」

「銀行強盗がですか?」

「ほかに方法がなければ仕方がない」



「俺は好きだぜ 人生 我慢して来たなら 最後くらいぶちかませばいい」



そんな逃走劇の中で、30年前に夫婦に起こった悲劇が浮き彫りになって行く。

そして結末は・・・

劇中では老夫婦の深い愛、互いに相手を想い合うシーンがいくつもある。

例えば、テレビでクイズ番組を観るのが好きな妻だが、家にあるテレビはとても小さくて古い。

強盗を働いた後、エミルが最初に手に入れたのはテレビ。
そのテレビを妻へ送る。

そして家賃のカタに取られてしまったダイヤモンドのイヤリング(エミルが結婚前にヘディへ送ったもの)の代わりに、宝石店へ、ヘディと共に押し入って新しいイヤリングをヘディに手渡す。

強盗という犯罪を犯しているにも関わらず、エミルとヘディは誰の命も奪うことはなく、終始紳士的に接し、礼儀正しい。夫婦に接した者達は2人を好きになり、2人を知らない者達はニュースでその姿を観て共感の拍手を送る。

そして何より逃走を続ける2人に悲壮感などなく、束の間のハネムーンを楽しんでいるかのようだ。

この作品は社会に対する痛烈なメッセージでもあるのと同時に、ロードムービーでもあり、そして老夫婦の尊いラブストーリーでもあり、人生賛歌だ。

人生の「終わり」は「命が尽きること」ではない。
「屈したり」「諦めた」時に人生の灯火は消え去ってしまう。

いくつになっても、幸せへの道は続いている。

いくつになっても、人生は変えられる。

貴方が立ち上がる時こそが、人生が変わる時だ!!





2007年・ハンガリー
ガーボル・ロホニ監督
原題:Konyec

*Mark Kayが観た映画を月毎にランキング形式でメモしているサイトです
『今月の観た映画ランキング』

*スマートフォン(iPhone含む)で本ブログをご覧の方は「PC表示」に切り替えて頂くとサイドメニューの閲覧が可能です。
6



コメントを書く


この記事にはコメントを投稿できません




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ