「星の旅人たち」  

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カリフォルニアに住む眼科医のトムの元に、1人息子のダニエルがピレネー山脈の山中で嵐に巻き込まれて死んだという知らせが入る。ダニエルは世界遺産であるサンティアゴ・デ・コンポステーラへ800kmの道のりを歩いて巡礼している最中だった。トムは息子の訃報を聞き、すぐさま現地へ駆け付ける。

トムは亡骸をそのままアメリカへ持ち帰るつもりだったが、現地で荼毘に付すことにする。それはある目的のため。

そう!ダニエルが果たせなかったサンティアゴ・デ・コンポステーラへの旅を続けるため。ダニエルの遺灰と共に800kmの巡礼の旅が始まるのだった。

息子の遺品のリュックに詰まった装備をそのまま背負い、そしてリュックのポケットにはダニエルの遺灰を忍ばせ、その道中で撒いた。

聖地巡礼の旅を決め歩き出した時、ダニエルの事故を担当した警官がトムにこう問う。

『なぜ"道"を歩く気に?』(警官)

『息子のためかな』(トム)

『"道"は自分のためのもの』(警官)

『どういうことです?』(トム)

『エイヴリーさん 私も息子を失った
 良い旅を 巡礼を楽しんで "2人"で』(警官)

トムは道中で三人の巡礼者と出会う。

オランダ人のヨストはダイエットのために。

カナダ人のサラはサンティアゴ・デ・コンポステーラに着いた瞬間に禁煙をすると決めている。
(旅の途中でサラは結婚をしていたが夫のDVにより破綻してしまい娘を手放したこと、今もろくに母乳もあげられなかったことを悔やんでいると吐露する)

アイルランド人のジャックは作家としてスランプに陥っていて、この旅にその打開を賭けていた。

それぞれが苦悩や葛藤を抱えているのだ。

初めは息子を失った悲しみで心を頑に閉ざしているトムは、自分の目的を貫徹することだけを考えて、旅を共にする仲間へなかなか視線を向けようとせず、いつも苛立ち不機嫌で、巡礼の目的も頑として語ろうとはしなかった。

しかし巡礼の旅を重ねることによって、その喪失感を埋めてくれるのは彼らであることに気付き、心を許し、自分のことを語る様になって来る。

家族を失い、しかし、またそこに新たな家族がいることに気付く。擬似的な家族だが、そこには旅を共にすることでお互いを癒し合い、そして認め合う信頼感が生まれて来る。

そう、人生とは『巡礼』そのものだ。

最初からその目的がハッキリしている者もあれば、それが不明確な者もいる。
旅の途中で、それを見出す者もいる。

『巡礼』は自分を見出す旅。
長い道のりの中で歩むのをやめたり、誰かと争ったり、同行の仲間との別離を経験したり、バックパックを河に流されたり盗まれたりもする。

しかし誰かと争っても、別離を経験しても、互いに目指す聖地は同じ。夕暮れが近付いて今日の宿へ立ち寄る者もいれば、まだ歩けるからと先を急ぐ者もいる。辿り着く時期は同じではないが、またどこかで必ず会えるし、その中で誰かを許したり、謝ったりするチャンスもある。

バックパックを河に流されたり盗まれたら(大切に抱えているものを失ったら)またそれを拾い上げることも出来るし、誰かがそれを見つけ出して、新しい価値を付加して返してくれるかもしれない。

それに『巡礼』は禁欲的で厳粛で険しい道のりばかりではない。

『巡礼』とは本来、至福に満ちたものだ。

絶品の料理や酒もあれば、掛け替えのない出会いもある。

それに気付き、光を注ぐのも自分なら、それを見ようともしないでただひたすら歩こうとするのも自分だ。

旅のクライマックスには雄大な自然と荘厳なミサが迎えてくれる。
それぞれの道中を祝福する様に。

旅を終えると、それぞれが本来の自分の生活へと舞い戻って行く。

こんな想像をした。

『巡礼』が人生なら、サンティアゴ・デ・コンポステーラはゴール。
つまり『死』を意味する。
『死』とは『生』そのものでもあり、また『入口』でもある。

『死(生)』はあまりにも煌びやかで美しく、そして感動を与え、涙に打震えるものだ。
勿論それは、他の誰かにとってではなく、その道を確かに歩いた自分にとってだ。
(本作の終盤、サンティアゴ大聖堂での大香炉が堂内高く揺れる光景は圧巻だ)

そして舞い戻って行く日常の生活は

『死』の向こう側の世界に例えられるだろう。

そこが「本来」自分がいた場所なのだ。
『巡礼』を始める前にいた場所に帰るのだ。

そしてそこでは『巡礼』によって見出した自分の個性が生かされるのだ。

そう『巡礼』を終えていつもの自分の生活に戻った時に。

劇中で流れるアラニス・モリセットの「THANK U」にもこう歌われる。

『"死"と"立ち止まる"を同じに考えるのをやめてみたら?』と・・・

それならば、この『巡礼』を穏やかに、そして楽しみながら歩こうではないか。

そして誰かを許し、心を開けた時からが、本当の旅の始まりかもしれない。
その時期を決めるのも、また自分だ。

自分に降り注ぐ風を愛おしみながら、共に歩こう!

この映画を観ながら、自分の人生を『巡礼』に例えてみませんか?



2010年・アメリカ=スペイン合作
エミリオ・エステベス監督
原題・THE WAY

『星の旅人たち』挿入歌

THANK U / ALANIS MORISSETTE

抗生物質を処分してみたら?
満腹のときは食べるのをやめたら?
透き通るほど薄いニンジンを吊るしたら?
分かりにくい賛辞ってどうなのかしら?

ありがとう インド
ありがとう 恐怖よ
ありがとう 幻滅よ
ありがとう 弱さよ
ありがとう 結果よ
ありがとう ありがとう 沈黙よ

あなたのすべてを受け入れる私はどうなの?
一度だけその一瞬を楽しむ私は?
最後に貴方を許し気分よくなる私は?
一度にすべてを悲しむのはどう?

ありがとう インド
ありがとう 恐怖よ
ありがとう 幻滅よ
ありがとう 弱さよ
ありがとう 結果よ
ありがとう ありがとう 沈黙よ

何かを手放したと思ったのに
手に負えないほど手に入った
何かから飛び降りた瞬間
私は着地してた

自虐的な態度をやめてみたら?
自分の神々しさを思い出してみたら?
ものおじせず思いきり泣きわめいてみたら?
"死"と"立ち止まる"を同じに考えるのをやめてみたら?


ありがとう インド
ありがとう 恐怖よ
ありがとう 幻滅よ
ありがとう 弱さよ
ありがとう 結果よ
ありがとう ありがとう 沈黙よ



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