壊れかけの妄想Radio

2021/7/16 | 投稿者: pdo

本日の一曲目:Azymuth - Fly Over The Horizon



全国0局ネットでお送りする妄想電波の時間がやってまいりました。さいきんテロリストと間違えられて国立競技場の前で職務質問をうけました、今夜のナヴィゲーター、コーネリアスこと小山田圭吾がお送りしています。

来週の木曜日と金曜日が祝日であることに今気づいた今夜のナヴィゲーター、コーネリアスこと小山田圭吾がお送りしています。

東京オリンピック開幕までいよいよ一週間を切りましたね! 

昔、「クロスオーバー・イレブン」というFMのラジオ番組がありまして、本日の一曲目はそのテーマ曲です。懐かしく感じる方は、私と同世代ですね。

というわけで、今日は懐かしの「クロスオーバー・イレブン」のスタイルで、「もうすぐ、時計の針は12時を回ろうとしています。今日と明日が出会う時、クロスオーバーイレブン…」というナレーションを渋い男性俳優さんの〈あの声〉に脳内変換してもらえたら嬉しいです。

本日の二曲目:フリッパーズ・ギター「サンバ・パレード」


本日の三曲目:コーネリアス「MUSIC」


〈スクリプト〉朗読:津嘉山正種

老作家となった三輪俊介は、夢の中にいる。

彼は都電に乗ってどこか東京の下町に行こうとしている。たぶん勤め先の大学へ辿りつこうとしている。乗り換えをしなくてはならない。昔は、戦後であっても一枚の切符を使って次々と乗り継ぎをつづけると、遠方まで行くことができた。

彼は今、そんなふうにして目的地へ行こうとしているのだが、最初の乗り換えでつまずいてしまった。

そんなことは、それまででも度々あった。だから同じようなことになってしまった。そうなると早く誰か道順に詳しい人を見つけてきかなければならない。度々あったというのは夢の中でのことで、夢の中にあって、何度も経験したことだと思っていた。

いつしか電車道を離れてしまっていた。住宅地、商店街を歩きに歩いて、運よく別の電車道に出るしか仕方がない。既に道行く人に尋ねたようだが、それでも依然として、知らぬ道を歩いていることになってしまった。

いつもこんなふうなのだ。ある住宅地の路地に入って行った。そんなところに踏み迷ってしまっては困ると思いながら行くうちに、一軒のシモタヤで道を訊いてもいいような気がした。

案内を乞うと、ひとりでに家の中へ入って行くことができ、奥座敷まで入りこんでしまうと、床の間を背にして和服を着た老人が坐っていて、何かをしてい た。何か道具の品定めをしているように思えた。

ちょっと時間が経った。

彼は道を尋ねることも忘れていた。老人のそばには、これも和服の婦人が坐っていた。

彼は闖入したかたちになったが、咎められている気配はなかった。そういうときには、そのままそこにいてじっと見ているというのが、この老作家の若いときからのやり口であった。

そんな横着な有様では、不意に殺されるハメになってもしかたがないことも分っていないわけではなかったが、一度そうして入り込んでしまって、その家 の家族(?)といっしょに坐っていると、どんなひどいことが起きても決して後悔することはないだろう、と彼は思っていた。さっきもいったように、それが彼の生きてきた態度であった。

とてもとても甘美なことであった。何が、起ころうとも、そう、で、あっ、た――。


本日の四曲目:Butéco - Celso Fonseca



<スクリプトつづき>

とにかく夢の中で彼は座敷の中で坐り込んでいた。行く先々で行く道をきいたはずだが、ハッキリとした返答はなかった。

気がつくとすぐ右側の手の届くところに見知らぬ婦人がいた。彼女は背中を見せているだけだが、だんだんと、それで十分だと思えた。そのうち彼女が坐ったまま近づいてきて、いつのまにか彼の膝の上に乗っていた。そうして彼に抱かれることが当然で、部屋の中にいるほかの人物たちも、それを望んでいるようだった。

彼と彼女とほかの人物たちも、そろって同じ思いで充ち溢れていて、どうしても抱き合いをせずに済ますわけには行かなかった。

どんなことを犠牲にしても、そうせねばならず、そうしなければ生きている印もなく、彼は人でなしであった。

彼は彼女の耳に何ごとかをささやいて、重い彼女の身体をもちあげて、自分の脚をのばして、その状況の中にふさわしい姿勢をとった。ささやいた言葉が何であったか、彼にとっても秘密であった。それも不思議なことであった。

耳にささやいたのは、悦楽へ入る呪文みたいなものであった。どの夫婦にも、そうした呪文はある。呪文によって悦楽は高みにのぼることが予定されている。

それぞれの家の中の夫婦が特有の呪文をもっている。それは夫婦がおのずと工夫、発明したものである。

人間の夫婦だけではない。アッという間のことであっても、馴れ親しんだ間柄 でないにしても、動物どうし、生物どうし、花粉を運ぶ蝶や蜂と花との間にも、それはある・・・。

そういう呪文をみんな思いつくことが正当であって、そのうちの一つがこの 男と女の間で行われようとしていることだ、という感じであった。

「あたしの背中っていいでしょう」

とさえも、その見知らぬ女はいわなかった。

彼のささやいた呪文のような隠語で十分であった。眼の前に迫ってきたときは、まだブラウスを着ていた。ほかの人物は和服であったのに、そう若いとはいえないその女は、何故かブラウスを着ていた。あとの服装は全く思いだせない。

夢の中で二人はそれから動いた気配もあったか、なかったか、思い、出、せ、ない――

本日の五曲目:I WANTED YOU - inna



<スクリプトつづき>

「非常によかった。もったいないほど、よかった」
 
と、目をさまして彼はつぶやいた。まだ目があかなかった。

「あのよさを忘れてはいけない!」

夢の中で、最初の目的や目的地のことはどうでもよく、その目的地を訊かれ ても考えることはできないように思えてきた。しかし、ずっと目的地も目的も はっきりしていた。

汽車の中はひたすら混んでいた。復員のときに乗った船の中や、佐世保から 郷里への汽車の中と同じような様子であるが、気がつくと男の子と女の赤ん坊 が一緒に乗っていて、二人はどうも彼の子供であるらしかった。

赤ん坊は泣いていた。誰も席をゆずってくれないので、泣く赤ん坊を抱いた 妻らしい女がいた。説教師と話しながら、その混雑の中でけたたましい笑い声をあげていた。すると赤ん坊はいっそう泣き声をはりあげた。

けたたましく笑いはじめると、笑っていることのほかはすべてのことを忘れ てしまうのが、彼の前の妻であったから、眼の前の彼女がそれだと、なつかしく 思えていた。

〈説教師であろうと治療師であろうと、八百屋であろうと大工であろうと、何であろうと、けたたましく笑ったらもうおしまいだ。笑っている相手とのこと のほかは、たとえ家族であっても、誰のこともかまおうとはしないのだから!〉

しかし、けたたましく笑っている妻は、夫である彼のそばからずっとずっと離れていて、彼が呼び戻してもどうにもならないほど、夢中に自分の世界の中にいる。

はじめて出会ったときが既にそうであった、と彼は思った。

長い間、笑っていたあと、ふりむいて彼の存在に気づいた。それが始まりだった。そのあとひたすら、

「ぼくは愛しているのに、あなたは向う向いて背中しか見せない」

ともいったようだった。

彼女はじっと彼の方を見た。

〈この少年を何とかしてやらなくてはなるまい〉

と、真剣そうな顔をした。

何回となく毎日のように、その女とは同じフトンで抱き合っていた。彼女の方が彼のフトンにもぐりこんできた。それは奇妙な親しさで、親しみそのもののように見えた。

夜明けまでそうしていたのに、彼女はこの世にそんな行為などあり得るはず はない、といったように何も発展せず、眠っただけであった。

「最高の記念すべき日だ」

と、夢からさめた彼は、息子がいつか、彼に向ってそうしてみせたように、片眼をあけて、つ、ぶ、やい、て、いた―――。


本日の六曲目:There Will Never Be Another You - Nara Leão And Roberto Menescal



本日の七曲目:Azymuth - Outubro (October)





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