Reason to depart

2021/6/20 | 投稿者: pdo

小島信夫『別れる理由』は第59章から「夢くさい」展開に入り、力のある作家が、自意識を奔放にぶちまければこうなる、といったような、映画でいうとフェリーニの「8 1/2」のような展開、筒井康隆にもたぶん似たような作品はあるがここまでではないだろうと思われる。

現在の時代の目から見れば、たいして過激なことが書いてあるわけではないし、思わず笑ってしまうようなパンチ力のあるフレーズで畳みかけてくるわけでもない。ヤケクソで書いてるだけだろう、というのであれば、今の中原昌也のほうがその感じがよく出ている。

「駄作」とか「失敗作」と切って捨てられても仕方がないような小説に、第59章以降はなっている。間違っても小島信夫をこれから読もう、という人にはお勧めできない。

しかし小島信夫はこの「群像」の連載小説と並行して、日本近代作家の評伝や世界の文学者たちの評伝を連載していた。そちらは研究者の仕事のようにきっちり書いてある(全部読んで確認したわけではない)。

「オセロ」、「アンナ・カレーニナ」に次ぐのがこの二十世紀の小島作品だとしたら、二十一世紀にも書かれなくてはならない。それは世界のどこかでもう書かれているのかもしれないし、これから書かれるのかもしれない。

その程度には重要な小説だと思う。知らんけど。
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