週末に読んだ本

2021/3/29 | 投稿者: pdo


「交通誘導員ヨレヨレ日記」柏耕一

うちの息子が交通誘導員のバイトを始めたので読んでみた。著者は最底辺と自虐的でキツめのエピソード中心に書かれているので大変そうに思えるが息子の話だと必ずしもすべての実態を反映しているわけではないようだ。例えば昨年からはコロナの影響で仕事を失った人が日勤夜勤ぶっ続けで働くというケースが増えているとのことで、それはこの本にはまだ書かれていない。

「スティル・ライフ」池澤夏樹

第98回芥川賞受賞作。1987年。株取引の話が出てきたり、バブルの世相を反映しているような。昔読んだ記憶があり中身は完全に忘れていたのだが、冒頭の「チェレンコフ光」の会話のくだりが記憶に残っていた。笑っちゃうくらい気障な会話。トレンディドラマみたい。ストーリー自体もたいして面白くはない退屈な小説。

「尋ね人の時間」新井満

第99回芥川賞受賞作。1988年。バブル真っ盛り。オシャレなフォトグラファー(バツイチ)が若いモデルに誘惑されるが5年前から原因不明の不能で…みたいな、イケイケの世相の裏にある都会生活者の孤独と寂寥みたいなのがテーマ?とすれば安直すぎるか。当時流行ったトレンディドラマみたい。退屈な小説。

「ダイヤモンドダスト」南木佳士

第100回芥川賞受賞作。過疎化する農村と病院が舞台で、作者は医師でもあるとか。当時読んだ記憶があり中身は完全に忘れていたのだが、アメリカ人宣教師の病床での様子や院長が家族と自転車に乗る練習をしているというくだりが記憶に残っていた。これはいい小説だと思った。古井由吉が選評で、ラストの「二つの死」は時差をつけて書いた方がよかったと言っていて、確かにそうだなと思った。

「間食」山田詠美

講談社文芸文庫「深淵と浮遊 現代作家自己ベストセレクション」収録作品。(下の二作品も同じ)
山田詠美の小説は初めてなので気合を入れて読んだが若干肩透かし。確かに文章は巧いし読者を引きこむ語り口も堂に入ったもの。一篇の作品としてきちんと成立している。
しかし個人的に登場人物にリアリティを感じない。特に主人公の職場仲間のちょっとなよっとした男。鳶職の現場にそんな奴いねえよ。

「胞子」多和田葉子

「独特の世界観」で、鳥居みゆきを純文学にした感じ・・・って、ノーベル賞候補作家の小説に対してなんというチープで浅薄な感想なんだろう。でも実際そう感じたんだもの。

「瓦礫の陰に」古井由吉

この人も大江健三郎みたいに、わざと分かりにくい文章に書き直したりしているのだろうか。この文章世界に入って行ける人にとっては得難い読書体験となるのかもしれない。
でも純文学ってこういうもんだよなあ。

「十九歳の地図」中上健次

尾崎豊のアルバムではない。宇佐美りんの「推し」作家の「伝説の作品」。ひたすらむさ苦しい若者のマスターベーションを見せつけられているよう。時代の空気を濃く感じる。今で言うとNHK集金人の若者あたりが主人公になると思うし、それは読んでみたいが、今こういう作品を書く若手男性作家はいないのだろうか? 

「墓前生活」「どうで死ぬ身の一踊り」「一夜」西村賢太

すごく面白く一気に読んだ。これは大当たりであった。第144回芥川賞受賞作「苦役列車」を読んだときにそんなに面白くなかった記憶があったのだが、新潮文庫のこの三作品はすごい。こんなに面白いんならもっと早く言ってよ(誰に言ってる?)。私小説ってこういうものだよなあ。きちんと作品として成立していなければただの愚行(ていうか犯罪)記録。同性相手の女性が自分の中で具体的にイメージでき過ぎて余計にリアル。稲垣純一って(笑)。

「小銭をかぞえる」西村賢太

あんまりおもしろかったんで別のも買っちゃったよ。こういうのと気取ったトレンディドラマみたいな嘘くさい小説を一緒にしちゃいかんよ(誰に言ってる?)。
でも、もうこのパターンはいいかな。「秋恵もの」はまだまだあるらしいのだが・・・

「蹴りたい背中」綿矢りさ

伝説の第130回芥川賞受賞作。当時はまったく関心がなく、実に17年経って初めて読んだ。
まぎれもない天才の作品。あんなルックスの少女がこんな純文学青春小説を書いたらそりゃ超話題になるよね。誰もがそうだと思うが、この人が10年後20年後30年後にどんなものを書くのかにすごく興味がある。

「意識のリボン」綿矢りさ

というわけで2017年に出たこの本を読んでみることにした。短編集で冒頭の『岩盤浴にて』は面白かった。それ以外は、うん、まあまあ。天才なんだから、もっとすごいものを期待してしまう。なんて読者はどこまでも無責任。
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