私の東京物語(8)

2020/12/24 | 投稿者: pdo

第8話

歯科助手として働きながらお笑いを勉強するために渋谷にある養成所に通っていました。週に一度ビルの一室で講師に向けて塾生が作ってきたネタを披露し駄目を出され、成績がよかった人はライブに出場できるという感じです。

渋谷には109やらPARCOやら、買い物するのにもってこいの有名デパートばかりありました。その中でもしょっちゅう行っていたのが東急百貨店です。なぜ駆け出しのお笑い芸人が金持ちマダムの行きそうな高級デパートに行っていたかというと、目的は買い物ではありません、当時ここは、屋上に遊園地がありました。

毎週月曜日になると決まって東急百貨店東横店の、東館の屋上に行く。その理由は自主稽古するためでした。ベンチに座り、乗り物にまたがる子供たちの笑顔を見ながら「私も人を笑顔にしたい」と思い、ぶつぶつと念仏のようにネタを練習したものです。コンビであればネタの練習してるんだな、とはたから見てもわかるのでしょうが、私はピン芸人という一人でやるスタイルだったので「大きい声で独り言を言っている危険人物」と見なされ親御さんが子供を連れて帰ってしまう、という光景をよく目にしました。

東急東横店の屋上遊園地は、東館の閉館とともに無くなってしまったそうです。ここ最近では屋上遊園地がどんどんつぶれていっているらしく、それは年々、子供が寄り付かなくなっていったからだそうです。今考えると、東急の屋上に子供が来なくなっていった原因は私だったのかもしれません。


鳥居みゆきの一人芝居ネタは、渋谷の東急東横店の東館屋上で練り上げられていたのだということを知る。

近所の公園などで二人組が漫才の練習をしている光景にはよく出くわすが、たしかにピン芸人の練習はあまり見たことがない。確かに独りで大きい声で練習などしていたら不審者に思われても不思議ではない。おまけに当時の鳥居みゆきのような若い女性のそんな様子を見たら、ほろ酔い加減のサラリーマン集団なら喜んで眺めながら囃し立てたりなどするかもしれないが、子ども連れの親が連れ帰ってしまうのはやむを得ない。

確か時期、僕も東急東横店あたりでよくブラブラしていたので、これも一つの縁かもしれないとひっそりと感じることにした。
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