PURPLE RAIN ORIGINAL

2020/11/17 | 投稿者: pdo

『プリンス回顧録』には、1982年頃にプリンスが書いた映画『パープル・レイン』の手書き草稿が載っている。

『1999』がヒットしていた頃で、その時点ではまだ「パープル・レイン」という曲はできていなかった。

この草稿に書かれたストーリーは、完成した映画にかなり近いものだが、映画よりもずっとダークで、設定も若干異なっている。

草稿の中で、彼がサウンドトラックに想定していたのは、次の曲たちだ。

Baby I'm a STAR
I would die for U
Moonbeam Levels
I can't stop this feeling I got
Too tough
Wouldn't U love to love me
I just wanna be rich
Bold Generation


これは「3人の夢と野心の物語」であるとプリンスは冒頭に書いている。

一人目の登場人物は、モーリス・デイ。容姿端麗でクールな22歳。音楽、金、女性を愛し、この3つの悪習の中で、ゲットーにはまりこみ、抜け出せずにいる。

二人目は、裕福な家庭の出身で、非常に魅力的な女性、17歳のヴァニティ。あまりに美しく、裕福で、潔癖なために、周囲の仲間に溶け込めずにいる。どこに引っ越しても、見せかけだけの「RICH BITCH」だと思われているが、「心根は愛情深い人物である。誰も彼女を手なずける辛抱強さを持っていないだけなのだ。」

三人目の登場人物は、プリンス―この物語の主役だ。彼は幼くして両親と死別した。彼が6歳か7歳の頃、彼の目の前で母が父を射殺し、自分も銃で命を絶ったのだ。この出来事は、彼の中で時折フラッシュ・バックし、狂気じみた行動を取らせる。彼は3人の医師から統合失調症と診断されている。

プリンスはステージの上でしばしば錯乱状態に陥り、バンドを動揺させる。それが演技なのか計算なのかは誰にも分らない。プリンスは成功を渇望している。名声と富を手に入れたいと思っていると同時に、音楽を通じて人々を助けたいと思っている。彼は何よりもまず、生きている間に何か価値のあることをしたいと思っていた。「つまり、神から点数を稼ぎたいのだろう。(Scoring points with God I guess.)」

この映画は、3人の登場人物が、人生の現実に直面する時期を描いている。

「何か欲しいものがあるなら、つかみ取りに行け! 寝ているだけの者には、夢しかやって来ない。(If there's something out there that U want--Go for it! Nothing comes to sleepers but dreams.)」

映画の基本的な筋書きは、プリンスのバンド(プリンス・アンド・ザ・レヴォリューション)とモーリス・デイのバンド(ザ・タイム)のバンド合戦と、ヴァニティを巡るプリンスとモーリス・デイの駆け引きだ。

クライマックスのバンド合戦では、ザ・タイムが勝利するが、これはプリンスがステージで錯乱状態に陥ったためだ。しかしヴァニティはプリンスのもとに駆け寄り、二人は結ばれる。

ラストはピストル自殺しようとしたプリンスが発砲音と共に目を覚ますという夢落ち。


このオリジナルストーリーのままでは、『パープル・レイン』の大ヒットはなかっただろう。完成された映画の方がはるかに洗練されており、大衆受けの良いものになっている。

草稿からは、プリンスが両親と自分との関係をいかに重要視していたかが伝わってくる。

優れたミュージシャンで、頑固者だが、信心深く、怒ると妻(プリンスの母)に暴力を振るう父親。

享楽的で、パーティーや派手な振舞いを好み、酒とセックスに溺れる母親。

両親はプリンスが幼い頃に離婚したが、プリンスは父と母を同じくらい愛していた。

両親との問題は死の直前まで彼の心を捕らえていた。2016年4月17日、亡くなる4日前に、自伝の共著者ダイ・パイペンブリングの携帯に真夜中に連絡してきたプリンスは、「細胞記憶と親の因果の関係」についてダンに詳しく語って聞かせた。

自分の血の中を流れる父と母の矛盾した性質の葛藤を眺めることが、生きるジレンマの一つだ、とプリンスは語った。

草稿の中では、プリンスはフラッシュバックによって精神錯乱に陥ると、父親と母親の両方の人格が乗り移ったようになり、回想シーンではプリンス自身が父と母の二人を演じることになっている。

80年代の後半にプリンスと付き合っていた女性の一人であるデビン・デバスケスは、回顧録の中で、プリンスは父親を愛していて、父のことについてたくさん話してくれたが、母親については何も言わなかったと書いている。

未完に終わった自伝の中では、プリンスは母に焦点を当てる予定だった。自伝の書き出しは、プリンスが生まれて初めて目にしたのが母のまなざしだったことについての記述から始まっている。

映画の草稿では、フラッシュバックの最中、プリンスは自分とヴァニティを自分の父と母だと思い込むという設定になっている。

彼がこれを書いたときに映画の相手役として心に描いていたのがヴァニティだったことは明らかだが、プリンスとヴァニティは別れ、結局、アポロニアが相手役を演じることになった。

デビン・デバスケスは回顧録の中で、ヴァニティとプリンスは瓜二つの人格だったと書いている。ヴァニティが2016年2月15日(ちょうどプリンスが亡くなる2か月前)に亡くなったとき、プリンスは「ピアノ・アンド・ア・マイクロフォン」の公演中に彼女を追悼している。

ヴァニティは90年代に腎臓病で余命3日を宣告されたが、イエス・キリストのビジョンを見て救済されたと信じるようになって以来、熱心なキリスト教伝道者として生涯の最後の20年余りを送った。

プリンスが2016年4月のアトランタ公演のときにジュディス・ヒルに「最近は死んだ友人たちと夢の中で会っている」と語ったのは、ヴァニティのことだったかもしれない。
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