Demons

2019/9/15 | 投稿者: pdo

『悪霊』読了。

これも30年ぶりの再読だが、やはり当時と印象がだいぶ違う。

今回は、ステパン・トロフィーモヴィチ・ヴェルホーヴェンスキーの最期のくだりが涙なしでは読めなかった。

加賀乙彦という作家の『小説家が読むドストエフスキー』という本(集英社新書)を読んで、ストーリーについての事実誤認が多いのに驚く。

ステパン先生が53歳と書いてあるが、亡くなったのはもっと後だし、スタヴローギンがシャートフ殺害の黒幕というのも違うし、「スタヴローギンの告白」は初版ではなかったのが復刻されたのではなく、ドストエフスキーの死後何十年も経ってから出てきたものだし、それ以外にも「悪霊」について嘘ばかり書いてある。

こういう本が偉そうに入門書として出回っているのは嘆かわしいことだし、こういう作家はカルマジーノフと同類ではないのかと思う。

清水正の『「悪霊」論』では、ピョートルが二重スパイだと分析していて、それはなるほどと思った。

ドストエフスキーの真意はともかくとして、確かにそうも読めるし、そういうふうに読めば、完全に20世紀の左翼運動(新左翼も含めて)の奥の奥まで予言し切っている。

もちろん予言していたから凄いのではない。芸術作品として凄いのである。

キリーロフという人物は、20世紀のカルト宗教の信者を彷彿とさせる。

シャートフとキリーロフが両者の死の前夜に交わす会話がグッと来て仕方がない。

このタイミングで二人を死なせる(しかもあんなに惨たらしく)作者の手腕に戦慄する。

スタヴローギンの吐くセリフで一番いいのは、
「問題は、とにかく生きるのが死ぬほど退屈なことだった」という「告白」の一節だが、今回読んだ米川正夫の翻訳ではちょっとそこがボケているのが残念。

ワルワーラ夫人のその後が気になる。
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