ミステリー・トレイン

2019/7/16 | 投稿者: pdo

実家に戻ったついでに、高校生のときに読んだグリール・マーカス著『ミステリー・トレイン』を読み返してみた。

この本と、デイブ・マーシュ著『明日なき暴走』の2冊は、高校時代のバイブルだった。

『ミステリー・トレイン』という書名は、エルヴィス・プレスリーがデビュー前に吹き込んだレコードの曲のタイトルから取っている。

プレスリーの最高のパフォーマンスは、1968年のテレビ番組『ELVIS』における、カムバック・ステージであるとグリール・マーカスも断言している。

1956年に鮮烈なデビューを飾って世界の大衆音楽の歴史を一新した後、徴兵によるブランクがあり、生ぬるい映画出演が続き、ジョン・レノンには直接会った時に馬鹿にされ、もう終わった存在と思われていたプレスリーが、一か八かの賭けに出たのが、このテレビ出演だった。

33歳のエルヴィス。ここで「キング」にふさわしい存在感とインパクトを示さなければ、本当に終わる。

しかしそんな焦りはおくびにも出さず、気心の知れた仲間たちとギター・セッションに興じる体で番組は始まる。だが、マイク・スタンドに伸ばした彼の右腕は緊張のため微かに震えていた。

かつて一世を風靡したロックンロール・ナンバーをアコースティックな伴奏で座ったまま披露する。エルヴィスは最大の武器であった「腰の動き」を封印したままだ。が、彼のボーカルだけでもやはりただ事ではない。観客は震え熱狂する。

演奏は徐々に熱を帯びていき、遂に『ブルー・クリスマス』からの『ワン・ナイト』でクライマックスに達する。

このときエルヴィスは初めて立ち上がり、ギターのストラップを要求する。でもストラップは見当たらない。

彼はギターを置いて、立ち上がって獅子のように熱唱する。そこには他の誰も匹敵することのできない「キング・オブ・ロックンロール」がいた。

このときのプレスリーの前では、ジョン・レノンもただのションベン小僧にすぎない。

そんな存在は、この宇宙広しといえども、エルヴィス・プレスリーしかいない。

グリール・マーカスはこう言っている。

「彼の音楽の歴史上最高の作品だ。もし血を流す音楽があるとするなら間違いなくそれはこの作品のことである」

マーカスが『ミステリー・トレイン』の核心部分で言及しているこの夜のパフォーマンスだけで優に一冊の本が書けるだろう。

瞬間視聴率は70%を超えた。

これ以後、完全復活したエルヴィスはラスヴェガスで1000回以上の公演をこなすようになる。

だが、彼のパフォーマンスの頂点は、疑いなくこの1968年12月3日の『ELVIS』、そして彼が立ち上がって歌った『ワン・ナイト』だった。

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この歌には二つ歌詞がある。

エルヴィスがレコーディングしたのは、原曲のきわどい歌詞をマイルドに変えたものだ。

しかし、この夜、彼は、ヤバい方のヴァージョンを歌ったのである。

マイルドな歌詞はこうだ。

One night with you
Is what I'm now praying for
The things that we two could plan
Would make my dreams come true

Just call my name
And I'll be right by your side
I want your sweet helping hand
My loves too strong to hide

Always lived, very quiet life
I ain't never did no wrong
Now I know that life without you
Has been too lonely too long

One night with you
Is what I'm now praying for
The things that we two could plan
Would make my dreams come true


そしてヤバい方の歌詞はこれだ。

One night of sin, yeah
Is what I'm now paying for
The things I did and I saw
Would make the earth stand still

Don't call my name
It makes me feel so ashamed
I lost my sweet helping hand
I got myself to blame

Always lived, very quiet life
Ain't never did no wrong
But now I know that very quiet life
Has cost me nothing but harm

One night of sin, yeah
Is what I'm now paying for
The things I did and I saw
Would make the earth stand still


お分かりいただけただろうか。

同じ曲でありながら、まったく違う内容になっていることを…


蛇足ながら説明すると、マイルドな方のやつは、

「君と一緒に過ごす夜(One night WITH YOU)を僕は祈って(PRAYING)いるよ

 僕の名前を呼んでおくれ、そばに飛んでいくから

 ずっと大人しく生きて来たけれど

 君無しの人生は長すぎることに気づいたのさ」


てな調子のラブソングだが(これでも当時(エルヴィスがこの曲を出した50年代)はけっこうきわどい歌詞と言われただろう)、ヤバい方のやつは、

「罪の一夜(One night OF SIN)のために

 俺は今その報いを受けている(PAYING)

 俺が見てしまったこと、してしまったことは

 この地球の動きを止めてしまうだろう

 俺の名前を呼ぶのは恥ずかしいから止めてくれ

 ずっと悪いことをせずに大人しく生きてきたが

 そんな生活には害しかないことに気づいたのさ」


という当時の歌詞としては最大級に過激な内容となっているのである。

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