2009/11/29

「インセンティブ」  

・インセンティブ 自分と世界をうまく動かす
著者:タイラー・コーエン 訳:高遠裕子
出版:日経BP社

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読み始めたころは、「他人に対して影響を与える」「外部から無意識に影響されないようにする」ようなことに関する法則やルールのようなものを読み取ろうとしていた。
でもそんなスタンスで読み進めると、何だか整理されてないようで、イライラて来ちゃうんだよね。
で、方針をガラッと変えて、挙げられているエピソードや考え方などを、「読み物」風に気楽に読んでいくことにしたら、ドンピシャリ。
非常に楽しく読むことができた。
まあそんな読み方がいいのかどうかは、判断できないけどさ(笑)。

印象としては「ヤバい経済学」に近いかなぁ。
経済学の理論・考え方を使って、日常的な「常識」を揺らがせる、という。
その中核となるのが「インセンティブ」という考え方で、作者は「内なるエコノミスト」という言葉で、我々の中にある「インセンティブ」の働きを印象付けてくれている。
(「インセンティブ」というのは経済的なもの(要は「おカネ」)には限らない。
そこには自尊心や虚栄心、自己愛なども含まれており、そのため、作者が挙げる例は単なる「損得」にはおさまらない事象が多く含まれる。
そういう観点からは従来の「経済学」とは意見を異にしているかもしれないが、「インセンティブ」が決定的要素を持つという構図を考えると、
「これは従来の考え方を、視点を変えてみただけで、構図そのものには変わりがない」
という見方もできると思う)

「自己愛」や「自己欺瞞」「シグナル」などをテーマにしたあたりは、結構「ふむふむ」と思いながら読むことができた。
思い当たることも少なくないし、参考にもできるなぁ・・・なんて感じながら。

でも「慈善活動」や「寄付」のことを論じたあたりは、なんだか座り具合が悪くなるような気分にさせられる。
「いや、確かにそうかもしれないけど、そこまでクールに分析せんでも・・・」
ベンガル人の乞食に施しをしたり、国民皆保険に向けたアメリカの取り組みについては、もちろん色々な意見はあろうが、基本的には「善」なる行為と思いたい。
・・・とは言え、本書の指摘を否定することも・・・。

と言う訳で、若干居心地の悪くなるこの後半の部分が、本書の最も価値ある部分かと。
(「マイクロ・クレジット」に期待している旨が書かれていて、ちょっとホッとした。すべての今の取り組みが空しいわけではないのだ、と)

こっから理論や法則を読み取って、副題の通り「自分と世界をうまく動かす」方法を手に入れる人もいるのかもしれない。
でも僕にとっては、この副題は「誤解を招く」。
僕が本書で読み取った「法則」は、
「人間は非常に複雑で多様性に満ちているので、何かを行う『動機』を考えるときは、慎重に広範囲まで思い巡らせる必要がある」
ってもの。
要は「簡単な法則はない」ってことやね(笑)。

気軽なエッセイとして楽しむのがいいんじゃない?

ってのが僕のオススメです。



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