2009/5/10

のぼうの城  

著者:和田竜
出版:小学館

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直木賞にノミネートされたり、「本屋さん大賞」を獲得したりで評判の時代小説。
秀吉の小田原攻略の際、石田三成率いる大軍に攻められながら、遂に最後まで落城しなかった忍城の攻防を描いている。

評判になるだけあって、確かに面白い。
籠城が決まるまでの前半でキャラ紹介を行い、後半の攻城戦では、一癖二癖あるキャラたちがそれぞれ並外れた活躍をするシーンを経て、主人公の「のぼう様」成田長親の「将器」を見せる。
攻め手の三成サイドの描写も上手く対比されており、シャープにまとまった作品イメージがある。

まあ難を言えば、
「なぜ、これほど『のぼう様』が領民に慕われたのか」
ここがチョット分からないってことかな?
それなりのエピソードはあるんだけど、それだけでは納得しきれないという感じ。
自らを死兵に追いやるほど傾倒してたっつうんだからね。
ここはもうちょっと深めて欲しかった。
(ただそうすると作品のスピード感は減っちゃったかもしれないな)

「将器」と言う点では、確か司馬遼太郎が「薩摩」での気風について、
「上に立つものは、茫洋として、鋭さを見せず、ただ担がれるのみで、責任だけを取る」
みたいなことを書いてた記憶がある。
その典型が「西郷隆盛」というわけだ。
西郷自身、若い頃は驚くほどの「鋭さ」を持ってたんだけど(「策謀家」と言ってもいい)、晩年に向けてこういう「あり方」に自らを変じていった風がある。
まあそのことが「西郷隆盛」と言う人物の「分からなさ」にも通じてるんだけど。

「でくのぼう」と呼ばれた「のぼう様」成田長親も、言ってみればこうした「将器」。
「鋭さ」がその茫洋さの裏にあったのかどうか。
最後の「策」にその一端をうかがわせるが、決定的なことは語られない。
「そこがいい」っちゃあ、確かにそうなんだがね。

映像化の話があるようだけど、キャラが立ってるだけに、「向いてる」とは思う。
ただこの主人公の得体の知れなさを出すのは、ちょっと難しいかもしれんけどね(笑)。



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