2009/3/9

利休にたずねよ  

著者:山本兼一
出版:PHP研究所
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今期直木賞受賞作。
もう一つの受賞作「悼む人」が題材的に「意欲作」だったのに比べて、本作は「利休」を取り上げる歴史小説で、題材としてはオーソドックス。
ただ作品としては、「利休の切腹」から、利休が自らの茶道に「秘密」を抱えるに至る若き日の「事件」までを、それぞれが「短編」のような二十数編のエピソードを、時間を遡って配置するスタイルで描いてて、手法としてはナカナカ意欲的な作品といえるんじゃないかな。
読む前は
「なぜ利休が秀吉から死を賜ったか」
について物語る作品かと思ってたんだけど、そこら辺は深く詮索せず、利休の「茶道」の中にある艶っぽさ・生命力の源に何があるのかをテーマとしている。
それを過去の事件を契機とするものとして、利休の端倪すべき美に対する執着・鑑識眼を示すエピソードを辿りながら探る形式となっているわけだ。

凄く面白かったし、「茶道」の持つ「力」というものを再認識させてくれるのも興味深いんだけど、
「さてこの手法が上手くはまってるか?」
と言われると、ちょっと「?」かもしれない。
結局のところ行き着くところは「女」「恋」なんだけど(笑)、それがこういうスタイルの仕掛けに組み込まれるために、ちょっと「軽く」見えちゃう感じがするんだよなぁ。
むしろ時系列で並べていくことで、「利休」の中で「女」がどのような意味合いを深めて行ったか、そのなかで美への執着がどのように絡んでいったのか、そういう描き方をしたほうが作品としての「深み」は感じられたんじゃないかと。
その女性がどれほど稀有な存在であったとしても、それを孤高の美学にまで高めていったのは、やはり利休自身なんだろうからね。
書き込まれたエピソードの完成度が高いだけに、ちょっと惜しい感じがする。

もっともそういう普通の構成だと「直木賞」をとれたかどうかはワカンナイか(笑)。



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