2007/4/25

浮沈  

著者:池波正太郎
出版:新潮文庫

「剣客商売」シリーズ最終巻。
「とうとうここまで来たナァ」「もう終わっちゃうのかぁ」という感慨を覚えながら読み終えた。

シリーズ最終巻に相応しい作品になっていると思う。
作品の中では秋山小兵衛を始め、小兵衛より先に死亡する登場人物たちの死について触れられ(大治郎、三冬、小太郎の死について記述がないのは、彼らが小兵衛より長生きしたからだろう。40歳年下の妻おはるが小兵衛より先に死亡するのは意外。まあ小兵衛絵が「93歳」まで生きたゆえではあろうが)、物語としても20数年前の「因縁」から、かかわる人々の「時の流れ」による変貌を語りつつ、人の複雑さをも垣間見せながら、人情に触れる決着を見る。
果たして作者が「コレが最後」とどこまで思い定めていたのかは、僕は知らない。ただ「最後になってもいい」とは思っていたんじゃないかと思う。
そう思わせる作品だ。

勿論、ここでシリーズが終わることは残念だ。
関係の深い田沼時代が終わり、新しい時代を秋山ファミリーがどう生きて行ったのか読んでみたい。
小兵衛の死の時には30前後の小太郎がどんな成長を見せるのか、そこに小兵衛・大治郎が祖父・父としてどのように影響を与えていくのか、興味深いところだ。
小兵衛より先に死ぬおはるの最期も果たしてどのようなものであったのか・・・。
それら全てが最早語られることはない。寂しいと思わずにはいられない。

ただシリーズを読んでいく中で、秋山小兵衛をめぐる「世界観」というのは僕の中で確固と出来あがっている。僕にとって彼らは「確かに江戸時代に生きた人物」のように捉えられ、その息遣いは隣人よりも存在感を以って胸に迫ってくる。
確かに「続き」が語られることはない。しかし「思い出」のようなものは残っている。
小説に対してこんな風な感覚を持つというのは不思議なことだ。
だがそこに「剣客商売」という稀有な作品の特徴があるのではないかと思う。

シリーズは読み終えたけど、まだ番外編がある。
こうなるとそっちも読まんわけにはいかんなぁ。



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