2007/4/15

暗殺者、二十番斬り  

著者:池波正太郎
出版:新潮文庫

「だが、『剣客商売』のシリーズもまもなく終わろうとしている。あと一冊を残すだけである」
「二十番斬り」の解説(常盤新平)の締めの一節。「父の付き添い」をキッカケに再読し始めたこのシリーズ、父の退院後も止まらなくなってしまい、とうとうココまで来てしまった。

前作「波紋」は短編連作であったが、以降この2作及び最終作は、それぞれ長編になっている(厳密には「二十番斬り」には「おたま」という短編が収録されてはいるが)。
「池波正太郎」自身は短編作家ではない。
「真田太平記」という大長編も書いているし、「おとこの秘図」「おれの足音」「雲霧仁左衛門」「編笠十兵衛」等々、読み応えのある長編も多く残している。
ただ「剣客商売」「鬼平犯科帳」「仕掛人梅安」の3シリーズ、ことにこの「剣客商売」には「短編」が相応しいと思う。

勿論、シリーズの長編の出来が悪い訳じゃない。
闇の世界に足を突っ込んでいる剣客との関わりを描いた「暗殺者」、老いを感じながらも超人的な立ち回りを見せる秋山小兵衛を描く「二十番斬り」、
この2作の長編にしても、出来・面白さともに水準以上のものがある。
しかし、それでも・・・という思いがあるのだ。

これらの作品が書かれたのは作者の死の5年から3年前。
池波正太郎は67歳で、急性白血病で亡くなっているから、その「死」は本人にとっても予想外のものだったのではないかとも思う。
一方でこのシリーズの「連作短編」形式を断念し、長編連載としたことには、あるいは「疲れ」のようなものがあったのかもしれない。作品の中に秋山小兵衛の「老い」や、死生観を感じさせる記述が多くなっているのも、その反映かもなどと思ったりもする。
(まあ、数年後に作者が死去してことを知っているからこそ、そんな風に読んじゃうのかもしれんがね)
そして再読となった今回は、そうした作品の「陰影」の部分が胸にこたえるような気がしているのだ。

いずれにせよ残りは「浮沈」一冊。
ゆっくりと読ませてもらおう。



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