2007/4/12

「法令遵守」が日本を滅ぼす  

著者:郷原信郎
出版:新潮新書
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扇情的な題名だが、中身はかなりマトモ。
「コンプライアンス」「法令遵守」に振り回されるサラリーマンの溜飲を下げるためのキワモノ本かとも思っていたのだが(にもかかわらず買っちゃったのは、僕も弱ってたたから?(笑))、全くそういう類の本ではなかった。

「日本の『法令』は、その成立背景となる社会的要請と乖離している部分がある。今まではそれを行政指導や社会的慣行、マーケットの特殊性等が埋めていたのだが、規制緩和・官民の隔離等の社会情勢変化の中で、そうした緩衝機能が否定されるようになってしまった。本来その段階で『法令』と社会的要請の乖離を埋めるべく、『法令』の手直しを行うべきなのだが、それをしないままに『法令遵守』『コンプライアンス』が叫ばれるようになったため、社会的な実情を反映しない『法令』の遵守が『社会正義』のように言われるようになってしまい、結果として社会的にマイナスの影響を及ぼすまでになっている」

僕なりに本書の主張をまとめるとこんな感じかな?ま、例によって「誤読」の可能性は十分にあるが(笑)。
また、こうした風潮を助長しているのが「官民交流」を倫理規定で断たれ、観念化が強化されている「官」と、「善玉」「悪玉」を決め付ける基準として「法令」を利用し、単純化した報道を繰り返す「マスコミ」であるというのも、なかなか卓見だと思う。

まあ「談合」「ライブドア/村上ファンド事件」「耐震強度偽装事件」「パロマ事件」などが取り上げられ、「法令遵守」が如何にこれらの事件の裏にある「社会的要請」を歪めてしまったかということが懇切丁寧に書かれているのだが、チャンと読まない御仁が、「作者はこうした行為を擁護している」というトンデモナイ非難をしちゃう可能性はあるかな。(そこまで「誤読」するヤツはいないか(笑))

結局のところ「コンプライアンス」というのは「法令遵守」ではなく、「法令」を支える「社会的要請」に応えること、という当たり前といえば当たり前のことが語られているわけだ。(「法令」が常に社会的要請から修正されるアメリカのような国なら「法令遵守」で問題ないのだが、日本の場合はそういう訳にはいかないということ)
でもその当たり前のことがナカナカ・・・。

日常の自分の業務姿勢を反省させられる部分もありますな。

2007/4/12

大帝の剣1・2・3  

著者:夢枕獏
出版:角川文庫(1・2巻)、エンターブレイン(3巻)
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本作の第一部(文庫第一巻の前半)をノベルズで読んだのは、もう20年も前になる。
「これは面白い」
一読しての感想。
当時、僕は「夢枕獏」に対しては、「物語を終わらせることが出来ない作家」というイメージを持っており、若干批判的だったのだが、本作の魅力は認めざるを得なかったわけだ。
ただ第一部だけで「これは長い話になりそうだな」とも思ったし、イメージを重視して擬音や改行を多用する夢枕獏のスタイルだと、一冊や二冊では大して物語が展開しないだろうとも思った。
で、当時、「この作品は何巻かまとまってから読むことにしよう」と思い、新刊が出ても手を出さないようにしていたのである。

で、20年。
正直忘れてもいたのだが(笑)、映画化を契機に再刊され、書店に並んでいるのを見て、かつての興奮を思い出し、まとめ読みしようと思って、今回購入してみた。
トコロが、何てこったい。
20年も経って、話はまだ「第六部」までしか書かれていないとは。
「あとがき」によれば、どうも途中で「15年」もの中断期間があったらしい。今回の再刊では、3巻目の後半「第六部」が中断後に(昨年)連載されたものということになる。
これからトントントンと続きが出るのかと思っていたのだが、とりあえずここで一旦停まり、このペースだと「第七部」は来年か再来年、以降、1・2年に一冊と言う「夢枕」ペースになりそうだ。

万源四郎という主人公を巡って、天草四郎、宮本武蔵、柳生十兵衛、佐々木小次郎、真田幸村、猿飛佐助(作中では「申」)、霧隠才蔵(同じく「霧の才蔵」)らが入り乱れる物語。
本作は明らかに山田風太郎の「魔界転生」を意識して書かれている。ただ傑作伝奇小説に挑戦するだけあって、力が入っているのも確かだ。「魔界転生」に比べ、「SF」色を取り入れているところが特色だと思うが、そのことによって「魔界転生」の「妖しさ」は減じたものの、アクション性は高まっていると思う。
最終的にこの「挑戦」の成果がどうなるか。
今の段階では評価を下すには早すぎるが、今のところ十分に期待できると言ってもいいのではないかと思う。

まあ、20年前と違って、「夢枕獏」が「物語を終わらせる意志を強く持った作家(ただし話は長くなり勝ち)」というのは分かったからね。いくつかの作品はキッチリ完結させたし、「餓狼伝」「新・魔獣狩り」も、予告よりは長くなっているが、「終わらせよう」という努力は見えるから。
そういう観点からは本作も終わらせる意志はあるのだろう。「空を飛ぶアイテム」を出してきて、日本脱出の方策は提示しているようだから、案外「日本脱出後」の展開は速いのかもしれない。
ただまだ「日本」国内でのドタバタは続きそうだからナァ。
まあ、気長にお付き合いするしかないか。
そういう気分である。



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