2006/7/22

出口のない海  

著者:横山秀夫
出版:講談社文庫
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作者が苦労してた時代にマンガ原作として書いたものを、小説に仕立て直した作品らしい。まあそれにしても、マンガにしては内容が暗い・・・(笑)。
よく調査されているし、ストーリーも面白く、感動もできる内容になっている(映画化されるくらいだから)。ただ作者の他の作品に比べると、個人的には一歩劣る印象だ。

一番のポイントは「視点」だろう。僕が読んだ横山作品の多くは「三人称」で書かれているが、そうでありながらも物語の「視点」(誰の立場に沿ってストーリーが展開するか、ということ)には相当計算されたものを感じることが多かった。連作短編が多い警察ものもそうだし、「半落ち」なんかはそこに作品の妙味があると言ってもいい。

それがこの作品では今ひとつなんだよね。
導入部で主人公のことを謎めいた人物として挙げておきながら、本編に入るといきなりその主人公の心情をあからさまにした展開となり、終盤再び主人公の心情が伏せられ(遺書でのみ明らかとなる)、エピローグとなる。
他の作者の作品を知るだけに、この構成の「揺らぎ」はすごく気になった。元がマンガ原作だけに仕方がない部分はあったのだろうが、題材が面白いだけに惜しい気がする(例えば「半落ち」のように、主人公に接した人物の視点を通して、主人公の心情が明らかになるような構成にすれば、もっと引き立った作品になったと思う)。

ま、楽しんだんだから、どーのこーの言わなくてもいいんだけどね(笑)。

2006/7/22

美しい国へ  

著者:安倍晋三
出版:文春新書

ここ数日の報道によると、福田氏の総裁選出馬がなくなり、ポスト小泉は安倍氏の独走状態に・・・ということのようだが、まあ政治は「一寸先は闇」だからね。ただ安倍晋三が今の日本の政治家の中で重要なポジションを占めていることは確かだろう。

本書はそういうタイミングで出版されたミエミエの一冊(笑)。「マニフェスト」と言うには具体的な詰めの部分が今ひとつだが、思ったよりは結構具体的なことにも触れられていて面白かった。「映画」や「小説」等を引き合いに出すケースも多く、読みやすい構成にもなっている。(ちょっと媚びてる感もあるが)

個人的には「安倍晋三」については「顔と姿勢が今ひとつ」というところなのだが(笑)、大筋では同意できる部分が多かったのは意外の感があった。
ただ「米国のイラク侵攻際して、『大量破壊兵器』を根拠としたことに対する評価」「イラク戦争の際の民間人拉致に関する『自己責任発言』」「中国の反日運動や、韓国の反日的な動向」等について、コメントがなかったり、あまり触れてなかったりするのはどうかな。
また「靖国神社参拝問題」については、戦争指導者と戦死者を微妙に混同して論じたりして、正面から応えていないのも気になった。祖父である岸信介の評価についても、この点はコメントすべきだと思うんだがね。

本書の発売日に、A級戦犯合祀に関する昭和天皇の発言メモが公表された。ある程度は知られていた内容とは言え、このタイミングでの発表には何か裏があるのかな、などとも思ったりした。
いずれにせよ、この戦後を何らかの形で捉えなおす作業が求められているということか?

2006/7/22

緋色の研究  

著者:アーサー・コナン・ドイル、日暮雅通・訳
出版:光文社文庫
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シャーロック・ホームズの記念すべき初登場作。
長編なんだが、ホームズの長編のパターンとして、2部構成になっていて、1部が事件の経過、2部がその背景となる(歴史冒険小説風の)ドラマとなっている。
でもこの「2部」が苦痛なんだよね(笑)。論理と科学を主とするホームズのドラマはあまり風化していないのだが(とは言え、印象ほど「科学的」でも「論理的」でもないんだが)、「歴史冒険小説」の方はスッカリ古臭くなっちゃってるんだよ。
まああまり厚い作品ではない(文庫で200ページ余り)ので、何とか読み通したがね。(本作の発表は1879年。この時代にはアメリカ合衆国は「後進国」だったのが良くわかる。「2部」はその「野蛮な国・アメリカ」が舞台だから。でもここで描かれてる「モルモン教」ってどの程度史実に基づいているんかね?「一夫多妻制」やら「復讐の天使たち」やら・・・。「モルモン教」っちゅうと、お恥ずかしながら、「ケント・デリカット」のイメージしかないモンで)

ところで本書の題名の由来は、
「人生という無色の糸の束には、殺人という緋色の糸が一本混じっ
ている。」
というホームズの台詞から出ている。スッカリ忘れてたけど。



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