2006/6/7

夏服を着た女たち  

著者:アーウィン・ショー 訳:常盤新平
出版:講談社文芸文庫
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「都会的」「洗練」ということになると、アーウィン・ショーの短編を思い出す。
華やかだが影もあるニューヨーク、センチメンタルだが抑制の効いた振る舞いをする登場人物、ユーモアに溢れながら含蓄もある会話、そして何といっても鮮やかな印象を残して街を闊歩する女たち…
読み返すと、自分が如何にこの短編たちに魅了され、影響されてきたかがわかる。
まあ、その割りに僕自身は「洗練」とは程遠いのではあるが(笑)。(「憧れ」ってぇのはそういうものかな?)

今回読んで思ったのは、確かに女性が印象的な作品が多いのだが、一貫して視線は「男目線」なんだな、と言うこと。そしてその男たちには比較的共通する部分が多く、それが作者自身の投影だと推測されることから、ショーの短編と言うのは極めて「個人的」な意味合いが強いと言えるのかもしれない。
ただそれが日本の「私小説」みたいな方向には行かないんだよな。文体自身がシャープで、ストーリーそのものはセンチメンタルなんだけど、決してジメジメした感じにならないところが素晴しい。(ただこれは短編だからバランスが取れているのかもしれない。ベストセラーになったショーの長編もいくつか読んだけど、これはちょっと感傷的過ぎる感じがした)

僕自身が「理想的な女性」を想定するとき、間違いなくショーの描く女性像が影響している。ただそれはあくまでも「男目線」の女性像であり、そういう意味ではかなり「時代遅れ」でもあるのかもしれない。

「キャロルはつと身体を寄せて、私の頬にキスをすると、若々しい、繊細な、美しい足どりで通りを横切っていった。素敵なスーツにやわらかな毛皮のコートを着て、生き生きとした金髪を輝かせながら。まるでこの街の征服に出かけるかのようだった。」

薬師丸ひろ子の「Wの悲劇」の盗作騒ぎのモトねたになった「愁いを含んで、ほのかに甘く」のラスト。
好きなんだよね、こういうのが(笑)。

ところで、結婚する前、僕は「自分が好きな本」としてこの作品集を妻に貸したことがある。妻からは「まあまあ面白かった」という感想をもらったけど、よく考えると、これを結婚「前」に見せるなんて、結構度胸のあるなと今回思った(笑)。
何たって、表題作は結婚生活の破綻の予感を描いた作品だからね!
平然とそれを読んで感想を言った妻の方が度胸があるのかもしれないが。



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