紀元前108年、朝鮮半島を含む大帝国を領有した古朝鮮国は、隣国・漢により滅亡。漢はその地に、楽浪(ナンナン)・臨屯(イムドゥン)・真番(チンボン)・玄菟(ヒョント)の四郡を置き支配するが、将軍・ヘモスとその友人で玄菟(ヒョント)郡に属する扶余(プヨ)の太子・クムワは、圧政に苦しむ古朝鮮の流民(ルミン)<流浪の民>を率いてタムル軍を編成、漢に抵抗する。だが扶余(プヨ)では、ヘモスの活躍の裏で、その存在が漢の反感を買い、国の災いとなることを懸念する者たちがいた。
ある日、玄菟(ヒョント)城で開かれた宴席で見世物として流民たちが虐殺されるのを目にしたクムワは、これに1人抗議した河泊(ハベク)族の君長の娘・ユファに心惹かれる。一方、漢軍との闘いで重傷を負ったヘモスは、瀕死のところをユファに救われる。やがて2人は恋に落ち、ユファはヘモスの子を身ごもるが、それを知る間もなく、ヘモスは漢軍の矢に倒れてしまう。愛する人を失った悲しみの中、ユファはクムワに援助され、男児を出産、チュモンと名付ける。ユファを心密かに想うクムワは彼女を側室に迎えると、友の忘れ形見・チュモンを我が子として育てることを誓う。
20年後。扶余の王となったクムワの三男として育ったチュモンは、長兄テソや次男ヨンポに比べ、意気地が無く軟弱なため、ユファやクムワを失望させてばかり。にもかかわらず父の寵愛を一身に受けるチュモンを、クムワの正妻や2人の兄たちは憎々しく感じ、チュモン殺害の計略を企てていた。ある日、チュモンは兄たちの罠で泥沼にはまり、偶然通りかかった大商団の長の娘ソソノに助けられる。口ばかりの情けない男に呆れながら、なぜかチュモンのことが心に残るソソノ。そして、チュモンは兄たちの様々な策略の末、ついに宮中を追放されてしまう。山中の牢獄で謎の盲目の男に出会ったチュモンは、彼が実父ヘモスであるとも知らず、武芸を学び、強靭に生まれ変わっていく。
チュモン(朱蒙)の登場人物
◆チュモン(朱蒙) / ソン・イルグク
ヘモス(解慕漱)とユファ(柳花)の間に授けられた男子。実父ヘモスの親友で扶余(プヨ)の王クムワ(金蛙)の息子として扶余の王子として育てられる。ヘモスの成し得なかった祖国を取り戻すという大業のため、あらゆる試練に立ち向かう。
◆ソソノ(召西奴) / ハン・ヘジン
大商団を率いる君長ヨンタバル(延陀勃)の聡明な娘。時代を見通す賢さと死を恐れぬ大胆さを持ち併せている。その美ぼうと賢明さにより、ふたりの王子チュモンとテソ(帯素)に思いを寄せられる。後に韓民族最初の女王となる。
◆テソ(帯素)王子 / キム・スンス
扶余の王クムワの長男で、武術・知力・策略に秀でた王子。チュモンに向けられるクムワとソソノの愛に激しく嫉妬心を燃やし、優れた能力を持ちながらチュモンのこととなると手段を選ばない。
◆ユファ(柳花)[チュモンの母] / オ・ヨンス
誰もが一目ぼれするほどの美しさを持つ河伯(ハベク)族の娘。戦闘で大けがを負ったヘモスを誠心誠意手当てし、かくまった罪で、漢軍に同族を皆殺しにされるという悲劇を経験する。ヘモス戦死の報せを受け深い悲しみに暮れ、やがてクムワの側室となりヘモスとの間に身ごもった息子チュモンを出産する。
◆クムワ(金蛙) / チョン・グァンリョル
深い友情で結ばれたヘモスとともに流民を導き、漢軍に抵抗する。その後、漢の力に屈しながらも扶余の王となって勢力を拡大する。ヘモスを危機に追いつめた自責の念にさいなまれつつ、彼を慕うユファを側室として王宮に入れチュモンを王子として育てる。
◆ヘモス(解慕漱) / ホ・ジュノ
古朝鮮の滅亡後、流民を助けゲリラ的に漢に抵抗する多勿(タムル)軍を率い、韓民族の英雄として活躍する。しかし、漢の圧力に屈する扶余の先代の王に裏切られ、さらに漢軍につかまり両目をつぶされてしまう。その後の生死は不明となるが…。
◆王妃(元后)[テソ、ヨンポの母] / キョン・ミリ
クムワの正室。夫クムワの側室であるユファへの愛慕を妬み続け、息子テソにチュモンへの敵対心を燃やさせる。
◆ヨミウル[神女] / チン・ヒギョン
優れた神通力を持ち、神女として扶余の王宮で天命を王クムワに進言し、その権力はときに王室をも脅かす存在。
占いでチュモンに対して三足烏の姿を見るが…。
◆ヨンポ王子 / ウォン・ギジュン
扶余の王クムワの息子でテソの弟。兄テソ同様にチュモンを激しく敵対視し、さまざまな悪巧みをしてチュモンを陥れようとする。
テソに対してもコンプレックスを抱いている。
◆ヨンタバル(延陀勃)[ソソノの父] / キム・ビョンギ
優れた人格と人徳を備え、政治や外交、経済に関する卓越した識見の持ち主。小国の桂婁(ケル)の君長であると同時に小国連盟体の“卒本”と大商団を率いる。扶余の王宮と友好関係を持ち、扶余に拠点を置く。
◆モパルモ / イ・ゲイン
扶余の鉄器工場の鍛冶頭で、漢の優れた鉄器に劣らぬものを作るため日々研究に励む。
チュモンに忠誠を誓い、チュモンは信頼を寄せている。
◆プドゥクプル(不得不) / イ・ジェヨン
博覧強記にして全ての知的策略に長けた扶余の大使者(テサジャ)[大臣]。扶余の王座の覇権争いでテソをサポートする。
◆ウテ(優台) / チョン・ホビン
ヨンタバルの下で執事を務め、優れた商才を発揮する。ソソノが商談などで遠征をする際にサポート役を担う。
◆サヨン / ペ・スビン
ヨンタバルの商団を陰でサポートする策士。
男でも女でもない奇妙な姿をしているが、ソソノを始め商団の人々は彼に一目置いている。
◆オイ(烏伊) / ヨ・ホミン
町で詐欺まがいのことをしていたが、チュモンと知り合い彼の力となる。
無鉄砲な性格だが、チュモンの率いる戦闘で活躍する。プヨンに思いを寄せる。
◆マリ(摩離) / アン・ジョンフン
オイと一緒に町でチュモンと出会う。情報通で交渉を得意とし、チュモンの力となる。
◆ヒョッポ(陜父) / イム・デホ
力持ちで武芸に秀でる。父はヘモスとともに戦った多勿軍の一員。サヨンに好意を抱かれている。
◆プヨン / イム・ソヨン
チュモンに忠誠を尽くす、優しく素直な心の持ち主。
◆ヤンジョン / ユン・ドンファン
玄莬(ヒョント)城の太守。もとは扶余の王クムワの旧友だったが、漢の官吏となりクムワと対立する。
扶余を漢の手中に収めるため、テソを利用する。


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