将棋養真図式 第29番
知恵の輪型の趣向は趣向のなかの王様である。
同じ趣向運動を何度も繰り返すために用意された伏線があり、その伏線が何段にも積み重ねられていて、詰将棋の一面であるパズル性を充分に味わうことができるのが第一の魅力であり、伏線から伏線へ渡り歩く趣向運動の面白さ、そして、それを何度も繰り返す不思議さが一局の作品に盛り込まれている。
知恵の輪は将棋妙案が有名だが、本作品は「飛車知恵の輪」である。
もっとも本作は、たった一往復のため、知恵の輪というには淋しいのであるが、同じ「飛車知恵の輪」である将棋妙案第70番が名実ともに「知恵の輪」であるため、同趣向の元祖となった因果関係がある。
初手9二飛成、8四玉に8五飛と打って趣向が始まる。飛で王手して玉が引っ込むと、尻から龍が王手する。
飛と龍が上と下から交互に攻め立てて玉をジグザグに追いまわすのがこの趣向部分である。龍で1三金を奪い、そのまま左辺へ戻って8五金までの詰めで終わる一往復の趣向である。
類似、模倣の作品集として悪名高き養真図式にも、本局のような独創的趣向作品があることに注目したい。

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