酒井桂史作品集 第100番
本局は二枚馬が盤面一杯暴れ廻る作品で、酒井の作品の中でも代表作に挙げられる雄渾な作品である。
簡単な導入部から1枚の馬を1八に据え、3八玉に2七銀打、4七玉、3六銀、5六玉、4五銀、6五玉、五四銀、7四玉、6三銀生、8三玉、7二銀生と、一気に玉を斜めに急追するのが第一の趣向。
銀の斜め追いに対し、途中で玉が一度も後退できぬ構成が見事である。
31手目から追い戻し手順になり、6二角成から二枚馬で3八まで玉を追い戻し、5九金を活用して二枚馬でもう一度玉を左上部に追い上げるのが第二の趣向。この部分は最も作者がカを注いだ箇所と思われる。
次に9六玉、7八馬と、思わぬ方向から追撃を再開し、再び二枚馬の追撃になり、今度は右上部に追い込んで収束する。
構成が堂々として大きく、二枚馬の活躍は胸がすく。久留島書内の『橘仙貼璧』第二番と古今の双璧をなす雄大な傑作である。

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