将棋妙案 第70番
本局は名付けるなら「飛龍智恵の輪」である。上下二枚の飛車(一方は龍)で玉をはさみ、互い違いにジグザグと右に左に玉を追いかける。明らかに前局「馬智恵の輪」の斜往復を横に表現しようとしたものである。
ところで「智恵の輪」7連作の中で、本局だけは「鍵」の意味が他作と異なる。他作はいずれも無限軌道方式で、何回でも同じことをくり返していられるし、鍵が有機的な因果関係を持った積み上げ式であるが、本局の鍵は単発式で、右端または左端で折り返すための必然手であり、自然に守備陣が弱まってくるのを待つだけである。
「智恵の輪」独特の鍵を発見する面白さはなく、駒の軌跡を楽しむだけの趣向作となっている。しかし、さすがは久留島、右に左に5回の運動はすばらしいできばえである。

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