将棋図巧 第43番
「飛車鋸引き」の第1号作品である。
9手目、1八角と遠角を打ち、5五玉に2七飛〜3七〜3六〜4六〜4五飛と、鋸状に飛車を動かしながら明き王手の連続で玉に迫り、6五銀、同香と工作をしてから再び4六飛、3七飛・・・と鋸模様に飛車を遠ざける斬新奇抜な趣向作である。
この飛車鋸引きがなぜ成立するかというと、飛車を移動して2枚角の一方で明き王手をしながら、たえず他方の角の利きを止めているのがポイントである。
もし飛車を勝手な所に移動して2枚角を同時に利かしてしまうと、5六玉と逃げられた時に5七歩と打てるように、たえず玉の逃げ道を残しながら飛車を動かすのが、飛車鋸の正体である。
飛車鋸の目的は、6五銀引、同香とするためである。これをせずに本手順を進めると、数十手後に打歩詰になってしまう。(61手目の5四歩打)。つまり数十手後の打歩詰を打開するための飛車鋸である。
問題の飛車は2八から出発して完全に2八まで往復し、さらに4八飛と大活躍する。神想といえるような構想と、すばらしいできばえ、傑作の多い『図巧』の中でも屈指の名作である。

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